お見合い結婚が嫌なので子作り始めました。

天野 奏

文字の大きさ
上 下
76 / 104

75.キスマークの理由

しおりを挟む
「……結奈はさ、身体の関係を持ってから恋愛に発展することもあるって知らないよね?」

「え……?」

 一瞬だった。

 顔を上げると、彼は私の手首を掴み、私の背後の壁に押し付けた。

 その力強さに、ビクッと身体が震える。

「浅井さん…?」

「結奈が彼女になってから…ずっと我慢してた…」

「えっ…」

「最初、恐がらせてしまったかもしれない。
それでも俺を彼氏にしてくれて嬉しかったし、順序を守って優しくしなきゃって…そう思って…」

 彼は眉間と鼻にもシワを寄せ、悔しそうに私を見つめていた。

「でも、それが仇になったな。
前山があんたにちょっかい掛けた時点で、気付くべきだった」

「っ……!」

 前山先輩が…なんで……っ!

「前山のこと、好きなんだろ」

「えっ…っ!?」

 首を片手で掴まれて、一気に傾けさせられる。

 突然のことで折られるかと思うほどだが、彼は首に顔を近づけた。

「まだこんなにハッキリ残ってるじゃんか…あいつに付けられたキスマーク」

 そう言われて、線と線が繋がる。

『悪い虫がつかないように』

 3日前、あの人はそう言った。

 何をされたのか、分かっていなかった。

 それでも既に、3日は経っているのだ。
 彼に何かをつけられているとしても、何度もシャワーを浴びているし、傷のようなものならもう治りかけててもおかしくはない。

 そして、浅井さんの言う“キス”マークという言葉が当てはまるとすれば…

 その場所は昨日何度も、シンがキスをした場所…

 私を抱いた時も、私が帰る時も…

 何度も重ねるように、キスを落とした場所だ。

 どうしてシンは、この場所にキスを…?

「ほら、図星じゃんか。
あの後抱かれたんじゃないのか?」

「っ…!
違っ……!」

「だから俺とは寝れないって思ったんだろ!」
 
 背後の廊下に響かないようにか、抑えられた怒声は、苦虫を噛み潰したような、低い響きだった。
 
 身体の芯が震えた。

 高圧的なのは酔ってた時にも感じていた。
 こちらの意見は尊重されないと、何度も分かっていた事だ。

 少しの油断と、伝え切ったという自己満足。

 彼は初めから、私の話は聞いてない。

 結論の、別れたいということしか。

「…でもいいんだよ俺は…
例え結奈の処女をあいつに取られてたって…」

「っ!
違うんです…私は彼とは何も…」

「じゃあ証拠見せて」

「え……っ?」

 唇を、グッと押し付けられた。
 股の間に彼の足が入り込み、下腹部に押し当てられる。

「っ…浅井さんっ…!」
 
 押して逃げようにも、壁に上から押さえつけられてる手は、全く浮き上がらない。

 怯える私を見る彼の目には、欲情の色が浮かんでいた。

「結奈は俺の彼女だ。
誰にも渡さない。
ここでヤらせてくれたら、結奈のことまた信じてやるよ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...