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幼少期
『奴ら』の正体です。
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私とセイル兄様がお父様の「家族が三人増えるよ」発言による思考停止から復活した後、何故そうなったのか尋ねる。
「…端的に言うならば、私がそのように仕向けたから、だな」
「お父様が?…あっ、もしかして…!」
私がハイルとの同調を切る直前の、あの意味深な会話は、これを指していたんじゃないだろうか。
何だっけ、確か…。
『…本当に良かったんですか、フィル様。これで』
『…ああ。下手に拒み続けるより、懐に入れたと見せかける方が結果的に良いだろう』
『それならば、良いのですが…。お二人が心配です』
『………ああ』
こんな感じだったはず!
いやー、こんなに正確に思い出せるなんて、私って優秀だわー。
さすがはリュート様スペックだね!
…と、それはいいとして。
どうして拒んでいた人をわざわざ招き入れるように仕向けたのかは分かった。
何で拒んでたのかは分からないけど。
「リュート、何か分かったの?」
「あ、いえ。小さな疑問が今の話と繋がっただけです!それよりお父様、仕向けたとは?」
「…そのままの意味だ。この家の権力を狙う者が少なくないのは知っているであろう。…まあ、明確にそれを示してくる者はそうはいないが」
もちろん、それは知っている。
そのせいで私たちは易々と外へ出かけられないし、ハイルやアインが守護についてくれるまで王城にも行けなかったんだから。
「はい」
「…その中で、我が公爵家が相手をせねばならぬ程力のある家は、非常に少ないのだ」
公爵家の権力を狙う家は多いけれど、表立って狙ってくる家なんてほとんどいない。
何故かといえば、『公爵家』は王家の次に権力を持っており、表立って敵対してしまえば潰されるのが目に見えているからだ。
まあ、それだけの力があるからこそ狙われもするのだが。
そして、そんな敵対の仕方が出来るのは…。
「同じ、公爵家…」
セイル兄様の声と、私の心の声が一致した。
まあ、今回の主犯は公爵家とは限らないかもしれないけれど、全体の主犯は侯爵以下の家では荷が重いだろう。
何しろ、レーツェル公爵家を敵に回すというのはリート一族を敵に回すということなのだから。
まあ一族とはいえ一枚岩ではないし、全てとはいえないけれども。
セイル兄様と頷き合い、私たちが出した答えが合っているのか否かとお父様に視線を向ける。
「…ああ。あの家は昔から煩わしかったが、そう気にかけるほどでもなかった。気を抜くことは出来なかったが。…アイリーンが害されるまでは」
……!!!
お父様…今、何て…?
「まさか…母上を害したのも…!」
私が呆然としている間に、セイル兄様が聞きたかったことを聞いてくれる。
低く、感情を抑えつけたような、けれど悲鳴を上げているようにも感じる声だった。
覚悟はしていたけれど…思っていたのとは違う形でお母様の名前が出てきてしまったからか、心の奥にある柔らかいものを鷲掴みにされたような感覚がする。
いつのまにか下がっていた視線をのろのろと上げ、お父様を見つめる。
「…そうだ」
やっぱり、そうだったのか。
これを聞いたらもっと感情が高ぶって、闘志に燃えるかと思っていたんだけど…。
混乱しているのか、今はどうすればいいのか分からないというのが正直な気持ちだ。
セイル兄様は眉にしわを寄せ、宙を睨みつけている。
けれど、今はこれが本題ではない。
…話を、進めないと。
「それで…その公爵家と、その三人と…どう繋がるのですか?」
「…いや、繋がるのは二人…母娘だけだ。もう一人はその公爵家とは関係ない」
…そうなのか。
もう一人、っていうのも気になるけど、今は公爵家と繋がるという母娘の方の話が聞きたい。
「では、その母娘はどう繋がるのですか?」
「…母…私の後妻となる者は、現公爵家当主の娘だ。…つまり、最もその公爵家の血を濃く引く者が、レーツェル公爵家に入ることとなる」
…一番面倒な繋がり方だなあ…。
それ、外から乗っ取るのは難しいから内側から乗っ取ろうってことでしょ?
それなら最初からお母様じゃなくてその人をお父様の婚約者として据えるくらいしてそうだけど、何でそうしなかったんだろう?
どうしてその人が婚約者にならなかったのか聞いてみると、そういう話は一時期持ち上がっており、受ける方向で話が進んでいたらしい。
年回りも良いし、身分も釣り合うし、両家の親睦も深まるし、表面だけ見ればとても良縁だったそうだ。
けれど、同じリート一族の侯爵家にお母様がいた。
お父様はとある舞踏会で社交デビューをしたばかりのお母様に心を奪われてしまい、まだ婚約前だったこともあってその話は無かったことになった。
そして、振られてしまったその人は他の人と結婚し、娘が生まれてすぐに夫は病死し、未亡人となったらしい。
…病死、ねえ…。
つまり。
お父様の後妻となる人は、婚約者となるはずだった人を奪われてしまったと。
女にとって、恐らく最も屈辱的な状況で。
…まあ、だからって許されるような事じゃないけど、お母様やお父様に対する執着の理由が少しは分かった気がする。
後は、娘が生まれてすぐ未亡人になったっていうのが気にかかる。
「未亡人になったのは、もしかしてこの状況を作り出すため…ですか?」
「…恐らく。そして、後妻に収まるには邪魔な娘を処理しなかったのは…リュート。其方の存在があったからであろう」
「…僕…ですか?」
何で私の存在があると娘を…。
って、あー、そういうことかぁ…。
そうだよね、向こうから見たら私は完璧に『男』だもんね。
「…婚約者とするためですね?父上」
お、おおぅ…セイル兄様の御尊顔がっ!!
御尊顔がぁぁぁ!!!
笑顔を浮かべているはずなのに、何故か滅茶滅茶怒ってるように見える…!!
邪悪なオーラまで出てるような気がするよ!
お願いだから天使に戻って、セイル兄様ぁぁぁ!!
「…その通りだ。今でもそれは変わらぬであろう。次期公爵家当主を押さえてしまえば、乗っ取ったも同然だからな。だが、婚約者候補として出来る限り留めておこう」
うわ~、なんかクセの強い子が来そう…。
絶対レーツェル家を乗っ取るために育てられてるだろうから、厄介だなあ。
直接的な危害を加えてくるようなら、ハイルやアイン、それに騎士団達が守ってくれるから良いけど、多分そんなことはしないと思うし。
「そんな人達が、二週間後にこの屋敷へ来るのですか…」
「…いや、私の後妻となる者とその娘は挨拶に来るだけで、実際に移り住むのは一ヶ月後となる。…もう一人の子供は二週間後からだが」
…そーゆーことは早く言ってくれないかなあ、お父様!
「…端的に言うならば、私がそのように仕向けたから、だな」
「お父様が?…あっ、もしかして…!」
私がハイルとの同調を切る直前の、あの意味深な会話は、これを指していたんじゃないだろうか。
何だっけ、確か…。
『…本当に良かったんですか、フィル様。これで』
『…ああ。下手に拒み続けるより、懐に入れたと見せかける方が結果的に良いだろう』
『それならば、良いのですが…。お二人が心配です』
『………ああ』
こんな感じだったはず!
いやー、こんなに正確に思い出せるなんて、私って優秀だわー。
さすがはリュート様スペックだね!
…と、それはいいとして。
どうして拒んでいた人をわざわざ招き入れるように仕向けたのかは分かった。
何で拒んでたのかは分からないけど。
「リュート、何か分かったの?」
「あ、いえ。小さな疑問が今の話と繋がっただけです!それよりお父様、仕向けたとは?」
「…そのままの意味だ。この家の権力を狙う者が少なくないのは知っているであろう。…まあ、明確にそれを示してくる者はそうはいないが」
もちろん、それは知っている。
そのせいで私たちは易々と外へ出かけられないし、ハイルやアインが守護についてくれるまで王城にも行けなかったんだから。
「はい」
「…その中で、我が公爵家が相手をせねばならぬ程力のある家は、非常に少ないのだ」
公爵家の権力を狙う家は多いけれど、表立って狙ってくる家なんてほとんどいない。
何故かといえば、『公爵家』は王家の次に権力を持っており、表立って敵対してしまえば潰されるのが目に見えているからだ。
まあ、それだけの力があるからこそ狙われもするのだが。
そして、そんな敵対の仕方が出来るのは…。
「同じ、公爵家…」
セイル兄様の声と、私の心の声が一致した。
まあ、今回の主犯は公爵家とは限らないかもしれないけれど、全体の主犯は侯爵以下の家では荷が重いだろう。
何しろ、レーツェル公爵家を敵に回すというのはリート一族を敵に回すということなのだから。
まあ一族とはいえ一枚岩ではないし、全てとはいえないけれども。
セイル兄様と頷き合い、私たちが出した答えが合っているのか否かとお父様に視線を向ける。
「…ああ。あの家は昔から煩わしかったが、そう気にかけるほどでもなかった。気を抜くことは出来なかったが。…アイリーンが害されるまでは」
……!!!
