お見合い結婚が嫌なので子作り始めました。

天野 奏

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39.おあいこ

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  シンさんの家は、学校からそんなに離れていなかった。

  電車でも通える範囲らしいが、満員電車の中でびしょ濡れのままは危ないし目立つということで、彼の背後に隠れながら家まで歩く事にした。

  正直、意外だった。
  彼は私のことを、怒っているのかと思っていた。

  でも、後ろ手に手を繋ぎ、私が離れないように、自宅まで先導してくれる。

  もしかしたら、誰かに見られてしまうかもしれないのに。
 
  変な条件をつけて、日中は目を合わせない彼が。

  私に背中を預けている事に、少し、胸が熱くなった。


「ホテルほど綺麗じゃないけど、どうぞ」
「お邪魔します…」

  玄関入ってすぐがキッチンとトイレとお風呂のある廊下。
  案内されるまま奥の部屋に入ると、小さなリビングがあった。

  黒と白に統一された、シンプルな部屋。

  物が少なくて、ぱっと見はベッドとテーブルがあるのみだった。

  大きな窓がベッドの横にあるのが印象的だ。

  男の子の部屋というのは、みんなこんな感じなのだろうか?
  ただどことなく、彼らしいと思ってしまった。

「あんたの家に比べたらだいぶ狭いだろうけど」
「いえ、そんなことは…っ!?」

  急に抱き上げられたと思えば、彼は私をベッドに下ろした。

「なん…っ!」
「男の部屋にノコノコついてくるって、こういうことだから」

  覆い被さる彼は、無表情に私を見下ろす。

「あんたは、勘違いしてる」
「な、何を…?」
「俺があんたを助けてくれるだと」
「っ……!」
  
  彼は上着を一気に脱ぎ払い、その整った顔と筋肉美を露わにした。
  その上で私の服にも手をかけた。

「いやっ…!」
「嫌なら抵抗しろ。死に物狂いで」

  簡単にブラウスとインナーを剥ぎ取られて、ブラだけになった上半身を両手で隠す。

「…それで隠したつもり?」
「っ…!」

  覆い被さる彼に両手とも布団へ押さえつけられる。

「まず、上に乗られた時点であんたの負けなんだよ。
体格差考えれば分かるだろ?」
「やっ…っ!」
「この部屋は防音効いてるから、大声あげても無駄」

  チュッと、鎖骨にキスが降りてくる。
  身体を逃がそうにも、手首も、腰から下も押さえつけられているからビクともしない。

  どうしたらいいの…!?

「こういう時に女が出来る抵抗は1つ」
「ん……っ!」

  唇にキスされる。
  口調の割にキスは優しく、目を閉じていた。

「…相手を萎えさせればいい。
急所を痛め付ける。
性器に噛み付いたり、舌を噛んだり。
絶対的な痛みを与えればその間逃げられるかもしれない。
100パーセントではないしにろ、だ」
「は…んっ!」

  またキスが降りてくる。
  今度は唇を割るように、舌が入ってくる。

「ほら…やってみろよ」
「っ…!」

  一度離れた隙間から、彼は問いかけ、更に密着するように、キスをされる。
  舌が口内に触れる。

  これを、咬めというの…?

「このまま犯されてもいいのか?」
「はぁん…っ!」

  ブラのホックが外された。
  彼の言わんとしてることが分かってきた。

  ガプ…

  もう一度キスを落とす彼の舌を、歯で挟む。

「弱すぎ。やるなら血が出るくらい強くだ」

  わざわざ顔を離す彼は、少しだけ吐息を落とした。
  そうして優しく、キスをする。

「…もう一回…」

  その声音が、吐息が、熱くて。
  心が…持っていかれそうになる。

  ガンッ……!

  今度こそ、思いっきり噛み付いた。

  彼の閉じた瞼が、初めて見るような渋いシワを作った。
  口の中に、血の味が広がる。
  彼の舌は痛みに震え、すぐに戻っていく。

 「はっ…はっ…」
 「……それでいい」

  彼は口の端に血を見せつつも、何故か嬉しそうに離れた。

「これで、おあいこ、な」
「ん……」

  そう言って、また軽くキスをする。

  やっぱり私には意味が分からなくて、顔をしかめた。

  彼が何故悪役を演じるのか、私には分からない。

  そういえば、部分的彼女の条件は、いつの段階で発動するのだろう?

  今更そんなことが、頭をよぎった。
  
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