無自覚な少女は、今日も華麗に周りを振り回す。

ユズ

文字の大きさ
上 下
28 / 55
魔術師団の見学へ!

性根を叩き直す方法

しおりを挟む
「そ、そうだ!決闘!私が決闘をして公爵令嬢に勝ちましたら、全てお許しいただけますか!?」

えっ。この人、どこまで私に無礼なのかしら。私は気にしないけれど、気にする人にそんな事を言えば、あなた絶対にただじゃ済まないわよ?私がまだ幼い子供だからと舐められているのかしらね?

―ウィステリアの名を持つ私を?
私を侮辱するのは公爵家を侮辱するのと同じ。

ああええ、いいわ、私がその腐った性根を叩き直してあげる。

ふふっ、よくも私の家族を蔑ろにしてくれたわね?

「おだまりになって? まだ話の途中よ」

「もっ、もし私が平民に暴力を振るっていたことにお怒りでしても、貴族社会ではこんなの日常茶番飯です…!貴族は下の身分の者なら何をしても許されるのですからね!ですから―」

「私の言葉が聞こえなかったのかしら?ならもう一度言ってあげる。今すぐにだまりなさい」

「っ…」

私がそう言えば口を噤むのに、平民には暴力……皆同じ人間なのにね。
貴族なら当たり前?日常茶番飯?何をしても良いって?

知らないわよそんなの。どうして私が間違った認識を気にしなければならないの?

貴族は民の上に立つものであるけれど、民を支えなければいけない立場でもある。そんなことも知らないで貴族を語らないでほしい。

さあどうしてくれようか。

正直に言って、決闘をすれば確実に私は勝てる。魔力は見る限り少なそうで、実力もなさそうなのだ。どうして団長職に就けたのか不思議に思えるくらいに弱い。ただ、私がこのまま決闘で勝ってもこの腐った性根は変わらないだろう。

公爵家の権力で脅す?…いいや、今回は自分の手で解決したい。 ならどうすれば…

ああそうだ、この方法なら性根を叩き直すのに丁度いい。

「そうね…決闘に負けた人は、勝った人の願いを1つだけ叶えなければいけないというのはどうかしら?」

「!いいんですか!?ははっ、私が勝っても恨まないでくださいね。当然のことですから」

ふぅん?随分と余裕そうね?何か策でもあるのかしら。

「アイシャーナ様!巻き込まれていな…って、完全に巻き込まれているじゃないですか!どうしてこんな状況になっているんです!?」

おや、フォード先生のお出ましだわ。

確かにフォード先生がこう言うのも無理はない。
私はいつの間にか元の姿に戻っていて、メイエド魔術師団長はその私の前でニヤニヤ笑い、近くには顔の一部が焦げてしまっている男の子が倒れている。おまけにこの人だかりの数を見れば、誰だって驚く。

「フォード先生!今、くさった性根を叩き直そうとしているところなんです!」

「なっ、アイシャ―ナ様を本気で怒らせている!?何をしでかしたんですかヘインツ・メイエド!この方を本気で怒らせると大変なことに…!」

「えっ? そこは私を心配するべきじゃないかしら?」

話の流れ的にそうだったはずよ?

「......大丈夫ですか?」

「ええもちろん!」

「でしょうね…」

まあ先生、そこは演技をしてでも安心した素振りを見せてくれればいいのに。そうは思ったけれど、私は心優しい教え子だから指摘しないでおく。

「あっ、そうだわ。フォード先生、私とメイエド魔術師団長の決闘のルールを決めてくれませんか?」

「決闘…?アイシャーナ様がヘインツ・メイエドと…?いやいや、勝負にならないでしょう」

「でも、勝った人は負けた人に一回だけんですよ。ふふふっ、どれだけ人柄が変わるのか楽しみですね」

「…確かにヘインツ・メイエドの今までの行いは相当悪かったですが、今は少しだけ可哀想に思えますね」

ん? 先生が自分で解決したかったのかしら?

「フォード先生がやってもいいですよ」

「遠慮しておきます」

そんなに即答されてしまってはさすがの私でも傷つ…きはしないわね。

「だったら問題ないですよね。では決闘を初めましょうか!」

メイエド魔術師団長に踏みつけられていた男の子はこっそり治癒しておいたから、明日の朝までに傷は消えているはずだ。後は他の人に任せていても大丈夫だろう。

「…僕では止められませんからね」

流石フォード先生、よく私のことを分かっているわ。

この決闘を止めようとする人がいれば、私はきっとすぐ魔法を使ってでも、絶対に邪魔をさせないはずだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

処理中です...