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28.部分的対応の練習、する?
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「え?…えっ???」
一度考えを巡らせたが意味が分からず、小首を傾げた。
シンさんの部分的な彼女のフリ…???
それってどんな感じ?どういう状況???
そう悩んでいると彼は少しめんどくさそうにため息をついて身体を離し、天井を見上げながら頭を掻いた。
「……昔から、女絡みが面倒なんだよ。
かといって誰かと付き合うのはまた面倒。
でもあんたは、女だけど俺を好きじゃない訳ありだから都合がいい」
「え、えっと…」
確かにシンさんはルックスが完璧だし、それだけ女の子達を虜にしてきたのだろうし、私の知らない女のいざこざなんかに巻き込まれて苦労されてきたのかもだし……
その辺は憶測でしかないけれど、でも……
「部分的に、とは?」
「俺が合図をしたらとか」
「例えば…?」
「そうだな…」と彼が目をそらしたものの、すぐにこちらに向き直った。
まるで既に決めていたかのような彼らしくないわざとらしさだった。
「目が合ったらとか、名前呼んだら、とか」
「それだけですか…?」
じゃあ会った時はほとんど…?と思ったところで、彼の手が伸びてきた。
「足りないなら、触れたり、キスしたりした時も含めようか」
頬に彼の大きな手が触れて、少し息を呑んだ。
何を考えてるか分からない、澄ました大きな黒い瞳が朝日の煌めきを受けて光を放っている。
見つめていたら、ほんの少し距離を詰められた事に気付かなかった。
「で、でも…触れるのもキスも、同じなんじゃ…っ」
頬に触れている掌が、そのまま指先を這わせて耳の後ろに流れる。
髪の毛が前に流れていたからだ。
それだけなのに、ビクッと身体が熱く震える。
彼の眼光は、まるで催眠術のようだ。
「そうだな。
練習してみる?」
ごくりとまた息を呑むと、彼はフッと笑みを浮かべた。
「なんてな。
もしそういう場面になったら臨機応変によろしく」
「んぐっ!」
切り揃えてた前髪をわざとらしくグチャグチャに撫で回し、またも澄ました顔にほんの少し口角を上げて笑われた。
私が子供なのだろうか?
というか、子供扱いされてる…?
「わ、分かりました…!
その時は…頑張ります」
「練習したいなら付き合うけど」
「いえ!だいっじょうぶです!!」
また彼が動く音がして布団に顔を隠すも、彼は特に何もせず身体を起こした。
「そ。で、俺は行くけど、あんたはいいの?」
「え?何が…!?」
いつの間にやら充電してたらしい繋がれたままのケータイを見せられて、ハッと気づいた。
9時…半!?
「大学だろ」
大学の講義を…初めてサボってしまった。
私が忘れていることも、どんなリアクションするのかも、分かってたかのようにほんのり上がる彼の口角を見た。
一度考えを巡らせたが意味が分からず、小首を傾げた。
シンさんの部分的な彼女のフリ…???
それってどんな感じ?どういう状況???
そう悩んでいると彼は少しめんどくさそうにため息をついて身体を離し、天井を見上げながら頭を掻いた。
「……昔から、女絡みが面倒なんだよ。
かといって誰かと付き合うのはまた面倒。
でもあんたは、女だけど俺を好きじゃない訳ありだから都合がいい」
「え、えっと…」
確かにシンさんはルックスが完璧だし、それだけ女の子達を虜にしてきたのだろうし、私の知らない女のいざこざなんかに巻き込まれて苦労されてきたのかもだし……
その辺は憶測でしかないけれど、でも……
「部分的に、とは?」
「俺が合図をしたらとか」
「例えば…?」
「そうだな…」と彼が目をそらしたものの、すぐにこちらに向き直った。
まるで既に決めていたかのような彼らしくないわざとらしさだった。
「目が合ったらとか、名前呼んだら、とか」
「それだけですか…?」
じゃあ会った時はほとんど…?と思ったところで、彼の手が伸びてきた。
「足りないなら、触れたり、キスしたりした時も含めようか」
頬に彼の大きな手が触れて、少し息を呑んだ。
何を考えてるか分からない、澄ました大きな黒い瞳が朝日の煌めきを受けて光を放っている。
見つめていたら、ほんの少し距離を詰められた事に気付かなかった。
「で、でも…触れるのもキスも、同じなんじゃ…っ」
頬に触れている掌が、そのまま指先を這わせて耳の後ろに流れる。
髪の毛が前に流れていたからだ。
それだけなのに、ビクッと身体が熱く震える。
彼の眼光は、まるで催眠術のようだ。
「そうだな。
練習してみる?」
ごくりとまた息を呑むと、彼はフッと笑みを浮かべた。
「なんてな。
もしそういう場面になったら臨機応変によろしく」
「んぐっ!」
切り揃えてた前髪をわざとらしくグチャグチャに撫で回し、またも澄ました顔にほんの少し口角を上げて笑われた。
私が子供なのだろうか?
というか、子供扱いされてる…?
「わ、分かりました…!
その時は…頑張ります」
「練習したいなら付き合うけど」
「いえ!だいっじょうぶです!!」
また彼が動く音がして布団に顔を隠すも、彼は特に何もせず身体を起こした。
「そ。で、俺は行くけど、あんたはいいの?」
「え?何が…!?」
いつの間にやら充電してたらしい繋がれたままのケータイを見せられて、ハッと気づいた。
9時…半!?
「大学だろ」
大学の講義を…初めてサボってしまった。
私が忘れていることも、どんなリアクションするのかも、分かってたかのようにほんのり上がる彼の口角を見た。
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