無自覚な少女は、今日も華麗に周りを振り回す。

ユズ

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初めての場所

いざ王城へ!って、あれ?私やらかしてない!?

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「それでアイシャ、一体どこへ行っていたんだ?」

出発して、私は馬車に揺られながらいつ着くのかとそわそわしていると、しばらくしてそうお父様が切り出した。

あっ、そうだった。どこに居たらあんなにもドレスがボロボロになるのかを説明するって約束したのだった。
あれ?じゃあ、ドレスが汚れた理由を先に話したほうが早いのでは?

「えっと…おにわではしって、もりをかけまわったからドレスがぼろぼろになってしまったの。」

「うんアイシャ、説明するところが違うよ…って、森?森へ行ったのかい?」

へ?ドレスがボロボロになっていた理由を聞きたかったんじゃ…?
ああそっか、お父様は間接的な回答があまり好きじゃないのね。

「だいじょーぶよおとーさま、(それぞれに個性があるからこその)にんげんなのだから、だれもおとーさまをきらったりしないわ。それと、おとーさまのいうとおり、たしかにわたしはメリルのもりにいたのだけど、どーしてわかったの?あっ、そういえば、さっきわたしがいったのだったわ。うふふ、わたし、あまりかんがえることにむいていないみたい。」

「…アイシャ、それは私を慰めるための発言なのだろうが、私は一体何に対して慰められているんだ?
それに『人間だから』ってなんなんだ!?私は『人間』だということしか良いところがないのか!?
…ああ、メリルの森に居たと聞こえたが気がしたが、私の空耳だよね?…‥確かにお前は物事を考えることにむいていないよ…」

「まあ、わたし、おとーさまにはつげんをこーていしてもらうのは、はじめてかもしれないわ!」

「綺麗にその前のわたしの発言はスルーしたな!?…負けたよアイシャ。私の完敗だ。」

心外だわお父様、私はお父様がに触れないであげたのに、何故私が悪いみたいな話になっているの?

それより…

「わたし、おとーさまとしょーぶをしていたの?でもわたし、しらないうちにかっていたわ!おとーさま、わたし、かんがえることにはむいていないけど、しょーぶにはつよいのね!」

「どこまでもポジティブだな!?ふぅ、とりあえずアイシャ、いなくなっていた間はメリルの森に居たんだね?そこで何も起きなかったのかい?」

あれ、それを聞くなんて、メリルの森は危ない動物でも出るのかしら?

「うーん、とくになにもなかったよ?それよりおとーさま、わたしね、おうじょーではたらくおとこのこにあったのよ。」

「お、王城で働く男の子?ああ、嫌な予感がしてきたぞ…アイシャ、その男の子の名前は?」

「おとーさまもきになるの?エドっていう、わたしとおなじとしくらいのこなの!」

私がニコニコしながらお父様の質問に答えると、どうしてかお父様はこれでもかというくらい長いため息を付いた。

するとガタンッと馬車が止まった。どうやら王城に着いたらしい。

そう、公爵領は王都の隣にあって公爵邸ともとても近い故、王城は公爵邸から馬車で移動すると20分程度で着く。

そういえば、私はまだ3歳なのよね?3歳で王族との顔合わせだなんて、この王国は意外と鬼畜なのかしら?
うーん、今は前世の記憶があるから良いのだけど、私に前世の記憶が無かったら相当大変ね。

と、思考に浸っていたのだけど、いつの間にかお父様は先に馬車を降りていて、私に手を差し出してくれた。

まあ、こうやって見るとお父様も紳士なのね。
と思ったけれど、何だか色々と言われそうなので黙っておく。

「あ、そーいえばおとーさま、もりでしょーきをみたのよ。」

私はふと思い出してお父様に報告すると、何故か驚かれた。

「瘴気!?それはほぼ国家秘密の話だぞ!?…お前が無事で本当に良かったよ。」

「…?こっかきみつのはなし?でもエドがしっていたのよ?こっかきみつって、おうじょーのひとならだれでもしっているのね。」

「ああアイシャ、『かもしれない』をこれ以上『確信』に変えないでくれ…」

…?お父様の言っていることはよくわからないけれど、国家機密が部外者の私に伝わっているから不安になっているのかしら?

