お見合い結婚が嫌なので子作り始めました。

天野 奏

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54.決定

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 浅井さんは特に何か言うわけでも、その場で何かをするわけでもなく、ただ手を引いて大学を出た。

 私は連れ添ったまま、無言で隣を歩いていた。

 一度アドレスを交換すると言われケータイを見せた程度で、その後は何もない。

 どこに行く、という話も無かったが、ただ彼に従って目的地に着いてから話せば良いと、そう思いつつ、頭の中は他のことでいっぱいだった。

 きっと、に浅井さんと付き合ってる姿を見たら、前山先輩も興が冷めて、シンとの関係も無くなる。

 一度正式に告白した浅井さんを傷付けなくて済むし、シンとの契約は私からの要請であって、契約を破棄すればいい。

 昨日行為に及ばなかった事を要因とすれば相手も何も言えないだろう。

 きっと誰も傷付かない。
 
 シンが前山先輩の手先だったら…そうでなくとも、彼は大学生活で私とまともに顔を合わせる気は無いみたいだし。

 浅井さんとの付き合いに特に口を出さないのも、私に選択肢を与える為なら…

   でもそれなら、何故前山先輩の言いなりなの?
 私と浅井さんが付き合うのは、前山先輩には不利な案件なのでは?

 それをずっと黙認しているのは、私の仮定が間違えてるから?

 どうしてシンは……

 そう考えた所で、空いてる手の拳をキュッと握った。

 私は…人を疑ってばかりだ。


「着いたよ」
「え……」

 ふと止まった場所で、顔を上げると、周りに人影はほとんど無くて。

 明るいネオンの色に頬を照らされて、初めて気付く。

は、ちゃんとした場所がいいと思って」

 顔を上げたそこは、大きくHOTELと書かれ、ピンクのネオンで包まれた、少し派手なビルだった。

「っ……!」

 ふと、初日のことが頭を過ぎる。
 このホテルに入るということはつまり…浅井さんと身体の関係を結ぶということ。

 私が始めに、お願いした事。
 それに浅井さんは応えてくれている。

 曇空が、ゴロゴロと音を立てていることに、今になってようやく気付いた。

『あんたが浅井を選んだんだ』

 ハッと、顔を上げる。
 
 そうか……これが、私の選択。
 
「雨降りそうだし…入ろうか」

 ギュッと、浅井さんが私の手を引いた。


 
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