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75.キスマークの理由
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「……結奈はさ、身体の関係を持ってから恋愛に発展することもあるって知らないよね?」
「え……?」
一瞬だった。
顔を上げると、彼は私の手首を掴み、私の背後の壁に押し付けた。
その力強さに、ビクッと身体が震える。
「浅井さん…?」
「結奈が彼女になってから…ずっと我慢してた…」
「えっ…」
「最初、恐がらせてしまったかもしれない。
それでも俺を彼氏にしてくれて嬉しかったし、順序を守って優しくしなきゃって…そう思って…」
彼は眉間と鼻にもシワを寄せ、悔しそうに私を見つめていた。
「でも、それが仇になったな。
前山があんたにちょっかい掛けた時点で、気付くべきだった」
「っ……!」
前山先輩が…なんで……っ!
「前山のこと、好きなんだろ」
「えっ…っ!?」
首を片手で掴まれて、一気に傾けさせられる。
突然のことで折られるかと思うほどだが、彼は首に顔を近づけた。
「まだこんなにハッキリ残ってるじゃんか…あいつに付けられたキスマーク」
そう言われて、線と線が繋がる。
『悪い虫がつかないように』
3日前、あの人はそう言った。
何をされたのか、分かっていなかった。
それでも既に、3日は経っているのだ。
彼に何かをつけられているとしても、何度もシャワーを浴びているし、傷のようなものならもう治りかけててもおかしくはない。
そして、浅井さんの言う“キス”マークという言葉が当てはまるとすれば…
その場所は昨日何度も、シンがキスをした場所…
私を抱いた時も、私が帰る時も…
何度も重ねるように、キスを落とした場所だ。
どうしてシンは、この場所にキスを…?
「ほら、図星じゃんか。
あの後抱かれたんじゃないのか?」
「っ…!
違っ……!」
「だから俺とは寝れないって思ったんだろ!」
背後の廊下に響かないようにか、抑えられた怒声は、苦虫を噛み潰したような、低い響きだった。
身体の芯が震えた。
高圧的なのは酔ってた時にも感じていた。
こちらの意見は尊重されないと、何度も分かっていた事だ。
少しの油断と、伝え切ったという自己満足。
彼は初めから、私の話は聞いてない。
結論の、別れたいということしか。
「…でもいいんだよ俺は…
例え結奈の処女をあいつに取られてたって…」
「っ!
違うんです…私は彼とは何も…」
「じゃあ証拠見せて」
「え……っ?」
唇を、グッと押し付けられた。
股の間に彼の足が入り込み、下腹部に押し当てられる。
「っ…浅井さんっ…!」
押して逃げようにも、壁に上から押さえつけられてる手は、全く浮き上がらない。
怯える私を見る彼の目には、欲情の色が浮かんでいた。
「結奈は俺の彼女だ。
誰にも渡さない。
ここでヤらせてくれたら、結奈のことまた信じてやるよ」
「え……?」
一瞬だった。
顔を上げると、彼は私の手首を掴み、私の背後の壁に押し付けた。
その力強さに、ビクッと身体が震える。
「浅井さん…?」
「結奈が彼女になってから…ずっと我慢してた…」
「えっ…」
「最初、恐がらせてしまったかもしれない。
それでも俺を彼氏にしてくれて嬉しかったし、順序を守って優しくしなきゃって…そう思って…」
彼は眉間と鼻にもシワを寄せ、悔しそうに私を見つめていた。
「でも、それが仇になったな。
前山があんたにちょっかい掛けた時点で、気付くべきだった」
「っ……!」
前山先輩が…なんで……っ!
「前山のこと、好きなんだろ」
「えっ…っ!?」
首を片手で掴まれて、一気に傾けさせられる。
突然のことで折られるかと思うほどだが、彼は首に顔を近づけた。
「まだこんなにハッキリ残ってるじゃんか…あいつに付けられたキスマーク」
そう言われて、線と線が繋がる。
『悪い虫がつかないように』
3日前、あの人はそう言った。
何をされたのか、分かっていなかった。
それでも既に、3日は経っているのだ。
彼に何かをつけられているとしても、何度もシャワーを浴びているし、傷のようなものならもう治りかけててもおかしくはない。
そして、浅井さんの言う“キス”マークという言葉が当てはまるとすれば…
その場所は昨日何度も、シンがキスをした場所…
私を抱いた時も、私が帰る時も…
何度も重ねるように、キスを落とした場所だ。
どうしてシンは、この場所にキスを…?
「ほら、図星じゃんか。
あの後抱かれたんじゃないのか?」
「っ…!
違っ……!」
「だから俺とは寝れないって思ったんだろ!」
背後の廊下に響かないようにか、抑えられた怒声は、苦虫を噛み潰したような、低い響きだった。
身体の芯が震えた。
高圧的なのは酔ってた時にも感じていた。
こちらの意見は尊重されないと、何度も分かっていた事だ。
少しの油断と、伝え切ったという自己満足。
彼は初めから、私の話は聞いてない。
結論の、別れたいということしか。
「…でもいいんだよ俺は…
例え結奈の処女をあいつに取られてたって…」
「っ!
違うんです…私は彼とは何も…」
「じゃあ証拠見せて」
「え……っ?」
唇を、グッと押し付けられた。
股の間に彼の足が入り込み、下腹部に押し当てられる。
「っ…浅井さんっ…!」
押して逃げようにも、壁に上から押さえつけられてる手は、全く浮き上がらない。
怯える私を見る彼の目には、欲情の色が浮かんでいた。
「結奈は俺の彼女だ。
誰にも渡さない。
ここでヤらせてくれたら、結奈のことまた信じてやるよ」
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