103 / 104
102.夢心地の再告白
しおりを挟む
「……あ」
カクン、と顔がズレて、ハッと目を覚ました。
視界は空席と窓ガラスが広がっており、ガラスに反射して自分と黒パーカーが反射して映っている。
私が寄り掛かって眠ってしまっていたのが、その黒パーカーの人の肩だということも。
「あ、シン…!
ご、ごめんなさい」
「寝不足だろ?
寝てていい」
「ん……」
頭を手で寄せられて彼の肩に戻される。
さっきよりも凄く安定して、心地良い。
そのうち人が増えるから今だけだとも、彼は呟く。
そういう彼は既にパーカーのフードを被っていて、顔を隠している。
彼の顔面偏差値を考えたらフードを被るのはもったいないのだが、それなりの事情があるのだろう。
被る方が目立つような気もするが。
「……シン。
今日は、ありがとうございました」
「……大したことしてないけど」
「初めてのデート、楽しかったです」
「フッ。まるで小学生の日記みたいな一文だな」
「ふふ……」
とても大学のエリートとは思えない、と彼は鼻で笑うから、私も釣られて笑う。
まだ少し夢心地だ。
「…やっぱり私、シンが好きです。
シンが好き」
「……ここは観覧車じゃないよ」
「思った時に言わなきゃ、伝わらないでしょう?」
シンを見やると、シンもまた視線に気付いて顔を下ろした。
黒真珠の瞳がどことなく揺れている。
「助けてもらった時からずっと、あなたに恋してます。
あなたに好きな人がいても、私の気持ちはきっと変わらないから。
どうしても、伝えたくて」
きっとこの夢心地の時にしか、伝えられないだろうから。
私はにこやかに答えて、私たちの間に降りた彼の手を握る。
例え子供が産まれてなかったとしても、お見合い結婚させられたとしても。
あなたに想いを伝えた事で、きっと後悔は無くなるから。
ただ、あなたが欲しいとは、言えなかった。
まだ浅井さんと別れられていない状態では。
それを伝えるのは、卑怯過ぎて。
「もし、子供が出来た時に、あなたが結婚してもいいと思えるように、あなたに好きになってもらえるように、私、頑張ります。
だから…っ」
顔が目の前にあって、そっとキスをされる。
あんなに警戒してた電車の中なのに…!
ポケ~っとしていた頭がすっきりと覚醒して、顔がボッと熱くなった。
「……シ……!」
「……結奈の言葉は真っ直ぐ過ぎて、聞いてて歯が浮きそうだ」
握っていたはずの手は、いつの間にか絡め取られていて。
シンは目を伏せながら、私の頭にコツンと額を付けた。
「……ホントは浅井と何があったか、ちゃんと分かってる」
「え?」
「別れ話を切り出したことも」
ドクンと、心臓が冷たくなる気がした。
いつ……?
どうして……?
「それでも、見て見ぬふりをしてた。
……俺は結奈が思ってるほどいい奴じゃないよ」
「っ!そんなの、私が決めることです……!」
「後で幻滅するだろうな」
「しません!」
「フッ……結奈」
「はい!……はい?」
シンは絡めた手の甲にキスをする。
「これは俺の賭けだ。
お前を巻き込んでの、自分勝手な賭けだから」
「賭け……?」
シンはいつになく無表情に、フードの中から私を見つめる。
「卑怯な俺を、好きになる必要なんてないよ」
カクン、と顔がズレて、ハッと目を覚ました。
視界は空席と窓ガラスが広がっており、ガラスに反射して自分と黒パーカーが反射して映っている。
私が寄り掛かって眠ってしまっていたのが、その黒パーカーの人の肩だということも。
「あ、シン…!
ご、ごめんなさい」
「寝不足だろ?
寝てていい」
「ん……」
頭を手で寄せられて彼の肩に戻される。
さっきよりも凄く安定して、心地良い。
そのうち人が増えるから今だけだとも、彼は呟く。
そういう彼は既にパーカーのフードを被っていて、顔を隠している。
彼の顔面偏差値を考えたらフードを被るのはもったいないのだが、それなりの事情があるのだろう。
被る方が目立つような気もするが。
「……シン。
今日は、ありがとうございました」
「……大したことしてないけど」
「初めてのデート、楽しかったです」
「フッ。まるで小学生の日記みたいな一文だな」
「ふふ……」
とても大学のエリートとは思えない、と彼は鼻で笑うから、私も釣られて笑う。
まだ少し夢心地だ。
「…やっぱり私、シンが好きです。
シンが好き」
「……ここは観覧車じゃないよ」
「思った時に言わなきゃ、伝わらないでしょう?」
シンを見やると、シンもまた視線に気付いて顔を下ろした。
黒真珠の瞳がどことなく揺れている。
「助けてもらった時からずっと、あなたに恋してます。
あなたに好きな人がいても、私の気持ちはきっと変わらないから。
どうしても、伝えたくて」
きっとこの夢心地の時にしか、伝えられないだろうから。
私はにこやかに答えて、私たちの間に降りた彼の手を握る。
例え子供が産まれてなかったとしても、お見合い結婚させられたとしても。
あなたに想いを伝えた事で、きっと後悔は無くなるから。
ただ、あなたが欲しいとは、言えなかった。
まだ浅井さんと別れられていない状態では。
それを伝えるのは、卑怯過ぎて。
「もし、子供が出来た時に、あなたが結婚してもいいと思えるように、あなたに好きになってもらえるように、私、頑張ります。
だから…っ」
顔が目の前にあって、そっとキスをされる。
あんなに警戒してた電車の中なのに…!
ポケ~っとしていた頭がすっきりと覚醒して、顔がボッと熱くなった。
「……シ……!」
「……結奈の言葉は真っ直ぐ過ぎて、聞いてて歯が浮きそうだ」
握っていたはずの手は、いつの間にか絡め取られていて。
シンは目を伏せながら、私の頭にコツンと額を付けた。
「……ホントは浅井と何があったか、ちゃんと分かってる」
「え?」
「別れ話を切り出したことも」
ドクンと、心臓が冷たくなる気がした。
いつ……?
どうして……?
「それでも、見て見ぬふりをしてた。
……俺は結奈が思ってるほどいい奴じゃないよ」
「っ!そんなの、私が決めることです……!」
「後で幻滅するだろうな」
「しません!」
「フッ……結奈」
「はい!……はい?」
シンは絡めた手の甲にキスをする。
「これは俺の賭けだ。
お前を巻き込んでの、自分勝手な賭けだから」
「賭け……?」
シンはいつになく無表情に、フードの中から私を見つめる。
「卑怯な俺を、好きになる必要なんてないよ」
10
お気に入りに追加
534
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる