無自覚な少女は、今日も華麗に周りを振り回す。

ユズ

文字の大きさ
上 下
14 / 55
初めての場所

いざ王城へ!って、あれ?私やらかしてない!?

しおりを挟む
「それでアイシャ、一体どこへ行っていたんだ?」

出発して、私は馬車に揺られながらいつ着くのかとそわそわしていると、しばらくしてそうお父様が切り出した。

あっ、そうだった。どこに居たらあんなにもドレスがボロボロになるのかを説明するって約束したのだった。
あれ?じゃあ、ドレスが汚れた理由を先に話したほうが早いのでは?

「えっと…おにわではしって、もりをかけまわったからドレスがぼろぼろになってしまったの。」

「うんアイシャ、説明するところが違うよ…って、森?森へ行ったのかい?」

へ?ドレスがボロボロになっていた理由を聞きたかったんじゃ…?
ああそっか、お父様は間接的な回答があまり好きじゃないのね。

「だいじょーぶよおとーさま、(それぞれに個性があるからこその)にんげんなのだから、だれもおとーさまをきらったりしないわ。それと、おとーさまのいうとおり、たしかにわたしはメリルのもりにいたのだけど、どーしてわかったの?あっ、そういえば、さっきわたしがいったのだったわ。うふふ、わたし、あまりかんがえることにむいていないみたい。」

「…アイシャ、それは私を慰めるための発言なのだろうが、私は一体何に対して慰められているんだ?
それに『人間だから』ってなんなんだ!?私は『人間』だということしか良いところがないのか!?
…ああ、メリルの森に居たと聞こえたが気がしたが、私の空耳だよね?…‥確かにお前は物事を考えることにむいていないよ…」

「まあ、わたし、おとーさまにはつげんをこーていしてもらうのは、はじめてかもしれないわ!」

「綺麗にその前のわたしの発言はスルーしたな!?…負けたよアイシャ。私の完敗だ。」

心外だわお父様、私はお父様がに触れないであげたのに、何故私が悪いみたいな話になっているの?

それより…

「わたし、おとーさまとしょーぶをしていたの?でもわたし、しらないうちにかっていたわ!おとーさま、わたし、かんがえることにはむいていないけど、しょーぶにはつよいのね!」

「どこまでもポジティブだな!?ふぅ、とりあえずアイシャ、いなくなっていた間はメリルの森に居たんだね?そこで何も起きなかったのかい?」

あれ、それを聞くなんて、メリルの森は危ない動物でも出るのかしら?

「うーん、とくになにもなかったよ?それよりおとーさま、わたしね、おうじょーではたらくおとこのこにあったのよ。」

「お、王城で働く男の子?ああ、嫌な予感がしてきたぞ…アイシャ、その男の子の名前は?」

「おとーさまもきになるの?エドっていう、わたしとおなじとしくらいのこなの!」

私がニコニコしながらお父様の質問に答えると、どうしてかお父様はこれでもかというくらい長いため息を付いた。

するとガタンッと馬車が止まった。どうやら王城に着いたらしい。

そう、公爵領は王都の隣にあって公爵邸ともとても近い故、王城は公爵邸から馬車で移動すると20分程度で着く。

そういえば、私はまだ3歳なのよね?3歳で王族との顔合わせだなんて、この王国は意外と鬼畜なのかしら?
うーん、今は前世の記憶があるから良いのだけど、私に前世の記憶が無かったら相当大変ね。

と、思考に浸っていたのだけど、いつの間にかお父様は先に馬車を降りていて、私に手を差し出してくれた。

まあ、こうやって見るとお父様も紳士なのね。
と思ったけれど、何だか色々と言われそうなので黙っておく。

「あ、そーいえばおとーさま、もりでしょーきをみたのよ。」

私はふと思い出してお父様に報告すると、何故か驚かれた。

「瘴気!?それはほぼ国家秘密の話だぞ!?…お前が無事で本当に良かったよ。」

「…?こっかきみつのはなし?でもエドがしっていたのよ?こっかきみつって、おうじょーのひとならだれでもしっているのね。」

「ああアイシャ、『かもしれない』をこれ以上『確信』に変えないでくれ…」

…?お父様の言っていることはよくわからないけれど、国家機密が部外者の私に伝わっているから不安になっているのかしら?

