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94.入浴で曝け出して
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「……無茶し過ぎ」
「そ、そんなこと…」
「あんたは諸々鈍感過ぎる。
自分のこと分かってなさすぎ」
「う……っ」
反省しつつも、彼の指先が水面に浮かび上がり、私の肩を抱くので会話どころではなかった。
私は今、湯船の中で、背中には彼が張り付いているのだ。
行為を終えた直後、しばらくお互い息を整える間彼に抱き締められていたのだが、彼が思い立ったように自身を引き抜き、事後処理を軽く済ませると、彼は私に「風呂入れば?」と提案したのだ。
彼の部屋に来るという中にはここに泊まるという意味も含まれており、流石に化粧を落とさない訳にもいかないので心得てはいたのだが、まさかお風呂を用意してくれるとは思っていなかったので何も疑わぬまま彼に準備を任せシャワーを浴びた。
まさか入浴した直後、彼が入って来るなんて思っていなかった。
顔を合わせられずにいる私に気を遣ってか、背中側に周り後ろから軽く抱き締められている状態だが、これがなお悪い。
心拍で水面が揺れてしまっていないか気になるくらいだ。
これは彼が行為の前に言っていた“ムード”の続きなのだろうか……?
それにしたって、口調は少しキツめで、ムードというより責められてるとしか思えないのだが…
「……もうちょっと、自分を大事にしなよ」
「ん……は、はい……」
彼の鼻が髪を上げている私の首筋を撫でる。
触れられてるところが敏感になって、震えてしまいそうだ。
「……身体は平気?」
「っ、は、はい……」
「そ……」
「あ……」
うなじにキスされて、身体が跳ねる。
水面が波打つのを見て、ギュッと目を閉じた。
「……不慣れだな」
「あ!当たり前です、よ…!」
「ふ……」
わ、笑った!?
「からかってます?」
「いや」
彼の手が私の手の甲を探り、恋人のように指を絡める。
「……こっち見て」
「は、はい……ん」
恐る恐る振り返るも、彼の瞳を認知した直後には、唇を軽く啄むようにキスをされた。
お風呂の水面に波紋が広がり、少しだけ身体を向けると、そっと引き寄せられる。
チュ……チュ…………
触れる音が浴室に反響して耳を刺激する。
なんて、優しいキスをするんだろう?
叱ったかと思えば笑って、こんな風にキスをして…
恥じらいに身を引くと、すんなり離してくれたが、額が重なりそうなくらい近くで見つめられる形となった。
洗いたての湿った黒髪から滴る雫も、上げられた前髪により普段見れない綺麗な額も、彼の色気に満ちた漆黒の瞳に魅入られてしまえば観察など出来ない。
私の頬に添えられていた彼の親指が目の下を軽く撫でた時に、ハッとした。
化粧を落としてしまったから…クマを見られてしまった。
「……化粧してきた時点で、気付いてるから」
「え?」
動揺に目を泳がせたのがバレてるのか、彼は未だ表情を変えずにそう呟いた。
「俺は…人間らしくていいと思うけど」
「んっ」
頬にあった手が私の耳をゆっくり撫で、髪を掛けてくれた。
その動作にすら感じてしまい、つい声を漏らしてしまった。
「あんたは…自分を捨てなくていい。
その為に今努力してるんだろ?
大事なこと見失うな」
その為の努力……。
シンと子作りしてるのは、私が自身の意思で親の取り決めから逃れたいと初めて願ったことがきっかけだ。
痛みに鈍感で、子作りの為に我慢も必要だと自分の気持ちを押し殺そうとした。
そんな私を、彼は見てくれている。
心配してくれる。
ちゃんと理解しようとしてくれている。
ジワっと、涙が滲んだ。
どうして、こんなに嬉しいんだろう?
「そ、そんなこと…」
「あんたは諸々鈍感過ぎる。
自分のこと分かってなさすぎ」
「う……っ」
反省しつつも、彼の指先が水面に浮かび上がり、私の肩を抱くので会話どころではなかった。
私は今、湯船の中で、背中には彼が張り付いているのだ。
行為を終えた直後、しばらくお互い息を整える間彼に抱き締められていたのだが、彼が思い立ったように自身を引き抜き、事後処理を軽く済ませると、彼は私に「風呂入れば?」と提案したのだ。
彼の部屋に来るという中にはここに泊まるという意味も含まれており、流石に化粧を落とさない訳にもいかないので心得てはいたのだが、まさかお風呂を用意してくれるとは思っていなかったので何も疑わぬまま彼に準備を任せシャワーを浴びた。
まさか入浴した直後、彼が入って来るなんて思っていなかった。
顔を合わせられずにいる私に気を遣ってか、背中側に周り後ろから軽く抱き締められている状態だが、これがなお悪い。
心拍で水面が揺れてしまっていないか気になるくらいだ。
これは彼が行為の前に言っていた“ムード”の続きなのだろうか……?
それにしたって、口調は少しキツめで、ムードというより責められてるとしか思えないのだが…
「……もうちょっと、自分を大事にしなよ」
「ん……は、はい……」
彼の鼻が髪を上げている私の首筋を撫でる。
触れられてるところが敏感になって、震えてしまいそうだ。
「……身体は平気?」
「っ、は、はい……」
「そ……」
「あ……」
うなじにキスされて、身体が跳ねる。
水面が波打つのを見て、ギュッと目を閉じた。
「……不慣れだな」
「あ!当たり前です、よ…!」
「ふ……」
わ、笑った!?
「からかってます?」
「いや」
彼の手が私の手の甲を探り、恋人のように指を絡める。
「……こっち見て」
「は、はい……ん」
恐る恐る振り返るも、彼の瞳を認知した直後には、唇を軽く啄むようにキスをされた。
お風呂の水面に波紋が広がり、少しだけ身体を向けると、そっと引き寄せられる。
チュ……チュ…………
触れる音が浴室に反響して耳を刺激する。
なんて、優しいキスをするんだろう?
叱ったかと思えば笑って、こんな風にキスをして…
恥じらいに身を引くと、すんなり離してくれたが、額が重なりそうなくらい近くで見つめられる形となった。
洗いたての湿った黒髪から滴る雫も、上げられた前髪により普段見れない綺麗な額も、彼の色気に満ちた漆黒の瞳に魅入られてしまえば観察など出来ない。
私の頬に添えられていた彼の親指が目の下を軽く撫でた時に、ハッとした。
化粧を落としてしまったから…クマを見られてしまった。
「……化粧してきた時点で、気付いてるから」
「え?」
動揺に目を泳がせたのがバレてるのか、彼は未だ表情を変えずにそう呟いた。
「俺は…人間らしくていいと思うけど」
「んっ」
頬にあった手が私の耳をゆっくり撫で、髪を掛けてくれた。
その動作にすら感じてしまい、つい声を漏らしてしまった。
「あんたは…自分を捨てなくていい。
その為に今努力してるんだろ?
大事なこと見失うな」
その為の努力……。
シンと子作りしてるのは、私が自身の意思で親の取り決めから逃れたいと初めて願ったことがきっかけだ。
痛みに鈍感で、子作りの為に我慢も必要だと自分の気持ちを押し殺そうとした。
そんな私を、彼は見てくれている。
心配してくれる。
ちゃんと理解しようとしてくれている。
ジワっと、涙が滲んだ。
どうして、こんなに嬉しいんだろう?
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