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53.全て思惑通り?
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放課後の、空き教室。
今日は曇り空のせいか、昨日のような綺麗な紅は差し込んで来なかった。
薄暗い教室の壁に、一人背中を預けて、あの人を待つ。
もう10分ほどここにいる。
早めに来すぎたのだろうか?
段々と、胸が騒つく。
浅井さんに、別れを切り出さないといけないのに。
心が、弱くなってしまいそう。
ここで、前山先輩とシンが繋がっていると聞いた時、あまり理解ができなかった。
でも、先程相田さんから言われた言葉が、どうしても胸を突く。
前山先輩の食堂での一件。
あの時シンが表情を変えなかった理由。
私の体調に気付いていた理由。
シンが私に近づいた理由。
もし、シンがずっと『前山先輩に加担しているのだとしたら?』
シンと前山先輩の関係は分からない。
ただどこか、友達とは違うように思える。
前山先輩のシンを呼ぶあの姿は…まるでお父様が秘書を連れる時のような…主従のように感じた。
ただ歳が離れているからか、それとも他に理由がるのか、何も知らない私には分からないが。
シンは、何故同じ講義を受けているの?
何故、会って一晩過ごしただけの私の体調を早くから見抜いていたの?
居酒屋の話の時も言ってた。
目線の先にいたから、と。
でも、私は覚えていない。
シンは、私をよく観察しているように思える。
浅井さんと居酒屋を出た後、助けに入ったのは、本当に偶然?
ずっと、前山先輩の指示で…前山先輩の都合で、動いていたんじゃ…?
まるで私の見張りのように…
これじゃまるで、私の父にされてた事と一緒じゃない…!
でも──…
それなら…何故、私を抱いたの?
それも、作戦のうち?
どうしてあんなに…
頬に手を当て、そっと唇を撫でる。
また胸が、ギュッと熱くなって、目に涙が浮かんだ。
あぁ……ダメだ。
「結奈!遅くなってごめん!」
「あ…浅井さん…!」
勢いよく開いた扉に、ハッと振り返る。
頬を伝う涙を慌てて拭うも、浅井さんは気付いたのか真剣な表情で私を抱き締めた。
「ごめん…待たせて、不安にさせたよね?」
違う……違うの……!
ちゃんと、言わなきゃいけない…!
「浅井さ…っ!」
唇にキスが降りてくる。
熱いキス。
そう思った。
浅井さんは私の言葉をよく遮る。
まるで私の気持ちを知っていて、耳を塞ぐかのようだ。
それでもこうして私を求めてくれるのは、何故なのだろう?
私はまだ、ちゃんと、浅井さんを知ろうとしていない。
もし、浅井さんと普通にお付き合い出来たら。
私は、誰かの裏の顔を探るような不安を持たずにいられるのではないだろうか。
身体の関係にこだわる事なく。
好きなところを見つけていく方が、ずっと…裏切りの行為すら後ろめたく無くなっていくのではないのだろうか?
お父様を裏切って勘当されることなく、ちゃんと恋人として紹介して…
無難な結婚と妊娠をすることができるのではないだろうか?
今日は曇り空のせいか、昨日のような綺麗な紅は差し込んで来なかった。
薄暗い教室の壁に、一人背中を預けて、あの人を待つ。
もう10分ほどここにいる。
早めに来すぎたのだろうか?
段々と、胸が騒つく。
浅井さんに、別れを切り出さないといけないのに。
心が、弱くなってしまいそう。
ここで、前山先輩とシンが繋がっていると聞いた時、あまり理解ができなかった。
でも、先程相田さんから言われた言葉が、どうしても胸を突く。
前山先輩の食堂での一件。
あの時シンが表情を変えなかった理由。
私の体調に気付いていた理由。
シンが私に近づいた理由。
もし、シンがずっと『前山先輩に加担しているのだとしたら?』
シンと前山先輩の関係は分からない。
ただどこか、友達とは違うように思える。
前山先輩のシンを呼ぶあの姿は…まるでお父様が秘書を連れる時のような…主従のように感じた。
ただ歳が離れているからか、それとも他に理由がるのか、何も知らない私には分からないが。
シンは、何故同じ講義を受けているの?
何故、会って一晩過ごしただけの私の体調を早くから見抜いていたの?
居酒屋の話の時も言ってた。
目線の先にいたから、と。
でも、私は覚えていない。
シンは、私をよく観察しているように思える。
浅井さんと居酒屋を出た後、助けに入ったのは、本当に偶然?
ずっと、前山先輩の指示で…前山先輩の都合で、動いていたんじゃ…?
まるで私の見張りのように…
これじゃまるで、私の父にされてた事と一緒じゃない…!
でも──…
それなら…何故、私を抱いたの?
それも、作戦のうち?
どうしてあんなに…
頬に手を当て、そっと唇を撫でる。
また胸が、ギュッと熱くなって、目に涙が浮かんだ。
あぁ……ダメだ。
「結奈!遅くなってごめん!」
「あ…浅井さん…!」
勢いよく開いた扉に、ハッと振り返る。
頬を伝う涙を慌てて拭うも、浅井さんは気付いたのか真剣な表情で私を抱き締めた。
「ごめん…待たせて、不安にさせたよね?」
違う……違うの……!
ちゃんと、言わなきゃいけない…!
「浅井さ…っ!」
唇にキスが降りてくる。
熱いキス。
そう思った。
浅井さんは私の言葉をよく遮る。
まるで私の気持ちを知っていて、耳を塞ぐかのようだ。
それでもこうして私を求めてくれるのは、何故なのだろう?
私はまだ、ちゃんと、浅井さんを知ろうとしていない。
もし、浅井さんと普通にお付き合い出来たら。
私は、誰かの裏の顔を探るような不安を持たずにいられるのではないだろうか。
身体の関係にこだわる事なく。
好きなところを見つけていく方が、ずっと…裏切りの行為すら後ろめたく無くなっていくのではないのだろうか?
お父様を裏切って勘当されることなく、ちゃんと恋人として紹介して…
無難な結婚と妊娠をすることができるのではないだろうか?
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