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81.淡々と妊娠計画案
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「……ごめんなさい……」
シャワーを浴び、今はお互いベッドの上。
私は既に鼻の上まですっぽり布団に潜っているが、彼は熱いのかズボンのまま、その肉体美を露にして腰掛けている。
そのベッドに付かれた筋張った腕を見て、私は萎縮してしまっている。
理由は、彼が恐いからではない。
自分から迫った癖に、性行為を中断してしまったからだ。
そしてその中断理由も、あの人との行為によって恐怖したからではなかった。
シンとする事に、何の恐怖も感じなかった。
出来なかったのだ。
これからする、という時に始まった、文字通りの生理現象によって。
「…いいよ。
こっちも頭が冷やせた」
頭を冷やす、という表現にビクッと震える。
つまり何か怒っていたのだろうか?
私がした諸々の行為に……とか。
「わ、私から誘っておいて…こんな……」
何と言おうか、悩んでしまう。
ただの言い訳になってしまう。
違和感に気付きトイレに入ったのち、出血を彼に告げ、私達はあのホテルを後にしたのだ。
こういった特殊なホテルでは外出が出来ないとのことで、何の準備もしていなかった私は、泊まることが困難だった。
彼にお金も払ってもらったというのに、あの派手な部屋から早々に身を引くことにしたのも罪悪感の一つ。
コンビニで用品を買い、結局いつものように彼の部屋に文字通りお邪魔してしまっている。
ふと思えば、自宅に帰るという選択もあったはずなのに…不思議だ。
「……体調はどう?」
「え……っ?」
布団が揺れて彼が視界の隅から顔を覗き込み、頬に手を添え視線を向けさせた。
相変わらずの美形がこちらを見つめているこの状況下で、湿った彼の髪と目のやり場に困る美しい肉体がそう感じさせるのだろうけど。
さっきまで全く意識しなかったというのに、急に……。
「身体。痛くない?」
「だ…大丈夫……です…………!」
思わず、また顔を逸らし、それだけでは足らずに反対を向いて布団を被るように横になった。
ただ生理になった私の身体を気遣ってくれただけなのに…
これはきっと、日中の反作用なんだ。
彼が昼間、私を避けるから…こうして視線を求められたり、気にかけてくれたりする事が嬉しくなって…
…って。あんな事があったのに。
すっかり忘れたかのように舞い上がって、あの人との事も一瞬で頭から抜けてしまうなんて。
気持ちが昂ったかと思えば、瞼の裏に、一瞬で今日の出来事が蘇る。
私はなんて、薄情なの……。
「……ちょうどいいな」
「え?」
彼は綺麗な指先を口元に当て、まるで推理小説に出てくる探偵のように、遠くを見つめて淡々と分析する。
「今日生理が来たなら、妊娠の可能性は低いだろ」
ドキッと、心臓が痛む。
そうだ。今日したけど…あの人の子供を妊娠する可能性は低い。
つまりはシンとした事も、またリセットされたのと同じという事だが…
「妊娠しやすい時期も分かる。
いつすればいいか計画立てられる」
ドクンと、鼓動が強まる。
そうだ。
元々、その為なんだ。
彼が優してくれるのも、こうして関与してくれるのも。
妊娠することが目的で、その周期から外れる時期は関係を結ぶ必要が無くなる。
そしたら、私はまたあの人と……?
今日の出来事が脳裏によぎって、気付かれないように目を逸らした。
「そう…ですね」
そう声を絞る事で、精一杯だった。
なんだか、泣きそうで。
シャワーを浴び、今はお互いベッドの上。
私は既に鼻の上まですっぽり布団に潜っているが、彼は熱いのかズボンのまま、その肉体美を露にして腰掛けている。
そのベッドに付かれた筋張った腕を見て、私は萎縮してしまっている。
理由は、彼が恐いからではない。
自分から迫った癖に、性行為を中断してしまったからだ。
そしてその中断理由も、あの人との行為によって恐怖したからではなかった。
シンとする事に、何の恐怖も感じなかった。
出来なかったのだ。
これからする、という時に始まった、文字通りの生理現象によって。
「…いいよ。
こっちも頭が冷やせた」
頭を冷やす、という表現にビクッと震える。
つまり何か怒っていたのだろうか?
私がした諸々の行為に……とか。
「わ、私から誘っておいて…こんな……」
何と言おうか、悩んでしまう。
ただの言い訳になってしまう。
違和感に気付きトイレに入ったのち、出血を彼に告げ、私達はあのホテルを後にしたのだ。
こういった特殊なホテルでは外出が出来ないとのことで、何の準備もしていなかった私は、泊まることが困難だった。
彼にお金も払ってもらったというのに、あの派手な部屋から早々に身を引くことにしたのも罪悪感の一つ。
コンビニで用品を買い、結局いつものように彼の部屋に文字通りお邪魔してしまっている。
ふと思えば、自宅に帰るという選択もあったはずなのに…不思議だ。
「……体調はどう?」
「え……っ?」
布団が揺れて彼が視界の隅から顔を覗き込み、頬に手を添え視線を向けさせた。
相変わらずの美形がこちらを見つめているこの状況下で、湿った彼の髪と目のやり場に困る美しい肉体がそう感じさせるのだろうけど。
さっきまで全く意識しなかったというのに、急に……。
「身体。痛くない?」
「だ…大丈夫……です…………!」
思わず、また顔を逸らし、それだけでは足らずに反対を向いて布団を被るように横になった。
ただ生理になった私の身体を気遣ってくれただけなのに…
これはきっと、日中の反作用なんだ。
彼が昼間、私を避けるから…こうして視線を求められたり、気にかけてくれたりする事が嬉しくなって…
…って。あんな事があったのに。
すっかり忘れたかのように舞い上がって、あの人との事も一瞬で頭から抜けてしまうなんて。
気持ちが昂ったかと思えば、瞼の裏に、一瞬で今日の出来事が蘇る。
私はなんて、薄情なの……。
「……ちょうどいいな」
「え?」
彼は綺麗な指先を口元に当て、まるで推理小説に出てくる探偵のように、遠くを見つめて淡々と分析する。
「今日生理が来たなら、妊娠の可能性は低いだろ」
ドキッと、心臓が痛む。
そうだ。今日したけど…あの人の子供を妊娠する可能性は低い。
つまりはシンとした事も、またリセットされたのと同じという事だが…
「妊娠しやすい時期も分かる。
いつすればいいか計画立てられる」
ドクンと、鼓動が強まる。
そうだ。
元々、その為なんだ。
彼が優してくれるのも、こうして関与してくれるのも。
妊娠することが目的で、その周期から外れる時期は関係を結ぶ必要が無くなる。
そしたら、私はまたあの人と……?
今日の出来事が脳裏によぎって、気付かれないように目を逸らした。
「そう…ですね」
そう声を絞る事で、精一杯だった。
なんだか、泣きそうで。
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