そんな会話をしながら私とお父様は手を繋ぎないで道を進んでいると、男性が話しかけてきた。

「お待ちしておりました、ウィステリア公爵様、並びにウィステリア公爵令嬢。国王夫妻と王太子殿下の元へご案内致します。」

どうやらこの人は私達への使いらしい。

「ああ、頼む」
と、お父様が答えるなり彼は国王がいるであろう方向へ進んでいった。

むむ?お父様が…あの・・お父様の雰囲気がいつもと全く違うわ!ああなるほど!いつもこんな雰囲気だったから冷徹公爵と噂されるのね!

お父様が「冷徹公爵」と呼ばれてるって聞いた時は己の耳を疑ったけれど…なるほど?これがギャップというのね?

すると、使いの男性がピタリと止まり一つの扉を指した。
「到着いたしました。こちらの部屋に皆様がいらっしゃいます。」

へっ?もう着いたの!?お城の内装とか全く見てないんだけど!?
結構楽しみにしてたのに!

はぁ…まあ後で見ればいっか。

そういえば、エドはどこにいるのかな?絶対に私の印象を変えてみせるんだから!

という私の心の内とは裏腹に、使いの男性は静かに扉を開けた。

「ウィステリア公爵、公爵令嬢が到着いたしました。」

そう言われ、私とお父様は部屋の中に入るなり、私は左手でドレスをつまみ右手を胸に当て膝を曲げて深く淑女の礼をし、お父様は右手を胸に当て頭を下げる。

上の者には、許可が出ない限り話しかけてはいけない。相手が国王ならなおさらだ。
特に初対面の挨拶の場だと、許可なく顔を上げれば最悪身分を剥奪か降格される。

お父様は国王はそんなに怖くないと言っていたけれど、マナーは絶対だ。というかお父様、それ不敬罪に入らないのですかね?

「よく来てくれた、我が従兄弟よ。随分と久しぶりだな。ほう、その少女はそなたの娘か?随分と大したものだな。」

と、国王らしき人がお父様に声をかけると、お父様は不機嫌さを隠すことなく答えた。
「ご無沙汰しております、国王陛下。おっしゃる通り、こちらが私の娘のアイシャ―ナです。ですが渡すつもりは一切ありませんからね。」

お、お父様…それ、いくら従兄弟でもぶっちぎりで不敬罪ですよ。
まず、上の者が口にしていない話題は許可がない限り下の物は話してはいけないのに、それどころか意見するなんて!でも、お父様がこのマナーを知らないはずがないから、2人とも仲がいいのね。

「ははっ、相変わらずはっきりとモノを申すのだな!よい、二人とも面をあげよ。公爵令嬢、本当によく来てくれた。疲れたろう、そこに座りなさい。」

あら、本当だわ。お父様の言う通り優しそうな人ね。

顔を上げてみると、中には大きなソファが2つ向かい合っていて、一つのソファには国王陛下が真ん中に、左側に女性、右側に男の子が居た。きっとここは、身分の高い貴族や王族を接待する応接室なのだろう。

…ん?国王陛下の隣りに座っている男の子、エドじゃない?

実は私、この世界に生まれたときから魔力の属性、魔力と神聖力をの量が形になって見える。といっても、それが見えることは普通じゃないと知ったのは、つい最近フォード先生の授業を受けていたときなのだけど。

私が見た限りエドは、私と一緒で4つの属性を持っていて、保有している魔力の量は半端なかった。

そしてあそこにいる男の子もエドと同じく4つの属性を持っていて、量も半端ない。

魔力の量は、血筋にも関係する。高位貴族の血筋ほど、たくさん魔力を持って生まれる。

だから確かに、エドの身分が高いということには若干気づいていた。所作も話し方も綺麗だったし。
だけど、王城で会えると言われた時点で王族だということに気づくべきだった。

今王の隣に座る人なんて、王妃様と王太子殿下しか居ないじゃないか。

ふぅ…私、知らぬうちにとんでもないことをしでかしていたみたい。

もしかして、お父様は王太子殿下が時々メリルの森に居ることを知っていたのでは?
だから私がメリルの森に居たことを聞いて「何もなかったか」と聞いたんじゃ?

エドに対しての私の言動、完っ全に不敬罪だった。それなのにエドは怒らなかったの?どう謝罪すれば…
それに私、自分と縁談の話が出ている王太子殿下に「仲良くしよう」って言ったの?

ああ、自分で墓穴を掘ってどうするのよ、私!

とりあえず、これからは絶対に相手の身分を判別してから接することにしよう…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...