お父様…今、何て…?
「まさか…母上を害したのも…!」
私が呆然としている間に、セイル兄様が聞きたかったことを聞いてくれる。
低く、感情を抑えつけたような、けれど悲鳴を上げているようにも感じる声だった。
覚悟はしていたけれど…思っていたのとは違う形でお母様の名前が出てきてしまったからか、心の奥にある柔らかいものを鷲掴みにされたような感覚がする。
いつのまにか下がっていた視線をのろのろと上げ、お父様を見つめる。
「…そうだ」
やっぱり、そうだったのか。
これを聞いたらもっと感情が高ぶって、闘志に燃えるかと思っていたんだけど…。
混乱しているのか、今はどうすればいいのか分からないというのが正直な気持ちだ。
セイル兄様は眉にしわを寄せ、宙を睨みつけている。
けれど、今はこれが本題ではない。
…話を、進めないと。
「それで…その公爵家と、その三人と…どう繋がるのですか?」
「…いや、繋がるのは二人…母娘だけだ。もう一人はその公爵家とは関係ない」
…そうなのか。
もう一人、っていうのも気になるけど、今は公爵家と繋がるという母娘の方の話が聞きたい。
「では、その母娘はどう繋がるのですか?」
「…母…私の後妻となる者は、現公爵家当主の娘だ。…つまり、最もその公爵家の血を濃く引く者が、レーツェル公爵家に入ることとなる」
…一番面倒な繋がり方だなあ…。
それ、外から乗っ取るのは難しいから内側から乗っ取ろうってことでしょ?
それなら最初からお母様じゃなくてその人をお父様の婚約者として据えるくらいしてそうだけど、何でそうしなかったんだろう?
どうしてその人が婚約者にならなかったのか聞いてみると、そういう話は一時期持ち上がっており、受ける方向で話が進んでいたらしい。
年回りも良いし、身分も釣り合うし、両家の親睦も深まるし、表面だけ見ればとても良縁だったそうだ。
けれど、同じリート一族の侯爵家にお母様がいた。
お父様はとある舞踏会で社交デビューをしたばかりのお母様に心を奪われてしまい、まだ婚約前だったこともあってその話は無かったことになった。
そして、振られてしまったその人は他の人と結婚し、娘が生まれてすぐに夫は病死し、未亡人となったらしい。
…病死、ねえ…。
つまり。
お父様の後妻となる人は、婚約者となるはずだった人を奪われてしまったと。
女にとって、恐らく最も屈辱的な状況で。
…まあ、だからって許されるような事じゃないけど、お母様やお父様に対する執着の理由が少しは分かった気がする。
後は、娘が生まれてすぐ未亡人になったっていうのが気にかかる。
「未亡人になったのは、もしかしてこの状況を作り出すため…ですか?」
「…恐らく。そして、後妻に収まるには邪魔な娘を処理しなかったのは…リュート。其方の存在があったからであろう」
「…僕…ですか?」
何で私の存在があると娘を…。
って、あー、そういうことかぁ…。
そうだよね、向こうから見たら私は完璧に『男』だもんね。
「…婚約者とするためですね?父上」
お、おおぅ…セイル兄様の御尊顔がっ!!
御尊顔がぁぁぁ!!!
笑顔を浮かべているはずなのに、何故か滅茶滅茶怒ってるように見える…!!
邪悪なオーラまで出てるような気がするよ!
お願いだから天使に戻って、セイル兄様ぁぁぁ!!
「…その通りだ。今でもそれは変わらぬであろう。次期公爵家当主を押さえてしまえば、乗っ取ったも同然だからな。だが、婚約者候補として出来る限り留めておこう」
うわ~、なんかクセの強い子が来そう…。
絶対レーツェル家を乗っ取るために育てられてるだろうから、厄介だなあ。
直接的な危害を加えてくるようなら、ハイルやアイン、それに騎士団達が守ってくれるから良いけど、多分そんなことはしないと思うし。
「そんな人達が、二週間後にこの屋敷へ来るのですか…」
「…いや、私の後妻となる者とその娘は挨拶に来るだけで、実際に移り住むのは一ヶ月後となる。…もう一人の子供は二週間後からだが」
…そーゆーことは早く言ってくれないかなあ、お父様!
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