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喧騒の街、ワイゼル
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その日、嘉武とイヴはオルディスを出た。
長い間、オルディスには世話になったと嘉武は心の中で感謝する。
(きっとまた皆に会いに来よう。オルディスはこの世界における、僕の故郷だから)
小さくなっていくオルディスを目に焼き付ける。
「ヨシタケ、どんだけあの街が気に入ってるのよ」と薄情娘の声がする。
「結構いい街だったじゃないか」
「まぁ・・・そうね」
薄情娘は複雑そうに答えた。
日が暮れる頃に二人はワイゼルへと到着する。イヴは遅すぎる嘉武に文句を垂れていた。
「もー、ヨシタケのせいでゆっくりする時間が全然無いじゃない!ちんたら移動するのが一番疲れるのよ!」
「悪かったって言ってるだろ!それに、そんなに言うなら置いて行けば良かっただろう」
「親切にしてやったってのに何なのよその言い方は!」
ご機嫌斜めだ。嘉武も口を聞きたく無くなって険悪な雰囲気になる。
そのまま歩みを進め、ワイゼル自慢の噴水広場にある冒険者ギルドで宿の手続きを行う。
「えぇ、オルディスから来ました。はい・・・」
嘉武は手続きを進めているとズカズカと歩いてくる男達が突然、嘉武の肩を押してどかす。
「あいあい、今日の依頼分はこれで!」
「う、承りました。それでは、こちらが報酬になります」
受付は苦笑いしながら報奨金を差し出す。きっと逆らえないのだろう。それにしても大した額だ。集団での狩りでかなり効率が良かったのだろう。
「ういうい」と下品に返事をし、金を数える品性のない冒険者。
「まあ、こんだけありゃ、良いだろ」
「何あんた達、後から来たんだから待ちなさいよ」
手続きも何もしていない、人任せなご機嫌斜めが男達に何故か絡んだ。
「何で俺たちがお前らみたいなガキ待たなくちゃいけねえんだよ」
「所詮ワイゼルの冒険者なんてそんなものよね、本当単細胞なやつばかりね」
「あ?口の減らねぇ嬢ちゃんだな、表出ろよかわいがってやるからさぁ」
嘉武は聞く耳を持たず手続きを再開する。受付も困りながら一応対応していると、表で大きな音がした。
一通り手続きを済ませ、ギルドを後にする嘉武。
表へ出てみれば炭化した男達と、清々しい顔をしたイヴが立っていた。
「あ~、すっきりした!さぁ、行っきましょう!」
「こ、殺してないよな・・・」
嘉武は念の為、炭化した男達のアホ顔を覗き込んだ。そして思う。イヴの怒りを買ってくれてありがとう、と。
ワイゼルの夜は煌びやかだ。日が暮れても街中の装飾が光り輝き、夜とは思えない明るさ。この街は資財に恵まれ、領主もかなり温厚。姿を見た者は数少ないが、人族では無いらしい。
エルフのお姉さんのお店があったり、オルディスと比べてお洒落な店が多い。ワイルドな獣人族やドワーフの男達が楽しそうに道を行く。様々な種族が行き交い、綺麗な女性も多く街の平均年齢自体が若い。
そう、ワイゼルは夜の楽しみが多く、周りの集落から遊びに来る人の数が多い歓楽街及びに、ここらの夜遊びスポットなのである。
ご多分に盛れず、嘉武も綺麗なエルフやお姉さんに目を奪われながら街を歩く。
「なんか、その顔不愉快なんですけど」
などと隣から声が聞こえ、嘉武は真顔に戻る。
「み、店を探していたんだよ」
「どうだか、あ、あそこいいわね。あそこにしましょう」
その日はイヴの選んだ適当な店で夕食を済ませた。
問題は翌日の朝だった。
明らかに変な男がギルドの前で待ち構えていた。風貌はドラゴニュート。オルディスに居た者よりは体躯が発達していて体の厚みが凄い。
そんな男は腕を組み、足を肩幅ほど開きながら嘉武とイヴをずっと睨んでいる。
「メーン?」
突如男が放った言葉は、メーン。
「はぁ?」
二人が言った。
「昨日、冒険者シメちゃったってのはお前らか?って話!」
「伝わるかよ」
嘉武はツッコんだ。
「オイラはFGD!昨日お前達がシメちゃった冒険者はオイラのチーム、「ドラゴンにゃんにゃんズ」のメンバーなんだよぅ!」
「あぁあぁ、だったらしっかりと躾ておきなさいよ、昨日のアレだって非常識的過ぎるから少し遊んであげただけなんだから」
「そのせいで、アイツらが動けないから・・・オイラが来たんだろうがァ!!誰が今日のオイラの遊び代稼ぐってんだよ!!そう!アイツらが居なけりゃ!自分で稼ぐしかねえだろがっ!」
FGDは唾を飛ばしながら激昴する。妙にリズミカルな話し方がまたクセなのだろう。
「要するに、金を出せと?」
嘉武は要点だけを理解した。それにしてもとんでもないクズ野郎に捕まったなと嘉武は思う
「正解正解!君、冴えてるね!だから、このオイラに十万マーニ、くださいな!」
「そんなに持ってねえよ」
ほら、と巾着を振るう嘉武、チャリチャリとは
鳴るものの、大層な金額は入っていない音がする。
「・・・はぁ?なんで持って無いんだよ!!クソがっ!!もう許せないメーン?そこの生意気女、お前が稼ぐと良いぜメーン?あぁん?お前らのせいだぞ??分かってんのかメーン?」
「稼ぐわけ無いでしょ。あとメーンって何だよクソ赤トカゲ」
イヴがキレる。ひたすら変な口調で話す赤トカゲFGDも売り言葉に買い言葉、ヒートアップする。
「はい、カッチーン!!マジでやっちゃうからねオイラ!マジでやれちゃうからね!?」
FGDがにじり寄る。チンピラとチンピラがバチバチと睨み合う。
まあいいや、と嘉武はギルドで退室の旨を伝え、料金を払う。そして表へ出ると地面にめり込んだFGDの姿があった。
「ほんと、これだからワイゼルは嫌なのよ」とイヴはFGDを見下しながら言う。
そして、二人はワイゼルを出てディオーネ王国の都ローダルヘインへと向かう。顔合わせと実力テストまで、あと十日前後。変なこともあったがそれは忘れて一体、どんな出会いが待っているのだろうかと嘉武は期待で胸を膨らませた。
長い間、オルディスには世話になったと嘉武は心の中で感謝する。
(きっとまた皆に会いに来よう。オルディスはこの世界における、僕の故郷だから)
小さくなっていくオルディスを目に焼き付ける。
「ヨシタケ、どんだけあの街が気に入ってるのよ」と薄情娘の声がする。
「結構いい街だったじゃないか」
「まぁ・・・そうね」
薄情娘は複雑そうに答えた。
日が暮れる頃に二人はワイゼルへと到着する。イヴは遅すぎる嘉武に文句を垂れていた。
「もー、ヨシタケのせいでゆっくりする時間が全然無いじゃない!ちんたら移動するのが一番疲れるのよ!」
「悪かったって言ってるだろ!それに、そんなに言うなら置いて行けば良かっただろう」
「親切にしてやったってのに何なのよその言い方は!」
ご機嫌斜めだ。嘉武も口を聞きたく無くなって険悪な雰囲気になる。
そのまま歩みを進め、ワイゼル自慢の噴水広場にある冒険者ギルドで宿の手続きを行う。
「えぇ、オルディスから来ました。はい・・・」
嘉武は手続きを進めているとズカズカと歩いてくる男達が突然、嘉武の肩を押してどかす。
「あいあい、今日の依頼分はこれで!」
「う、承りました。それでは、こちらが報酬になります」
受付は苦笑いしながら報奨金を差し出す。きっと逆らえないのだろう。それにしても大した額だ。集団での狩りでかなり効率が良かったのだろう。
「ういうい」と下品に返事をし、金を数える品性のない冒険者。
「まあ、こんだけありゃ、良いだろ」
「何あんた達、後から来たんだから待ちなさいよ」
手続きも何もしていない、人任せなご機嫌斜めが男達に何故か絡んだ。
「何で俺たちがお前らみたいなガキ待たなくちゃいけねえんだよ」
「所詮ワイゼルの冒険者なんてそんなものよね、本当単細胞なやつばかりね」
「あ?口の減らねぇ嬢ちゃんだな、表出ろよかわいがってやるからさぁ」
