公爵家の父と娘

アリス

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第一話:公爵家は今日も平和です。

領都の1日~昼~

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昼──会食と言う名の会談と懇談、新規事業の進捗状態の報告。
…折角の美味しい料理も仕事の話で美味しさは半減だ…まぁ、そうは言っても領地と領民の明日のの話だ。
領地は日進月歩。領民も日進月歩。
日々移り行く田畑の状況、風が吹けば飛んでいく稲穂…ああ、そう……渓谷からふる偏西風で収穫期も…気が抜けないのだ。
この偏西風を──する事は無理だが──田畑を護る結界の維持に毎年ドラゴン種規模の魔石を毎年7月に1ヶ月ほど掛けて渓谷に棲むとされる血気盛んなレッドドラゴンとの根比べ━━いや、仕合いをドラゴン側は冒険者が用意した…ダイヤモンドだとか、水晶クリスタルや、ルビーと言った“宝石”を持参。
反対にドラゴン側はを報酬に差し出す━━ん?それも道徳的にいいのか……って?
……。

アリエルが幼少の頃には…もっと言うなら──アリエルの祖父が子供の頃には既にあった慣習だ。

 「…今年の収穫期も乗り越えられると良いのですが…。」
 「ええ。偏西風は風の精霊の戯れ…秋の収穫を言祝ことほいでいらっしゃるので……強くは言っても…伝わらないのですわ。
まあ、悪気がないだけに…私も、父も困るのですが。」
 「うむ。秋の収穫に浮かれている風の精霊らを見ていると…なぁ、ギレアン街長?」
 「…はは…本当、困りますよねぇぇ……。」

精霊。

それは…この世界の普通の人間にはえない自然が具現化した存在。

全にして個、個にして全。

世界に魔素マナを魔力へと変換・循環・放出する特別な種族。

精霊がいる地はになりがちだ。

例えば──…、年中マグマが燃え盛る活火山、“レグマ山”は火の精霊イフリートが多く、彼らは戦いと辛いものが好きだ。
…その為活火山の近くには、当然の如くハバネロやジョロキア、青唐辛子、赤唐辛子、胡椒…と香辛料の多くが採れたりする。
賑やかなのが好きで戦いが好きで陽気な性格の精霊。
大きくは四つに分類──、地水火風…これに時天幻無闇光(又は聖)の属性の精霊が存在するとされている。

取り分け──風の精霊シルフ達は楽天的で気まぐれで自由な生き物だ。
他人ひとの噂話も大好き、人々の笑顔も大好き。取り分け秋の収穫期の人々の生き生きとした笑顔…今年の冬も飢えずに済むと言った人々の安堵した表情も…そんな中で開かれる『収穫祭』の雰囲気も大好き。
余計に──風を吹かしてしまうのだ。
その偏西風は何も収穫に適した野菜を飛ばしてしまうだけではない──遠く肥沃な大地の栄養ある土をも運んでくるので…野菜が飛ばされる以外は領地に益をもたらすので─…収穫を待つだけの田畑に結界を張ることでその風を横に反らし、肥沃な大地の土は…中央の“祭壇”に集めている──土の精霊ノーム達の助力で。

土の精霊はマイペースでのんびり屋。大地に根差しているだけあって、その地に立つ生きとし生けるものに寛容で寛大だ。
…具体的には、手順を守り、正しく土を整え、種を植え、水を与える…と言った農業にの手順を踏まえて作られた作物は繁盛させてしまうのだ。
無論、各国で取り締まりはしているのだが──如何せんねずみ講みたく…。
…叩いても叩いても次から次へと現れるのだ。
下請けの下請けの運び屋の仲介人の仲介人のこれまた一般の末端売人──と、いたちごっこになっているのが現状だ。
…下請けの下請けの運び屋まで辿り着いても……その先の幹部だとか、“元締め”だとかは…なかなか捕まらないのがこのの犯罪者集団だ。
……と。話が逸れた。

…兎に角。土の精霊ノーム達にはその見分けは付かない──と言うか、大地の化身たる土の精霊にとっては──…『全て同じ植物子供達』であり、人間が猫の赤子を愛でるように、土の精霊もまたの植物の成長を見守るのだ。…それはもう溺愛と言われるほどに。
……。

その「精霊」がマスノイア公爵家の領地には四大精霊の他に闇と光属性の精霊が領地に

…それが、祖父の子供の頃には当たり前に見られるようになっていた…と言うのだから…。
精霊達が住み着いていたのだろう。
渓谷のドラゴン達は…まあ、“命懸けの闘争”と「賭け事」が同時に出来る7月の“根比べ”は毎年かなりの盛り上がりを見せる。
腕に覚えのある「冒険者」と騎士やら傭兵が集まって…始まるのだ。
人間側は…ほら、身代わり人形リバーズドールを持って挑むのだ。
因みにその“身代わり人形リバーズドール”…は、魔道具で職人が1体1体心と魔力を込めて作られた力作だ。
各ギルド──冒険者ギルド、商業ギルド、傭兵ギルド、魔術師ギルド──に【魔女の家】より無償で、期間終了後に魔道具店【魔女の家】へと…。
その時のがギルド、ギルドから個人へとを求められる。
因みに銀貨4枚…4000ガルド。
…そんなに高くない?ノンノン。
“竜との根比べ”参加者のでもあるため、山へと赴く者は見える位置に“これ”を着ける必要があるのだ。
サイズは…ちょうど縦幅5㎝×横幅3㎝×厚み2.5㎝ぐらいの人形ひとかた人形ドール…所有者の魔力と血で登録される為、偽造も譲渡も転売も…不可能である。
火竜を相手取れる、冒険者ならC~Aランクの冒険者パーティー限定、傭兵や騎士も…冒険者ギルドで測定した“暫定冒険者ランク”で決められた水準の者限定で“応募者”から絞り込む。
…因みにこうしてのんびりしている山では…『竜との根比べ』が行われている。

冒険者ランクS級のアリエルは出禁だ。
無論他のSランク冒険者も、だが。
ギルドとしてはと言う意味合いがあって…竜側もまた同朋が狩られのは…種族保存の観点でに狩られまくるのは感化できない。
火竜の上の炎竜王ファイアードラゴン公爵人間との話し合いで決まった規則ルールだ。
炎竜王クラスになると…人化出来るうえ、竜の状態でも意志疎通出来る知恵者。
…マスノイア公爵領地の冒険者人間は強すぎて困っている…らしい。
炎竜王視点だと…昔の「公爵」かは知らないが…。
少なくとも2000年以上前から今日まで続いてきた…ラーマズ渓谷の夏の風習?“恒例行事”?である。
無論、冒険者の宝石持参は義務だ。
 「…そういや今は“根比べ”の時期ですねぇ。」
 「ああ、そうだな。…最終日までには目処が立つといいのだが…」
 「どうでしょうね?こればかりは。」
 「自然が相手ですものね、ギレアン街長」
 「自然…自然…、なのか?マンドラゴラァの品種改良は……」

 「………。」
 「………。」
父の言葉にギレアン街長と娘(アリエル)は沈黙した。
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