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27.与えられた条件

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「へぇ……見合いが嫌で本気の子作りね…」

  腕を枕にして隣で話を聞く彼に、肩まですっぽり布団に入りつつも、つい「うぅ」と声を漏らしてしまった。

  要約して他人から言われるとなんとも馬鹿らしい話だ。
  反抗期とお父様が使ったのもあながち間違いじゃない。
  でも、それは私にとっては大変重要なことなのだ。

  お見合い婚は…幸せになれないから……。

「でもその話を聞く限り、あんたに彼氏が出来れば解決するんじゃ?」

  相手が出来る気配がないから見合いなんだろ?と付け加える彼に、私は首を振った。

「お父様はもう既に相手がいない事を見抜いています。
もし私が誰かと付き合い始めたとし伝えても、それが仮のものかどうか、雇った相手かどうかなどまで見抜かれてしまうでしょう。
相手が私をどういう目で見てるかもきっと、すぐバレてしまいます。
お父様はよく人を見ているので」

  家に仕える者でも、下心のあると気付かれた人はその日に家を追い出されていた。
  会社に関しても、父の周りには完璧と呼べるような人間しかいない。
  よって重役の入れ替わりもほとんどなく、父に忠誠を誓う者たちだけがついている。 
  その天性の才能が、彼の経営者としての大きな武器であり、いつまでもトップに立ち続けられる理由なのだろうと思う。

「それに、お父様は既にふさわしい相手を選んでいます。
おそらく会社の関係者、重役に近い方かもしれません…」

「で、それが絶対的に嫌だから、妊娠を理由に家出か」

「はい…あの、ごめんなさい…」

「妊娠にこだわる理由は?
  妊娠しなくても嘘をついて家を出ればあまり変わらないだろ?」

「え、あ……!」

  ハッとして、彼を見上げた。
  彼はずっと無表情のまま、変わらず私を見ているが、なんとなく目が細まった気がした。

「図星か」

「あ!いえ、でも…覚悟を決めたら侍が切腹するように、何か自由になる為の覚悟として代償を払って家出しなくては、とか……」

「頭が堅いことがよく分かるな」

「そ、そんなんじゃなくて…!」

「いいよ」

  訂正を求める私に対し、彼はたった一言で遮った。
「えっ」と小さく呟く私に、まだ表情も変えず、2人の間に降りていた私の黒髪を指で手繰り寄せるように弄び、少し距離を詰めたところで、薄い唇から衝撃な言葉を零した。

「俺が協力する。その代わり、部分的に俺の彼女のフリして」
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