お見合い結婚が嫌なので子作り始めました。

天野 奏

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33.裏切ってしまったのです

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「浅井さん…あの…っ」

  言葉を選んでるうちに、強く抱き締められる。

「今日、食堂での話聞いて、前山先輩に目をつけられたんだって分かった。
あの人の手口なんだ。
人前で狙った人との関係を見せつけるの…」

  前山先輩の、手口…?

「ホントは今日ずっと話したかった。
昨日のは嘘じゃないって、ハッキリ知りたかった。
結奈ちゃんが澤田に連れてかれて…不安だった」

「っ……!」

  不安…と言われて、喉が詰まりそうだった。
  その不安は的中して、私とシンさんは…

  この人を、裏切ってしまった。

  浅井さんは顔を離し、悲しげな表情で私を見下ろした。

「澤田と前山先輩は繋がってるから…
もう、前山先輩に取られてるのかと思って、凄く不安だった」

  シンさんと、前山先輩が…?
  確かに、食堂でも一緒にいたけど……
  何故、シンさんが連れてく事が、前山先輩に繋がるの…?

「結奈ちゃん…結奈ちゃんはあの時、俺と付き合ったよね。
俺の彼女で、合ってるよね?」
「っ……」

  お酒の勢い、酔ってたから…そんな話では無いだろう。
  彼は本気で私に告白して、私を彼女だと、あの出来事は夢ではないと確認しているのだ。

  私はなんと愚かなのだろう。

  この人のキスが凄く怖い。
  それ以上にきっと、この人は私が裏切っている事が怖くて堪らないのだ。

  私を掴む彼の手は、震えている。

  この人を苦しめているのは、私なのだ。

  どうしたらいい?

  私はこの人と付き合ったにも関わらず、シンさんと寝てしまった。
  たった1日とはいえ、それは罪深い事だろう。

  それを償うのには、どうしたらいい?

  彼は、何を望むの…?

  
  ただ見つめ合う時間がもどかしいのか、彼はまた顔を近づけた。

「…何かあったとしても、いいよ。
許すから…嫌じゃなければ、ここで、昨日の続き、しよ?」
「っ……ん……!」

  さっきよりも優しく、キスが降りてくる。
  厚い唇が、私を包む。

「嫌なら、拒否っていいから。
でも、俺の彼女なら、いいよね?」
「あ……」

  首筋に、キスが落ちてくる。
  酔っていた時とは違い、強引さはない…が。

  言葉が、私を縛る。

  拒否する事は、昨日何かあったことを肯定する。
  私とシンさんが、どうしたかを説明しなくちゃいけなくなる。
  部分的彼女、となった今の状態では、普段口を聞かないようにしているシンさんに迷惑がかかるのではないか…?

  前山先輩の件といい、それを黙認してるシンさんの考えは読めないけど。

  それでも、隠したい関係なのかもしれない。
  
  あの恋愛本に書かれていた、やってはいけないベスト3に入っていたことを、私は無意識に行ってしまったのか。

“浮気は絶対ダメ”

「っ…あ……」

  スカートにインしていたブラウスとインナーを捲り上げられる。
  隙間から彼の両手が、私のブラの上から胸に触れた。

「大きくて、柔らかい…」
「っ……」

  正面に彼の顔があって、目を逸らした。
  それでも彼の唇が、影を落とすように私のそれを塞いだ。

  私が、彼の願望を叶えてあげれば、罪は軽くなるのだろうか?

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