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お茶会デビュー
お茶会3 理解できないことが多い日
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「ねえ、あなたがフェリクスさまのこんやくしゃなの? 」
ぼーっとしながら一人でお茶を飲んでいると、不意に声をかけられた。そちらを見やれば三人の女の子が立っていて、どうやら私は真ん中にいる女の子から話しかけられたらしい。
うーん、どうしようかしら…身分が下の者から身分の上の者に話しかけてはいけないのだけど…お父様からの情報だと真ん中の子は侯爵令嬢で、もう二人は伯爵令嬢だわ。
でも、私達はまだ子供だし…ううん、だからこそこの子達のためにも公爵令嬢らしく振る舞わないと。今のうちに身をもって学べば将来のためにもなるものね。
そう思い、心は痛むけれど女の子たちのことは無視することにした。
「ねえ! きいているの!? 」
「そうよ!セシリアさまをむしするなんて!」
「セシリアさまがだれなのかわかっているの!?」
これは放っておけばもっと騒ぐかもしれない、と私は危惧し、仕方なく返事をした。
「聞いていないわ」
よし、これでどうかしら?
…あら、そういえば答えてしまったら、聞こえていると言っているのと同じになるわね。
「きいているじゃない!」
その真ん中の女の子、セシリアは怒ったように声を荒らげた。
そうよね、確かにこんな仕打ちを受ければ怒って当然だわ、ごめんなさい。
なんだか非常に申し訳なく思えてきて、貴族のルールに反しているのは分かっているけれど、ここは丁寧に教えるのが得策だと考えを改める。
「はじめまして、キルベルク侯爵令嬢にベルアード伯爵令嬢、そしてレンティア伯爵令嬢。私はアイシャーナ・ウィステリア、あなたの言う通り王太子殿下の婚約者よ」
「えっ? なんでわたしの名前をしってるのよ? 」
自己紹介をすると、3人の女の子は呆気にとられてしまった。
「?お父さまにもらった書類にあなたたちの姿絵があったのよ」
事前に参加者を記憶するのは当たり前じゃないかしら?
それなのに何故か、私は彼女達に恐ろしいものを見るかのような目で見られてしまった。
ええ? なんだか、今日は理解できないことが多いわね。
「…そ、それよりあなた! フェリクスさまのこんやくしゃだからって、ちょうしにのらないでよね! 」
「そうよそうよ! 」
「おっ、おうたいしでんかはセシリアさまのものなんだから! 」
あっ、なるほど! これは、私が良い王太子妃になれるように注意してくれているのね! ああ貴族のルールとかなんやらを注意しようとしていた自分が馬鹿らしくなってきたわ、本当にごめんなさい!
「指摘してくれてありがとう、調子にのらないよう気をつけるようにするわ」
「ふんっ、あなたなんてわたしよりも下なんだか―え? なんでおこらないの!? 」
「ふふふっ、親切に指摘してくれた人に怒るわけがないじゃない。あっ、でも、王太子殿下は王太子殿下のものよ。他の誰の物でもないわ」
うん、いくら優しい子でも、これだけは否定しないと。人は誰の所有物にもなってはいけないのよ。
「そんなことしってるにきまってるじゃない! もういい、いきましょう! 」
「あっ、はい!」
「まってくださいセシリアさま!」
あれ? 行っちゃった。あんなに急いでどうしたんだろう?
やっぱり、今日は理解できない事が多いわ。
あわよくば友達になれないかなと思っていたのだけど…残念だけどしょうがないわよね。また今度の機会に会えたら友達になって欲しいってお願いしてみましょう。
友達…エドは私の婚約者だけど、大事な友達だと思ってる。だからずっと仲良くしていたい。
そうよ、大事な友達なんだから、さっきの態度がおかしかった理由をちゃんと聞きましょう。それに、渡しそびれた物もあるのよね。よし、思いついたら実行すべき…ってあら、そういえば私、エドがどこに居るのか知らないわ…
他に為す術もなく、座りながらエドを探していると、またもや不意に声をかけられる。
「誰を探しているんだい? 」
「あっ、エド! 」
うふふ、噂をすればだわ。私の運の良さは誰にも負けない気がしてきたわよ。でもいきなり現れるなんて、今までどこにいたのかしら?
「エドを探していたのよ。今までどこにいたの? 」
そう言うと私の回答は予想外だったようで、エドは目をパチパチと瞬かせた。
「うーん、言えないや」
「ええ? 」
珍しいわね、エドが明らかに私に隠し事をするなんて。うーん、怪しいわ…でも私は優しい子だから、エドが困ることはしないわよ。
そう思い、私は本来の目的を進めることにする。
「じゃあ、どうしてさっき嬉しそうじゃなかったのか聞いても良い? 」
「!ほんっと、君には敵わないや」
「そうなの? だったら私もエドには敵わないわね。 大事な友達だもの」
「友達、ねぇ?僕たち婚約者じゃなかった? 」
「それもそうだけれど、家同士が決めたことでしょう? 婚約者というよりも、大事な友達というほうがしっくり来るじゃない」
「ふぅん、アイシャにとってはそういう認識なんだね。わかった、その認識を変えられるよう努力するよ」
?またよくわからないことを言っているわ。もう今日は「理解できないことが多い日」認定してもいいんじゃないかしら。
ぼーっとしながら一人でお茶を飲んでいると、不意に声をかけられた。そちらを見やれば三人の女の子が立っていて、どうやら私は真ん中にいる女の子から話しかけられたらしい。
うーん、どうしようかしら…身分が下の者から身分の上の者に話しかけてはいけないのだけど…お父様からの情報だと真ん中の子は侯爵令嬢で、もう二人は伯爵令嬢だわ。
でも、私達はまだ子供だし…ううん、だからこそこの子達のためにも公爵令嬢らしく振る舞わないと。今のうちに身をもって学べば将来のためにもなるものね。
そう思い、心は痛むけれど女の子たちのことは無視することにした。
「ねえ! きいているの!? 」
「そうよ!セシリアさまをむしするなんて!」
「セシリアさまがだれなのかわかっているの!?」
これは放っておけばもっと騒ぐかもしれない、と私は危惧し、仕方なく返事をした。
「聞いていないわ」
よし、これでどうかしら?
…あら、そういえば答えてしまったら、聞こえていると言っているのと同じになるわね。
「きいているじゃない!」
その真ん中の女の子、セシリアは怒ったように声を荒らげた。
そうよね、確かにこんな仕打ちを受ければ怒って当然だわ、ごめんなさい。
なんだか非常に申し訳なく思えてきて、貴族のルールに反しているのは分かっているけれど、ここは丁寧に教えるのが得策だと考えを改める。
「はじめまして、キルベルク侯爵令嬢にベルアード伯爵令嬢、そしてレンティア伯爵令嬢。私はアイシャーナ・ウィステリア、あなたの言う通り王太子殿下の婚約者よ」
「えっ? なんでわたしの名前をしってるのよ? 」
自己紹介をすると、3人の女の子は呆気にとられてしまった。
「?お父さまにもらった書類にあなたたちの姿絵があったのよ」
事前に参加者を記憶するのは当たり前じゃないかしら?
それなのに何故か、私は彼女達に恐ろしいものを見るかのような目で見られてしまった。
ええ? なんだか、今日は理解できないことが多いわね。
「…そ、それよりあなた! フェリクスさまのこんやくしゃだからって、ちょうしにのらないでよね! 」
「そうよそうよ! 」
「おっ、おうたいしでんかはセシリアさまのものなんだから! 」
あっ、なるほど! これは、私が良い王太子妃になれるように注意してくれているのね! ああ貴族のルールとかなんやらを注意しようとしていた自分が馬鹿らしくなってきたわ、本当にごめんなさい!
「指摘してくれてありがとう、調子にのらないよう気をつけるようにするわ」
「ふんっ、あなたなんてわたしよりも下なんだか―え? なんでおこらないの!? 」
「ふふふっ、親切に指摘してくれた人に怒るわけがないじゃない。あっ、でも、王太子殿下は王太子殿下のものよ。他の誰の物でもないわ」
うん、いくら優しい子でも、これだけは否定しないと。人は誰の所有物にもなってはいけないのよ。
「そんなことしってるにきまってるじゃない! もういい、いきましょう! 」
「あっ、はい!」
「まってくださいセシリアさま!」
あれ? 行っちゃった。あんなに急いでどうしたんだろう?
やっぱり、今日は理解できない事が多いわ。
あわよくば友達になれないかなと思っていたのだけど…残念だけどしょうがないわよね。また今度の機会に会えたら友達になって欲しいってお願いしてみましょう。
友達…エドは私の婚約者だけど、大事な友達だと思ってる。だからずっと仲良くしていたい。
そうよ、大事な友達なんだから、さっきの態度がおかしかった理由をちゃんと聞きましょう。それに、渡しそびれた物もあるのよね。よし、思いついたら実行すべき…ってあら、そういえば私、エドがどこに居るのか知らないわ…
他に為す術もなく、座りながらエドを探していると、またもや不意に声をかけられる。
「誰を探しているんだい? 」
「あっ、エド! 」
うふふ、噂をすればだわ。私の運の良さは誰にも負けない気がしてきたわよ。でもいきなり現れるなんて、今までどこにいたのかしら?
「エドを探していたのよ。今までどこにいたの? 」
そう言うと私の回答は予想外だったようで、エドは目をパチパチと瞬かせた。
「うーん、言えないや」
「ええ? 」
珍しいわね、エドが明らかに私に隠し事をするなんて。うーん、怪しいわ…でも私は優しい子だから、エドが困ることはしないわよ。
そう思い、私は本来の目的を進めることにする。
「じゃあ、どうしてさっき嬉しそうじゃなかったのか聞いても良い? 」
「!ほんっと、君には敵わないや」
「そうなの? だったら私もエドには敵わないわね。 大事な友達だもの」
「友達、ねぇ?僕たち婚約者じゃなかった? 」
「それもそうだけれど、家同士が決めたことでしょう? 婚約者というよりも、大事な友達というほうがしっくり来るじゃない」
「ふぅん、アイシャにとってはそういう認識なんだね。わかった、その認識を変えられるよう努力するよ」
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