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103.なんで彼がここに?
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卑怯な…シン……?
あの言葉の後、どれだけ否定しても、シンはその後口を聞いてはくれなかった。
握られた手も、最寄駅が近づくにつれ人も増えていき、彼によって手放された。
いつも彼が突き放すのは、何か理由があると思っていた。
賭けをしている、というのは、私を利用してるという意味なのだろう。
でも、それは私も同じなのだ。
シンを利用して、お見合い結婚を阻止しようとしていて、更にはしたくもないであろう身体の関係を持たせてしまっているのだ。
私のことを、好きではないのに……。
利害が一致しているのであれば、私たちは共犯者なのだろうか。
契約、として繋がっているのは間違いない。
ただ彼がその賭けについて言及しないのは、私に言う必要が無いからなのだろう。
契約を通すことで、目的は達成されるのかもしれない。
誰と賭けをしているのか、何があったのか……。
それを知りたいと言っても、きっと教えてもらえない。
でも、彼が話したくないなら、聞かなくていい。
それは契約の範囲外でもあるし、彼を好きだと思う事は、変わらないはずだから。
だから…本当に愛されなくても、私は……
静かに彼の後ろを歩いて、マンションにたどり着く。
玄関に入ると、見慣れぬ靴が置いてあった。
「っ……!ゆ……」
「おかえり~シン」
廊下に、聞き覚えのある声が聞こえる。
電気がついて、ようやく視界が開けた。
シンが一瞬、後ろに手を回そうとした手を引っ込めたのが分かった。
「え……前山、先輩…?」
「あれ、結奈ちゃんじゃん。
こんな夜遅くまで2人でいたの?」
「どうして先輩がシンの家に…?」
なんとなくシンにだけ聞こえるように小声で呟く。
シンが動揺しているのが背中越しに伝わってくるからだ。
「……今日はあの女たちと会うって言ってなかったか?」
「言ってたけど、シンがいないと面白くなくてさ。
帰ってくるまで酒パしてようと思って」
結奈ちゃんもどう?と覗き込む前山先輩の笑顔に、何か冷たいものを感じる。
「えっと…私、帰りますね。
授業での発表確認したかっただけですし…」
「まぁいいじゃん?
安心していいよシン。他に誰も連れてきてないから」
あの言葉の後、どれだけ否定しても、シンはその後口を聞いてはくれなかった。
握られた手も、最寄駅が近づくにつれ人も増えていき、彼によって手放された。
いつも彼が突き放すのは、何か理由があると思っていた。
賭けをしている、というのは、私を利用してるという意味なのだろう。
でも、それは私も同じなのだ。
シンを利用して、お見合い結婚を阻止しようとしていて、更にはしたくもないであろう身体の関係を持たせてしまっているのだ。
私のことを、好きではないのに……。
利害が一致しているのであれば、私たちは共犯者なのだろうか。
契約、として繋がっているのは間違いない。
ただ彼がその賭けについて言及しないのは、私に言う必要が無いからなのだろう。
契約を通すことで、目的は達成されるのかもしれない。
誰と賭けをしているのか、何があったのか……。
それを知りたいと言っても、きっと教えてもらえない。
でも、彼が話したくないなら、聞かなくていい。
それは契約の範囲外でもあるし、彼を好きだと思う事は、変わらないはずだから。
だから…本当に愛されなくても、私は……
静かに彼の後ろを歩いて、マンションにたどり着く。
玄関に入ると、見慣れぬ靴が置いてあった。
「っ……!ゆ……」
「おかえり~シン」
廊下に、聞き覚えのある声が聞こえる。
電気がついて、ようやく視界が開けた。
シンが一瞬、後ろに手を回そうとした手を引っ込めたのが分かった。
「え……前山、先輩…?」
「あれ、結奈ちゃんじゃん。
こんな夜遅くまで2人でいたの?」
「どうして先輩がシンの家に…?」
なんとなくシンにだけ聞こえるように小声で呟く。
シンが動揺しているのが背中越しに伝わってくるからだ。
「……今日はあの女たちと会うって言ってなかったか?」
「言ってたけど、シンがいないと面白くなくてさ。
帰ってくるまで酒パしてようと思って」
結奈ちゃんもどう?と覗き込む前山先輩の笑顔に、何か冷たいものを感じる。
「えっと…私、帰りますね。
授業での発表確認したかっただけですし…」
「まぁいいじゃん?
安心していいよシン。他に誰も連れてきてないから」
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ありがとうございます!!
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