そんな会話をしながら私とお父様は手を繋ぎないで道を進んでいると、男性が話しかけてきた。

「お待ちしておりました、ウィステリア公爵様、並びにウィステリア公爵令嬢。国王夫妻と王太子殿下の元へご案内致します。」

どうやらこの人は私達への使いらしい。

「ああ、頼む」
と、お父様が答えるなり彼は国王がいるであろう方向へ進んでいった。

むむ?お父様が…あの・・お父様の雰囲気がいつもと全く違うわ!ああなるほど!いつもこんな雰囲気だったから冷徹公爵と噂されるのね!

お父様が「冷徹公爵」と呼ばれてるって聞いた時は己の耳を疑ったけれど…なるほど?これがギャップというのね?

すると、使いの男性がピタリと止まり一つの扉を指した。
「到着いたしました。こちらの部屋に皆様がいらっしゃいます。」

へっ?もう着いたの!?お城の内装とか全く見てないんだけど!?
結構楽しみにしてたのに!

はぁ…まあ後で見ればいっか。

そういえば、エドはどこにいるのかな?絶対に私の印象を変えてみせるんだから!

という私の心の内とは裏腹に、使いの男性は静かに扉を開けた。

「ウィステリア公爵、公爵令嬢が到着いたしました。」

そう言われ、私とお父様は部屋の中に入るなり、私は左手でドレスをつまみ右手を胸に当て膝を曲げて深く淑女の礼をし、お父様は右手を胸に当て頭を下げる。

上の者には、許可が出ない限り話しかけてはいけない。相手が国王ならなおさらだ。
特に初対面の挨拶の場だと、許可なく顔を上げれば最悪身分を剥奪か降格される。

お父様は国王はそんなに怖くないと言っていたけれど、マナーは絶対だ。というかお父様、それ不敬罪に入らないのですかね?

「よく来てくれた、我が従兄弟よ。随分と久しぶりだな。ほう、その少女はそなたの娘か?随分と大したものだな。」

と、国王らしき人がお父様に声をかけると、お父様は不機嫌さを隠すことなく答えた。
「ご無沙汰しております、国王陛下。おっしゃる通り、こちらが私の娘のアイシャ―ナです。ですが渡すつもりは一切ありませんからね。」

お、お父様…それ、いくら従兄弟でもぶっちぎりで不敬罪ですよ。
まず、上の者が口にしていない話題は許可がない限り下の物は話してはいけないのに、それどころか意見するなんて!でも、お父様がこのマナーを知らないはずがないから、2人とも仲がいいのね。

「ははっ、相変わらずはっきりとモノを申すのだな!よい、二人とも面をあげよ。公爵令嬢、本当によく来てくれた。疲れたろう、そこに座りなさい。」

あら、本当だわ。お父様の言う通り優しそうな人ね。

顔を上げてみると、中には大きなソファが2つ向かい合っていて、一つのソファには国王陛下が真ん中に、左側に女性、右側に男の子が居た。きっとここは、身分の高い貴族や王族を接待する応接室なのだろう。

…ん?国王陛下の隣りに座っている男の子、エドじゃない?

実は私、この世界に生まれたときから魔力の属性、魔力と神聖力をの量が形になって見える。といっても、それが見えることは普通じゃないと知ったのは、つい最近フォード先生の授業を受けていたときなのだけど。

私が見た限りエドは、私と一緒で4つの属性を持っていて、保有している魔力の量は半端なかった。

そしてあそこにいる男の子もエドと同じく4つの属性を持っていて、量も半端ない。

魔力の量は、血筋にも関係する。高位貴族の血筋ほど、たくさん魔力を持って生まれる。

だから確かに、エドの身分が高いということには若干気づいていた。所作も話し方も綺麗だったし。
だけど、王城で会えると言われた時点で王族だということに気づくべきだった。

今王の隣に座る人なんて、王妃様と王太子殿下しか居ないじゃないか。

ふぅ…私、知らぬうちにとんでもないことをしでかしていたみたい。

もしかして、お父様は王太子殿下が時々メリルの森に居ることを知っていたのでは?
だから私がメリルの森に居たことを聞いて「何もなかったか」と聞いたんじゃ?

エドに対しての私の言動、完っ全に不敬罪だった。それなのにエドは怒らなかったの?どう謝罪すれば…
それに私、自分と縁談の話が出ている王太子殿下に「仲良くしよう」って言ったの?

ああ、自分で墓穴を掘ってどうするのよ、私!

とりあえず、これからは絶対に相手の身分を判別してから接することにしよう…
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