嘉武は聞く耳を持たず手続きを再開する。受付も困りながら一応対応していると、表で大きな音がした。
一通り手続きを済ませ、ギルドを後にする嘉武。
表へ出てみれば炭化した男達と、清々しい顔をしたイヴが立っていた。
「あ~、すっきりした!さぁ、行っきましょう!」
「こ、殺してないよな・・・」
嘉武は念の為、炭化した男達のアホ顔を覗き込んだ。そして思う。イヴの怒りを買ってくれてありがとう、と。
ワイゼルの夜は煌びやかだ。日が暮れても街中の装飾が光り輝き、夜とは思えない明るさ。この街は資財に恵まれ、領主もかなり温厚。姿を見た者は数少ないが、人族では無いらしい。
エルフのお姉さんのお店があったり、オルディスと比べてお洒落な店が多い。ワイルドな獣人族やドワーフの男達が楽しそうに道を行く。様々な種族が行き交い、綺麗な女性も多く街の平均年齢自体が若い。
そう、ワイゼルは夜の楽しみが多く、周りの集落から遊びに来る人の数が多い歓楽街及びに、ここらの夜遊びスポットなのである。
ご多分に盛れず、嘉武も綺麗なエルフやお姉さんに目を奪われながら街を歩く。
「なんか、その顔不愉快なんですけど」
などと隣から声が聞こえ、嘉武は真顔に戻る。
「み、店を探していたんだよ」
「どうだか、あ、あそこいいわね。あそこにしましょう」
その日はイヴの選んだ適当な店で夕食を済ませた。
問題は翌日の朝だった。
明らかに変な男がギルドの前で待ち構えていた。風貌はドラゴニュート。オルディスに居た者よりは体躯が発達していて体の厚みが凄い。
そんな男は腕を組み、足を肩幅ほど開きながら嘉武とイヴをずっと睨んでいる。
「メーン?」
突如男が放った言葉は、メーン。
「はぁ?」
二人が言った。
「昨日、冒険者シメちゃったってのはお前らか?って話!」
「伝わるかよ」
嘉武はツッコんだ。
「オイラはFGD!昨日お前達がシメちゃった冒険者はオイラのチーム、「ドラゴンにゃんにゃんズ」のメンバーなんだよぅ!」
「あぁあぁ、だったらしっかりと躾ておきなさいよ、昨日のアレだって非常識的過ぎるから少し遊んであげただけなんだから」
「そのせいで、アイツらが動けないから・・・オイラが来たんだろうがァ!!誰が今日のオイラの遊び代稼ぐってんだよ!!そう!アイツらが居なけりゃ!自分で稼ぐしかねえだろがっ!」
FGDは唾を飛ばしながら激昴する。妙にリズミカルな話し方がまたクセなのだろう。
「要するに、金を出せと?」
嘉武は要点だけを理解した。それにしてもとんでもないクズ野郎に捕まったなと嘉武は思う
「正解正解!君、冴えてるね!だから、このオイラに十万マーニ、くださいな!」
「そんなに持ってねえよ」
ほら、と巾着を振るう嘉武、チャリチャリとは
鳴るものの、大層な金額は入っていない音がする。
「・・・はぁ?なんで持って無いんだよ!!クソがっ!!もう許せないメーン?そこの生意気女、お前が稼ぐと良いぜメーン?あぁん?お前らのせいだぞ??分かってんのかメーン?」
「稼ぐわけ無いでしょ。あとメーンって何だよクソ赤トカゲ」
イヴがキレる。ひたすら変な口調で話す赤トカゲFGDも売り言葉に買い言葉、ヒートアップする。
「はい、カッチーン!!マジでやっちゃうからねオイラ!マジでやれちゃうからね!?」
FGDがにじり寄る。チンピラとチンピラがバチバチと睨み合う。
まあいいや、と嘉武はギルドで退室の旨を伝え、料金を払う。そして表へ出ると地面にめり込んだFGDの姿があった。
「ほんと、これだからワイゼルは嫌なのよ」とイヴはFGDを見下しながら言う。
そして、二人はワイゼルを出てディオーネ王国の都ローダルヘインへと向かう。顔合わせと実力テストまで、あと十日前後。変なこともあったがそれは忘れて一体、どんな出会いが待っているのだろうかと嘉武は期待で胸を膨らませた。
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