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100.笑うあなたはとても素敵で
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「ククク……今のは危なかった」
「ご、ごめんなさい…!」
声音では真剣に謝っているのだが、おそらく驚きを隠せていなかった。
遠心力が落ち着き顔を上げると、シンは口元を手の甲で抑えて笑いを堪えようとしていたからだ。
し、シンが…声出して笑ってる…!
目を閉じて落ち着けようとして、それでも笑ってしまうようで、彼の腹筋がヒクヒクしている。
「はぁ……なんでそんな簡単に吹っ飛ぶわけ?」
「いえあの…え、だって」
「電車の中でイチャつくように見える事は避けようと思ってたのに…そんなのどうでもよくなるわ」
「えっ!そんな、気を遣ってもらって…もらって?」
気を遣ってもらってありがたいのか、そもそもここはありがとうと言うべきところなのか!?
いや間違いなく危ないところを助けてもらったから、ありがとうでいいんだよね…?
などと困惑していると、またシンの肩が小刻みに揺れ、自分の手で顔を覆う。
「クク……待って、ツボに入ってるから。抑えるから。これ以上やめて」
「は、はい!」
「それもだめ」
「は、はい…はいっ!?」
「あぁ~もう、可愛いな」
また可愛いって……!
シンは壁に私を戻し、ポールを握らせると、私の肩に自身の額を乗せるようにして顔を隠した。
私も赤面を押さえようとしながら黙ってその姿を見つめていたが、そのうち落ち着いたらしいシンは電車に乗った時よりも穏やかな声音で一息ついて口を開いた。
あ……初めてちゃんと、フードを被ったシンと、目を合わせたかも。
「もう、大丈夫」
「シンがこんなに笑ったの、初めて見ました」
「こんな笑ったの何年ぶりか」
「そんなに!?」
「ふ…ホント、飽きない」
また傾きが大きくなってシンの背中に圧力がかかり、シンがグッと近くなったが、シンはそのまま私の肩に顔を埋めた。
「っ!?シン…ん!?」
すぐに重さは落ち着いたものの、シンは顔を上げず肩にキスをした。
「ひ、人に見られちゃいますよ…!?」
「……大丈夫。フードで見えないだろう?」
「ん……」
小声で問うても、同じく小声で返ってきたのはそんな答えで、彼はこっそりと首にキスを落とす。
「…一応、今妊娠するかもしれない身体なんだから。
大事にして」
「っ!
……は、はい」
そうだ。
私今、妊活中なんだ。
彼との子供を……
身を硬くすると、彼はクスクス笑ってそっとまたキスをした。
ポールを握る手に、彼の手が重なって、ギュッと胸が熱くなった。
あぁ、私も、キスしたいなぁ……。
もっと彼の笑顔を見ていたかったとも思う。
カメラに収めてしまいたくなるほど、普段の彼とは違った明るい少年のような笑顔だった。
危ない所を守ってもらえたことも、あなたの笑う姿が見れたことも。
凄く嬉しくて、幸せで、大好きが溢れてしまいそう。
笑ったあなたが素敵だと言ってしまったら、彼は怒るのだろうか?
電車が到着すると人混みは少し解消され、シンもすぐに顔を離したが、私の熱気は治ることが無く、シンの顔を見上げる事も出来ずに過ごしてしまった。
顔を上げたらきっと、キスをしたい気持ちを抑えられなくなってしまうから。
「ご、ごめんなさい…!」
声音では真剣に謝っているのだが、おそらく驚きを隠せていなかった。
遠心力が落ち着き顔を上げると、シンは口元を手の甲で抑えて笑いを堪えようとしていたからだ。
し、シンが…声出して笑ってる…!
目を閉じて落ち着けようとして、それでも笑ってしまうようで、彼の腹筋がヒクヒクしている。
「はぁ……なんでそんな簡単に吹っ飛ぶわけ?」
「いえあの…え、だって」
「電車の中でイチャつくように見える事は避けようと思ってたのに…そんなのどうでもよくなるわ」
「えっ!そんな、気を遣ってもらって…もらって?」
気を遣ってもらってありがたいのか、そもそもここはありがとうと言うべきところなのか!?
いや間違いなく危ないところを助けてもらったから、ありがとうでいいんだよね…?
などと困惑していると、またシンの肩が小刻みに揺れ、自分の手で顔を覆う。
「クク……待って、ツボに入ってるから。抑えるから。これ以上やめて」
「は、はい!」
「それもだめ」
「は、はい…はいっ!?」
「あぁ~もう、可愛いな」
また可愛いって……!
シンは壁に私を戻し、ポールを握らせると、私の肩に自身の額を乗せるようにして顔を隠した。
私も赤面を押さえようとしながら黙ってその姿を見つめていたが、そのうち落ち着いたらしいシンは電車に乗った時よりも穏やかな声音で一息ついて口を開いた。
あ……初めてちゃんと、フードを被ったシンと、目を合わせたかも。
「もう、大丈夫」
「シンがこんなに笑ったの、初めて見ました」
「こんな笑ったの何年ぶりか」
「そんなに!?」
「ふ…ホント、飽きない」
また傾きが大きくなってシンの背中に圧力がかかり、シンがグッと近くなったが、シンはそのまま私の肩に顔を埋めた。
「っ!?シン…ん!?」
すぐに重さは落ち着いたものの、シンは顔を上げず肩にキスをした。
「ひ、人に見られちゃいますよ…!?」
「……大丈夫。フードで見えないだろう?」
「ん……」
小声で問うても、同じく小声で返ってきたのはそんな答えで、彼はこっそりと首にキスを落とす。
「…一応、今妊娠するかもしれない身体なんだから。
大事にして」
「っ!
……は、はい」
そうだ。
私今、妊活中なんだ。
彼との子供を……
身を硬くすると、彼はクスクス笑ってそっとまたキスをした。
ポールを握る手に、彼の手が重なって、ギュッと胸が熱くなった。
あぁ、私も、キスしたいなぁ……。
もっと彼の笑顔を見ていたかったとも思う。
カメラに収めてしまいたくなるほど、普段の彼とは違った明るい少年のような笑顔だった。
危ない所を守ってもらえたことも、あなたの笑う姿が見れたことも。
凄く嬉しくて、幸せで、大好きが溢れてしまいそう。
笑ったあなたが素敵だと言ってしまったら、彼は怒るのだろうか?
電車が到着すると人混みは少し解消され、シンもすぐに顔を離したが、私の熱気は治ることが無く、シンの顔を見上げる事も出来ずに過ごしてしまった。
顔を上げたらきっと、キスをしたい気持ちを抑えられなくなってしまうから。
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