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52.優しい女の子
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グループ学習が始まり、各々が調べた情報を照らし合わせている間も、どこか上の空になってしまった。
シン、大丈夫かな…?
ふと、朝の彼が頭に浮かぶ。
あまりちゃんと、見てあげなかった気がする。
彼が何を言う前に、私が出て行ってしまったからだ。
私の風邪を移してしまったのだとしたら…いや、それ以外あり得ない。
ずっと一緒にいたのは、私なのだから。
それとも、何か私が怒らせてしまったのだろうか?
でも先輩は、シンは滅多に休まないと言っていた。
怒らせた程度で講義をサボるような人では無さそうだ。
だとしたらやはり……。
「……西條さん?」
ハッとして顔を上げると、女の子が首を傾げていた。
茶髪ショートで、見覚えのある…確か昨日も声をかけてくれた……
「…相田 美月さん?」
「あ!覚えてくれてたのね!」
「いえ、すみません私ボーッとしてしまって…!
また、何かありましたか?」
「特に何も無いけど…」
グッと顔を覗かれて、ドキッとした。
女の子とこんなに目を合わせるなんて、今まであっただろうか?
「うん、昨日より顔色良いね!
良かった」
「え…」
そういえば、昨日も体調を気にかけてくれてたっけ…
グループ演習が無ければ、名前を知る事もなかったくらいなのに…どうして…
「私、昨日はどんな顔してましたか?」
「んー、昨日は少し顔が赤かったね!
だから熱でもあるのかなって」
「そうでしたか…昨日、計ったら熱が出ていたんです。
でもそれって誰にでも分かるものですか?」
「やっぱそうだったのね!
熱は…どーだろ?
あたしは割と西條さんと同じ講義受けてて顔合わせてるからなんとなくそうかな?って思ったけど…」
「そうなんですか…!
気づかず、すみません」
慌てて頭を下げると、彼女もまた驚いて手をパタパタと動かした。
「あ!ううん気にしないで!?
とにかく、ほぼ毎日顔合わせてたから気付いたってだけで、顔見てなかったら分からなかったと思うよ?
ホント、それだけだから!」
ニコッと笑みを浮かべる彼女に、胸が温かくなるのを感じた。
女の子と話すのなんて、久々……
とても感じのいい人だ。
「タメなわけだし、同じグループだし!
これからもよろしくね!
てことでまた明日ー!!」
これからサークルだから!と明るく手を振って講義室を出て行く彼女に手を振った。
サークルがあるのに、体調を確認する為だけに声をかけてくれたんだ。
『あんた、熱が出てるんだよ』
彼女の背中が見えなくなるのと同時に、昨夜の彼の言葉が脳裏を過ぎる。
彼は、私の体調にどうして気付いたのだろう?
いつから、気付いていたのだろう?
私は同じ講義を受けてても、彼の存在を知らなかった。
彼は、私のことをもっと前から知っていた?
そんな話、聞いてない。
胸がグッと熱くなって、思わず拳で抑えようとした。
それでも心臓の音は強くなるばかりで、胸の熱さも止まることはなかった。
シン、大丈夫かな…?
ふと、朝の彼が頭に浮かぶ。
あまりちゃんと、見てあげなかった気がする。
彼が何を言う前に、私が出て行ってしまったからだ。
私の風邪を移してしまったのだとしたら…いや、それ以外あり得ない。
ずっと一緒にいたのは、私なのだから。
それとも、何か私が怒らせてしまったのだろうか?
でも先輩は、シンは滅多に休まないと言っていた。
怒らせた程度で講義をサボるような人では無さそうだ。
だとしたらやはり……。
「……西條さん?」
ハッとして顔を上げると、女の子が首を傾げていた。
茶髪ショートで、見覚えのある…確か昨日も声をかけてくれた……
「…相田 美月さん?」
「あ!覚えてくれてたのね!」
「いえ、すみません私ボーッとしてしまって…!
また、何かありましたか?」
「特に何も無いけど…」
グッと顔を覗かれて、ドキッとした。
女の子とこんなに目を合わせるなんて、今まであっただろうか?
「うん、昨日より顔色良いね!
良かった」
「え…」
そういえば、昨日も体調を気にかけてくれてたっけ…
グループ演習が無ければ、名前を知る事もなかったくらいなのに…どうして…
「私、昨日はどんな顔してましたか?」
「んー、昨日は少し顔が赤かったね!
だから熱でもあるのかなって」
「そうでしたか…昨日、計ったら熱が出ていたんです。
でもそれって誰にでも分かるものですか?」
「やっぱそうだったのね!
熱は…どーだろ?
あたしは割と西條さんと同じ講義受けてて顔合わせてるからなんとなくそうかな?って思ったけど…」
「そうなんですか…!
気づかず、すみません」
慌てて頭を下げると、彼女もまた驚いて手をパタパタと動かした。
「あ!ううん気にしないで!?
とにかく、ほぼ毎日顔合わせてたから気付いたってだけで、顔見てなかったら分からなかったと思うよ?
ホント、それだけだから!」
ニコッと笑みを浮かべる彼女に、胸が温かくなるのを感じた。
女の子と話すのなんて、久々……
とても感じのいい人だ。
「タメなわけだし、同じグループだし!
これからもよろしくね!
てことでまた明日ー!!」
これからサークルだから!と明るく手を振って講義室を出て行く彼女に手を振った。
サークルがあるのに、体調を確認する為だけに声をかけてくれたんだ。
『あんた、熱が出てるんだよ』
彼女の背中が見えなくなるのと同時に、昨夜の彼の言葉が脳裏を過ぎる。
彼は、私の体調にどうして気付いたのだろう?
いつから、気付いていたのだろう?
私は同じ講義を受けてても、彼の存在を知らなかった。
彼は、私のことをもっと前から知っていた?
そんな話、聞いてない。
胸がグッと熱くなって、思わず拳で抑えようとした。
それでも心臓の音は強くなるばかりで、胸の熱さも止まることはなかった。
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