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29.あれ?シンさんのはずなのに…
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朝から出る予定だった講義にまんまと遅れた私は、なんとか間に合った次の講義の教室へと入り、壁際に腰かけた。
同じ目的地とはいえ、シンさんとは、ホテルから別行動だ。
シンさんは一度家に帰るらしく、私もまだ昨日と同じ服装というのは気が引けたので、開店直後の服屋に直行したのだ。
クレジット払いで済ませたけど、もし妊娠した場合自分の所持金が全くない状態というのは厳しいよね…
そう思いつつも、気持ちが上ずってフワフワしている気がする。
白を基調とした昨日の服装から一転し、今日は花柄のスカートと長袖が膨らんだ黒いブラウスを着ている。
あまりファッションにこだわりは無く、高いブランドなどを選ぶことは少ないのだが、今日は特別だ。
あんなことがあったからというのもあるけど、色んな事が初めてで、つい思い出してしまう。
シンさんはもう、大学に着いたのだろうか?
大学の講義の話をするくらいだから、彼は私が何の講義を受けるのかを知ってたのだろうか?
私の名前をどこで知ったのだろうか?
そもそも彼は何歳なのだろうか?
何年生なのだろうか?
とても大人びて見えた。
前山先輩と一緒にいたし、1つ上の学年でもおかしくない。
私は今、彼の部分的彼女なのだろうか?
でも、彼女って、何をするのだろうか?
利害の一致とはいえ、ちゃんと役になれるだろうか?
彼はもし私が妊娠出来たら、どうするつもりなのだろうか?
私は、彼と……
「s…ぃじょうさん…?」
「はっ!はいっ!!」
名前を呼ばれていたことに今更気づき、ハッと身体を向けた。
ずっと窓の外を眺めてボーッとしていたらしい。
自分でも驚きだ。
数名が私の座る席の周りに集まって話しかけていたのに、気づかないなんて。
「体調悪い?大丈夫?」
「だ、大丈夫です!
すみません、ボーッとしていました…!
なんでしょう…?」
声をかけてくれた子はホッとしたように胸を撫で下ろし、少しはにかみながら微笑んだ。
「グループ演習、ちょうど近くにいたこのメンバーで組むことになったんだけど、このままここで始めても平気かな?」
「あ…はいっ!大丈夫です!えっと……あっ!」
そんな話も聞きそびれてたなんて…と思いながら面々に目を向けて、思わず声を漏らしてしまった。
昨日とはデザインの違う大きめの黒パーカーのフードをすっぽり被った、あの人の瞳を見つけたから。
「シンさん…!あの…!?」
胸躍らせて声をかけたが、それ以上は喉を詰まらせてしまった。
彼が何も言わずに顔を背け、目を閉じたからだ。
ホワホワした頭の中が、急にハッキリとしてくる。
彼の行動は、よく私が経験してるのだ。
これ以上、話しかけてくるな、という、合図だった。
同じ目的地とはいえ、シンさんとは、ホテルから別行動だ。
シンさんは一度家に帰るらしく、私もまだ昨日と同じ服装というのは気が引けたので、開店直後の服屋に直行したのだ。
クレジット払いで済ませたけど、もし妊娠した場合自分の所持金が全くない状態というのは厳しいよね…
そう思いつつも、気持ちが上ずってフワフワしている気がする。
白を基調とした昨日の服装から一転し、今日は花柄のスカートと長袖が膨らんだ黒いブラウスを着ている。
あまりファッションにこだわりは無く、高いブランドなどを選ぶことは少ないのだが、今日は特別だ。
あんなことがあったからというのもあるけど、色んな事が初めてで、つい思い出してしまう。
シンさんはもう、大学に着いたのだろうか?
大学の講義の話をするくらいだから、彼は私が何の講義を受けるのかを知ってたのだろうか?
私の名前をどこで知ったのだろうか?
そもそも彼は何歳なのだろうか?
何年生なのだろうか?
とても大人びて見えた。
前山先輩と一緒にいたし、1つ上の学年でもおかしくない。
私は今、彼の部分的彼女なのだろうか?
でも、彼女って、何をするのだろうか?
利害の一致とはいえ、ちゃんと役になれるだろうか?
彼はもし私が妊娠出来たら、どうするつもりなのだろうか?
私は、彼と……
「s…ぃじょうさん…?」
「はっ!はいっ!!」
名前を呼ばれていたことに今更気づき、ハッと身体を向けた。
ずっと窓の外を眺めてボーッとしていたらしい。
自分でも驚きだ。
数名が私の座る席の周りに集まって話しかけていたのに、気づかないなんて。
「体調悪い?大丈夫?」
「だ、大丈夫です!
すみません、ボーッとしていました…!
なんでしょう…?」
声をかけてくれた子はホッとしたように胸を撫で下ろし、少しはにかみながら微笑んだ。
「グループ演習、ちょうど近くにいたこのメンバーで組むことになったんだけど、このままここで始めても平気かな?」
「あ…はいっ!大丈夫です!えっと……あっ!」
そんな話も聞きそびれてたなんて…と思いながら面々に目を向けて、思わず声を漏らしてしまった。
昨日とはデザインの違う大きめの黒パーカーのフードをすっぽり被った、あの人の瞳を見つけたから。
「シンさん…!あの…!?」
胸躍らせて声をかけたが、それ以上は喉を詰まらせてしまった。
彼が何も言わずに顔を背け、目を閉じたからだ。
ホワホワした頭の中が、急にハッキリとしてくる。
彼の行動は、よく私が経験してるのだ。
これ以上、話しかけてくるな、という、合図だった。
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