お見合い結婚が嫌なので子作り始めました。

天野 奏

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37.泣いたって意味無いのに

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  私は本当に何も分かってない。  
  これで最後、なんて自分の心の中で言った所で、なんの意味にもなってないじゃないか。

  ヤッて終わり、というのも、勝手に自分で決めただけで。

  何をしてしまっているんだろう私は。

  何が正しい事なのか、分からなくなってきた。

  服をある程度直し、ドア横の壁にもたれたまま、溢れた涙を拭う。

  おかしい。
  人に触れた後の筈なのに。 
  浅井さんはあんなにも清々しく帰って行ったはずなのに。

  私は今凄く寂しい。
  凄く、悲しい。

「うぅ…ひっく……ひっく……っ」

  涙が止まらなくて、過呼吸になりそうで、両手で顔を覆った。

  私が泣くのはおかしいはずなのに。
 
  求めていた行為をしてくれそうな候補者が3人出来た。
  それが本来なら嬉しいはずだ。
  喜んでいいはずまだ。
 
  最低なことをするんだから、最低な浮気をしても、最低としては間違いじゃないでしょう?

  それなのに、何故…涙が止まらないの?

  口の中が気持ち悪くて、早く洗い流したいのに。
  泣いてたら、動けないじゃない……

「……酷い泣き声。
廊下にまで響いてる」
「っ……!」

  紅がまた傾き、廊下の電気がついたらしい。

  背後に明るい光を受けたシンさんが、扉を開けて身体を覗かせていた。

「うぅ……シンさん……うぅ……っ」

  しやくり上げる自分の声が、あまりにも途切れ途切れで、うまく話せない。

  また泣いてるのを見られてしまった。

  せっかく顔を隠していたのに、声も聞こえていたなんて。

  でも、来てくれた。
  話しかけてくれた。

  昼間はあんなに目を合わせなかったのに。

  今は、昨日と同じ黒真珠のような瞳が、私を見下ろしている。

  それがたまらなく、嬉しいなんて。

「…浅井と、付き合ったんでしょ?」
「っ……!」

  キュッと、胸が痛んだ。

「昨日のアレ、冗談じゃなくなったな。
ハルにあれだけ煽られたら、浅井が本気になるのは分かってたけど」

  彼は扉を閉めると、ドアに背を持たれながらストンと腰を下ろした。

「どこまでっ…見てたんですか…?」

  思わず、考えるより先に声が出てしまった。

「あんたがフェラさせられてんのは見たかな。
動画撮られてるのも。
  会話を聞いたのは、彼女かどうかしつこく確認してる辺りか」

  それって、最初から……。

「うっ……」

  急に嗚咽が走る。
  ここで起きたことを最初から思い出したら、嫌悪感しか感じなかった。

  自分の曖昧な対応への、だ。

  彼は特に目を合わせるわけではなく、真っ直ぐ前を向いているだけだった。

「結局子作りには至らなかったのは正直驚いた。
浅井がで今日は満足したってことだろうけど」
 
「……私、何をするのが正しいですか?」

  涙が溢れては止まらない。

「…あんたが子作りを求めてたなら、フェラ中にでも誘えば良かったんじゃねーの?
ヤりたいって言われればすぐにでもあいつは…」

「そういう話しじゃないんです…!
怒らないんですか…?
あなたの部分的彼女って話になったのに…!
私は彼を拒めませんでした。
結果的に、二人の彼女になってしまって…前山先輩も…っ」

「あんたが望んでる事なら、それで良いんじゃないか?」

  彼は静かに答えた。

「あんたが浅井を選んだ。
望めば、声を出せば、拒めただろ?
それをしなかった。
あんたが流されやすい性格なのも、分かってる。
だから俺との条件も、簡単に飲んだ。
俺も浅井も、あんたのそういうところに漬け込んだ。
あんたもそれに同意を示した。
自分のことだろ?自分で決めろ」

  淡々と話す彼の言うことは正しかった。
  正論だ。

  涙が引っ込んだ。

  刺さる言葉だ。
  でも、正しくて、私を冷静に見てくれてる人の言葉だ。

  私が唯一自分で決めたのは、誰かと子作りをして子供を産むという事。
  それ以外は、ちゃんと決められてなかった。
  その過程も、何も。
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