77 / 104
76.貴方に私はあげられない
しおりを挟む
「やっ……ん!」
グッとまた押し込まれ、有無を言わさずキスをされる。
彼は私の両手を片手一つで私の頭の上に移動させ、壁に潰れるくらい押し付けてくる。
話の論点がズレている。
私は彼に許して欲しいなんて少しも思っていない。
例え多少の誤解があったとしても、浅井さんと別れたいという気持ちはそこに無い。
私が誰を好きか、ということは関係しないのだ、この決別には。
「はぁ…結奈……」
呼吸を荒げキスをしながら、私のシャツに手を伸ばし、服の上から胸を強く握られて、身体が痛みに反応する。
こんなの、違う。
間違っている。
彼は、欲求を満たしたいだけだ。
私を物にして、性欲を満たす、それだけ。
だからこんなにも──痛い。
ふと、またシンが頭に浮かんだ。
比べるのは卑怯だ。
きっと人によって愛情表現は違う。
人と接する事が少なかった私には、比べる対象すら少ないというのに。
ちょっと優しくされただけ、だというのに。
『身体の関係を持ってから恋愛に発展することもある』
そう浅井さんは言った。
きっと身体からの関係も、本能的な相性であったりするのだろう。
浅井さんはそれを信じている。
私と身体の関係を持つ事で、芽吹く事があると。
「んっ……」
口を割られ、スッと入り込んできた舌に、身体が震える。
──でも、それならなお…無理だ。
私の身体は…浅井さんと初めてキスをしたあの日から既に、彼を拒絶して震えている。
浅井さんが私へ何か特別な感情を感じるのだとしたらそれは──
私がシンに抱くものとは、きっと違うもの。
「っ…ってぇ……!」
「はっ…はっ……」
身体が離れて、ようやく息をついた。
彼の口から、血が出ている。
私が浅井さんの舌を噛んだからだ。
護身術として教えてもらったことは、確かに有効的だった。
あの時のシンの満足そうな渋り顔よりも、浅井さんは顔をしかめ、瞳には僅かに涙が滲んでいた。
口の中に、浅井さんの血の味が広がっている。
言葉で通じないなら、身体で示すしかない。
私は浅井さんを受け入れない。
浅井さんを好きにはなれない。
もう、心を埋め尽くす人がいるから。
身も心も、既に、彼に捧げてしまっているから──
そう心の中で訴えて、あぁ、と納得する。
プライベートでの距離にあれほど落ち込んだというのに私は、彼を好きだと言えるのだと。
彼がどんなに私を引き離したとしても、私の想いは変わらないのだろうと。
これを恋と言わずに、なんと言えばいいのだろう。
この気持ちを彼に伝えたい。
早く彼に会いたい。
そう心を弾ませてしまっている。
だから…私を貴方にあげることは出来ない。
グッとまた押し込まれ、有無を言わさずキスをされる。
彼は私の両手を片手一つで私の頭の上に移動させ、壁に潰れるくらい押し付けてくる。
話の論点がズレている。
私は彼に許して欲しいなんて少しも思っていない。
例え多少の誤解があったとしても、浅井さんと別れたいという気持ちはそこに無い。
私が誰を好きか、ということは関係しないのだ、この決別には。
「はぁ…結奈……」
呼吸を荒げキスをしながら、私のシャツに手を伸ばし、服の上から胸を強く握られて、身体が痛みに反応する。
こんなの、違う。
間違っている。
彼は、欲求を満たしたいだけだ。
私を物にして、性欲を満たす、それだけ。
だからこんなにも──痛い。
ふと、またシンが頭に浮かんだ。
比べるのは卑怯だ。
きっと人によって愛情表現は違う。
人と接する事が少なかった私には、比べる対象すら少ないというのに。
ちょっと優しくされただけ、だというのに。
『身体の関係を持ってから恋愛に発展することもある』
そう浅井さんは言った。
きっと身体からの関係も、本能的な相性であったりするのだろう。
浅井さんはそれを信じている。
私と身体の関係を持つ事で、芽吹く事があると。
「んっ……」
口を割られ、スッと入り込んできた舌に、身体が震える。
──でも、それならなお…無理だ。
私の身体は…浅井さんと初めてキスをしたあの日から既に、彼を拒絶して震えている。
浅井さんが私へ何か特別な感情を感じるのだとしたらそれは──
私がシンに抱くものとは、きっと違うもの。
「っ…ってぇ……!」
「はっ…はっ……」
身体が離れて、ようやく息をついた。
彼の口から、血が出ている。
私が浅井さんの舌を噛んだからだ。
護身術として教えてもらったことは、確かに有効的だった。
あの時のシンの満足そうな渋り顔よりも、浅井さんは顔をしかめ、瞳には僅かに涙が滲んでいた。
口の中に、浅井さんの血の味が広がっている。
言葉で通じないなら、身体で示すしかない。
私は浅井さんを受け入れない。
浅井さんを好きにはなれない。
もう、心を埋め尽くす人がいるから。
身も心も、既に、彼に捧げてしまっているから──
そう心の中で訴えて、あぁ、と納得する。
プライベートでの距離にあれほど落ち込んだというのに私は、彼を好きだと言えるのだと。
彼がどんなに私を引き離したとしても、私の想いは変わらないのだろうと。
これを恋と言わずに、なんと言えばいいのだろう。
この気持ちを彼に伝えたい。
早く彼に会いたい。
そう心を弾ませてしまっている。
だから…私を貴方にあげることは出来ない。
0
お気に入りに追加
534
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。


体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる