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50.お試しのお付き合い…?
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「跡が丸見えで…いいね」
私が振り返るよりも先に、彼の指先が私の首を撫でた。
ハッとして彼の撫でる首筋に手を置いたが、疑念が沸く。
「跡……?」
「キスマーク。
この前付けたでしょ?」
ニコッと笑う彼だが、こちらは気が気ではない。
キスマークというものは口紅でつくインクのようなものではないのか?
よくイラストなどで表記されているのを目にするけど、あれは違う?
それともあの強く吸われた時に肌に刻まれたもの?
だとしたら傷?
特に痛みは無いけど…
この位置じゃ、自分からは見えないし…!
「もしかして…知らない?
キスマークって、何か…」
「し…知らないです…っ!」
先輩との距離がグッと縮まって、ドキッと心臓が脈を打つ。
綺麗な焦げ茶色の瞳が、綺麗な顔立ちとは裏腹に好奇心旺盛な子供のように私の表情を観察していた。
「へぇ…教えてあげようか?」
「いえ…大丈夫です」
「ふーん…そう…」
意味深に探りを入れる瞳に胸がドクドクと音を上げる。
椅子に座っている今の状況では逃げ場がない。
そんな事を考えてしまっている自分に内心ハッとする。
最初に出会った時と印象が違う。
そう感じるのは、あの公衆の面前での事があったからだろうか?
それとも、また別の何か……
「そんなに警戒しなくても、何もしないよ」
「え?」
スッと彼は距離をあけて、本棚に寄り掛かった。
「気に障ったなら謝るよ。
君に嫌われたくないからね」
「では…どうしてあんなこと…」
「食堂で行動を起こせば、みんなが意識を変えるだろ?
俺たちが付き合ってるって認識に変えると、俺にも都合がいいんだ」
何よそれ……
そう思いつつも、なんとか抑える。
「その理由は?」
「飲みの時みたいに、俺は女によく纏わり付かれるんだよね。
それじゃ君とゆっくり話が出来ない。
でも俺たちが付き合ってるなら問題無いだろ?」
どこかで聞いたような話な気がして、ふとシンの彼女になる時シンが言った理由を思い出した。
似ている…けど、確かに前山先輩はモテていて、納得ができる気がする。
むしろ、シンに女の人が近付いてるところを、まだ見ていない。
というより、一言も他人と話さないようにしていたり、目を合わせないようにしていたり…あの動作を見てなお近く女の人はいるのだろうか?
私ですら、近寄りがたいと感じたのに…。
「…悪い虫がつかないように、って言ってたのは…」
「君につく男を払う意味でもあるよ。
結構君、みんなに見られてるんだよ?
前々から俺も、君が気になってた。
付き合うっていうのは言葉通り、君と話して、相性が良いかどうかを知りたいと思ったから。
もしその後別れたとしても、それは合わなかっただけで、自然なことだろ?」
「つまり、恋愛感情抜きのお付き合いということですか?」
「いや?
本当に恋愛感情を抱いているのかどうかという確認の…お試しの付き合い、かな」
彼はクスッと笑った。
「どう?
それともホントは、付き合ってる人いた?」
私が振り返るよりも先に、彼の指先が私の首を撫でた。
ハッとして彼の撫でる首筋に手を置いたが、疑念が沸く。
「跡……?」
「キスマーク。
この前付けたでしょ?」
ニコッと笑う彼だが、こちらは気が気ではない。
キスマークというものは口紅でつくインクのようなものではないのか?
よくイラストなどで表記されているのを目にするけど、あれは違う?
それともあの強く吸われた時に肌に刻まれたもの?
だとしたら傷?
特に痛みは無いけど…
この位置じゃ、自分からは見えないし…!
「もしかして…知らない?
キスマークって、何か…」
「し…知らないです…っ!」
先輩との距離がグッと縮まって、ドキッと心臓が脈を打つ。
綺麗な焦げ茶色の瞳が、綺麗な顔立ちとは裏腹に好奇心旺盛な子供のように私の表情を観察していた。
「へぇ…教えてあげようか?」
「いえ…大丈夫です」
「ふーん…そう…」
意味深に探りを入れる瞳に胸がドクドクと音を上げる。
椅子に座っている今の状況では逃げ場がない。
そんな事を考えてしまっている自分に内心ハッとする。
最初に出会った時と印象が違う。
そう感じるのは、あの公衆の面前での事があったからだろうか?
それとも、また別の何か……
「そんなに警戒しなくても、何もしないよ」
「え?」
スッと彼は距離をあけて、本棚に寄り掛かった。
「気に障ったなら謝るよ。
君に嫌われたくないからね」
「では…どうしてあんなこと…」
「食堂で行動を起こせば、みんなが意識を変えるだろ?
俺たちが付き合ってるって認識に変えると、俺にも都合がいいんだ」
何よそれ……
そう思いつつも、なんとか抑える。
「その理由は?」
「飲みの時みたいに、俺は女によく纏わり付かれるんだよね。
それじゃ君とゆっくり話が出来ない。
でも俺たちが付き合ってるなら問題無いだろ?」
どこかで聞いたような話な気がして、ふとシンの彼女になる時シンが言った理由を思い出した。
似ている…けど、確かに前山先輩はモテていて、納得ができる気がする。
むしろ、シンに女の人が近付いてるところを、まだ見ていない。
というより、一言も他人と話さないようにしていたり、目を合わせないようにしていたり…あの動作を見てなお近く女の人はいるのだろうか?
私ですら、近寄りがたいと感じたのに…。
「…悪い虫がつかないように、って言ってたのは…」
「君につく男を払う意味でもあるよ。
結構君、みんなに見られてるんだよ?
前々から俺も、君が気になってた。
付き合うっていうのは言葉通り、君と話して、相性が良いかどうかを知りたいと思ったから。
もしその後別れたとしても、それは合わなかっただけで、自然なことだろ?」
「つまり、恋愛感情抜きのお付き合いということですか?」
「いや?
本当に恋愛感情を抱いているのかどうかという確認の…お試しの付き合い、かな」
彼はクスッと笑った。
「どう?
それともホントは、付き合ってる人いた?」
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