お見合い結婚が嫌なので子作り始めました。

天野 奏

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44.私達の関係

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「……シン……」

  彼の服を少し引き寄せ、視線を合わせようと顔を離すと、彼はそれを汲み取り私を見た。

「何?」

  さっきと変わらないようで、どこか少し優しい声と、穏やかな瞳に、ドキッとする。
  また少し前に出て、キュッと彼の服を握った。

「…キスしても、いいですか?」

「……いいよ」

  彼はほんのりと目を見開いたが、早くに返事をくれた。
  意を決して、自分から近づき、瞼を閉じる。

  彼の唇が、私のと重なった。
  
  長いようで短い、静かな時間が過ぎ、少し顔を離すと、彼もまた同じく瞼を開けるところで、黒真珠のような瞳が私を見つめ返した。

  その漆黒の瞳に揺らぎながらも、私はまた瞼を下ろす。

  このままじゃダメ。
  もっと……

  彼がそうするように、少しだけ唇を噛むようにゆっくりとキスをする。

  チュッ……チュッ……

  唇がほんの少しでも離れるたびにリップ音が自然と耳に入る。
  何度か角度を変えて、大人のキスをしてみる。

  もっと……

  握りしめていた手のひらをようやく彼の胸元に伸ばし、そっと開いてなぞるように背中へ回した。

  彼の大きな肩甲骨をゆっくり引き寄せると、それまでキスを返していた彼は大きく息を吸い姿勢を変え、キスをしたまま私の背中に回していた片腕で私をグッと引き寄せた。

  その動きに思わずビクッと反応してしまったが、そのままキスが続いたことで、少しホッとした。

  彼は、私の意図を汲み取ってくれている。

「ん……」

  チュッ…チュ……

  唇を撫でるような、噛み付くような、そんなキス。
  腕枕となっていた彼の右腕が、私の後頭部をしっかりと抱いた。
  髪の毛一本一本が、彼の指先に神経を集中させて、敏感に感じ取っているのがわかる。

  薄く目を開くと、彼もまた私を見つめていて、その綺麗な瞳にドキッと胸が高鳴る。

「は……」
「……いいんだな?」

  顔を離し、身体を起こした彼は、私を見下ろしたまま一言、そう告げた。

  彼なら、分かってくれると思った。

「……今日は私、たくさん尽くしていただきました。
それに、シンは、私のだから…
シンが求めることで、お返しをしたいです。
私の身体…好きに使ってください」

  シンが前に言ったように、男の人が求める事が、身体の関係なら。
  私は職務を全うして、彼に返さなきゃいけない。

  浅井さんにしたように。
  浅井さんが私に求めたように。

  シンの、として。

「…分かった」

  しばらくの間ののち、彼は静かに答えた。

  また彼のキスが降りてくる。

  これでいい。
  気づかれないように唇を結び、目を瞑る。

  私達の付き合いは、だもの。
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