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51.もしかして、私のせいで?
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付き合ってる人……
そう言われて、ドキッとする。
その事で悩んでいるというのに、前山先輩までそこにカウントするわけにはいかない。
そして何となく、その事がバレてはいけない気がする。
シンは食堂、私を抱き締める先輩を止めなかった。
その場にいたのに、ただ見ていた。
きっと、シンさんは私との関係を、内緒にしているのだろう。
いつも一緒にいるらしい、この人にですら。
「いえ…!
ですが、私はお付き合いは考えておりませんので…!
今回のお話は……」
「そう言われても、まぁ、もうみんなの前で公表しちゃったわけだから、俺が乗り換えるまで無理なんだけどね」
「は……?」
いそいそと荷物を片付けていると、彼は重心を置いていた私の手に手を重ね、優しく握った。
振り向くと、肩越しに笑みを浮かべる彼がいて、ドキッとする。
「形だけとは言っても、俺と付き合うのは、損ではないと思うよ。
本命がいるなら、違うけど」
「っ……」
つい、頭を過ってしまう。
あの黒い瞳に、私は…
それを悟られないように、揺るがないように、静かに答えた。
「私に選択肢は無いということでしょう?」
「簡単に言えばそうだね。
頭に入れとくだけでいいよ」
キュッと手を握られて、ドキッとする。
浅井さんのように身体の関係を求められてる訳じゃない。
何か特別酷く要求されてる訳じゃない。
でも、隙を縫うようにジワジワと追い込まれるような感覚に襲われるのは何故?
人前で接してこないシンとも、2人きりの時のシンとも、まるで違う距離感…
「…分かりました…」
目を背けながら答えると、彼は居酒屋で見せた明るい笑みを向けて、大きく伸びをしながら席を離れた。
「物分かりがよろしい!
さーて、やる事なくて暇だし、かといってシンはいないし、そろそろ次の教室に移動しようかな~」
「え?」
思わず声が漏れて、ハッとした。
彼はソロッと振り返って、首を傾げた。
「ん?何?」
「あ、いえ…てっきり食堂に行くのかと…」
「ああ。1人だからすぐ食べ終わってさ。
今日シンが休みなんだよ。風邪とか言ってた。
昨日俺と一緒にいた奴。覚えてる?」
「あ……ええ…ちょっとは……」
あいつ滅多に風邪ひかないんだけどな、と呟く先輩を横目に、私はそれどころではなかった。
シンが、風邪……?
でも、昨日は…私が……
「もしかして、知り合いだった?」
「いえ、あの…」
ドクンドクンと心臓が脈を打って、言葉が続かない。
なんで…シンが風邪を引いたの…?
もしかして、私のせい…?
ちゃんと…ちゃんと言葉を返さなきゃ…!
「あ、そういえば同じ学年か。
同じ講義受講してるもんね?」
「そ、そうです!
顔は…あまり覚えてないですけど…」
「そうなんだ。
なんか、いいなぁ~西條さんと同じ講義室か。
妬けちゃうね」
「そうですかね?」
顔が引きつる。
うまく笑えていない気がする。
「あとでシンに聞いてみよ~。
あと、西條さん、浮気はダメだよ?」
「し、してませんから!」
つい売り言葉に買い言葉で反応し、声を張ってしまった為に注目を集めてしまい、恥ずかしさに顔を伏せたが、彼はフッと笑みを浮かべたまま、手を振って図書室を出て行った。
浮気……
思わず、脱力する。
いったい私は、どれだけ裏切りを重ねるのだろう?
そう言われて、ドキッとする。
その事で悩んでいるというのに、前山先輩までそこにカウントするわけにはいかない。
そして何となく、その事がバレてはいけない気がする。
シンは食堂、私を抱き締める先輩を止めなかった。
その場にいたのに、ただ見ていた。
きっと、シンさんは私との関係を、内緒にしているのだろう。
いつも一緒にいるらしい、この人にですら。
「いえ…!
ですが、私はお付き合いは考えておりませんので…!
今回のお話は……」
「そう言われても、まぁ、もうみんなの前で公表しちゃったわけだから、俺が乗り換えるまで無理なんだけどね」
「は……?」
いそいそと荷物を片付けていると、彼は重心を置いていた私の手に手を重ね、優しく握った。
振り向くと、肩越しに笑みを浮かべる彼がいて、ドキッとする。
「形だけとは言っても、俺と付き合うのは、損ではないと思うよ。
本命がいるなら、違うけど」
「っ……」
つい、頭を過ってしまう。
あの黒い瞳に、私は…
それを悟られないように、揺るがないように、静かに答えた。
「私に選択肢は無いということでしょう?」
「簡単に言えばそうだね。
頭に入れとくだけでいいよ」
キュッと手を握られて、ドキッとする。
浅井さんのように身体の関係を求められてる訳じゃない。
何か特別酷く要求されてる訳じゃない。
でも、隙を縫うようにジワジワと追い込まれるような感覚に襲われるのは何故?
人前で接してこないシンとも、2人きりの時のシンとも、まるで違う距離感…
「…分かりました…」
目を背けながら答えると、彼は居酒屋で見せた明るい笑みを向けて、大きく伸びをしながら席を離れた。
「物分かりがよろしい!
さーて、やる事なくて暇だし、かといってシンはいないし、そろそろ次の教室に移動しようかな~」
「え?」
思わず声が漏れて、ハッとした。
彼はソロッと振り返って、首を傾げた。
「ん?何?」
「あ、いえ…てっきり食堂に行くのかと…」
「ああ。1人だからすぐ食べ終わってさ。
今日シンが休みなんだよ。風邪とか言ってた。
昨日俺と一緒にいた奴。覚えてる?」
「あ……ええ…ちょっとは……」
あいつ滅多に風邪ひかないんだけどな、と呟く先輩を横目に、私はそれどころではなかった。
シンが、風邪……?
でも、昨日は…私が……
「もしかして、知り合いだった?」
「いえ、あの…」
ドクンドクンと心臓が脈を打って、言葉が続かない。
なんで…シンが風邪を引いたの…?
もしかして、私のせい…?
ちゃんと…ちゃんと言葉を返さなきゃ…!
「あ、そういえば同じ学年か。
同じ講義受講してるもんね?」
「そ、そうです!
顔は…あまり覚えてないですけど…」
「そうなんだ。
なんか、いいなぁ~西條さんと同じ講義室か。
妬けちゃうね」
「そうですかね?」
顔が引きつる。
うまく笑えていない気がする。
「あとでシンに聞いてみよ~。
あと、西條さん、浮気はダメだよ?」
「し、してませんから!」
つい売り言葉に買い言葉で反応し、声を張ってしまった為に注目を集めてしまい、恥ずかしさに顔を伏せたが、彼はフッと笑みを浮かべたまま、手を振って図書室を出て行った。
浮気……
思わず、脱力する。
いったい私は、どれだけ裏切りを重ねるのだろう?
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