15 / 104
14.王子様のキスとは違うけど
しおりを挟む
え……どういう……っ!
「ん……」
考える余裕も無しに、彼がそっと瞼を閉じると、またキスが降りてくる。
荒さはなく、穏やかに、余裕のある──ちゃんとしたキス。
ピリピリと身体が震えて、それを更に鋭敏に感じ取ろうと思い、そっと目を閉じた。
キス、されてる。
初めて経験したキスとは、まるで別物。
ゆっくり触れて、ほんの少し離れて、角度を変えてまた降りて。
触れるだけの、優しいキス。
そう考えてるうちに顔が離れて行って、そっとまた頬を撫でられたと思えば、また確かめるようにキスが降りてくる。
浅井さんのキスが、相手に構わず塗りたくるようなものだとすればこのキスは、きっと相手を労わり、確認を取るようなキス。
「んっ……ふ……んん……」
彼の唇が触れるたび、ピリピリと身体が疼く。
離れる時に聴こえるリップ音が、とてもいやらしいのに、嫌な気持ちになるどころか、胸がキュッと熱くなる。
これに似た音が、さっきまでは凄く嫌なものだったのに。
早めていた鼓動が、穏やかに、しかし力強くなる。
彼は私の肩甲骨を抱くように腕を通し、後頭部をそっと撫でた。
彼の大きな手のひらが、私の頭を支えてくれている…
私の長い黒髪にそっと指が通って──それがまた、ビリビリと神経を撫でていく。
唇を優しく啄まれ、漏れる吐息はお互いの熱で程よく溶け合い、不思議と心地よく感じてしまう。
「はぁ……」
自分とは思えない吐息が聞こえた。
驚いて目を開くと、彼もまた薄く瞼を上げて、覗いた瞳は私を見つめ、目を合わせたままキスを始めた。
「んっ…ふっ…」
チュ……クチュ……チュッ……
静かな空間に響くリップ音が心地よくて、触れる唇が徐々に熱を帯びているのが分かった。
睨めっこのように見つめ合うべきかと思えば、彼は静かに目を閉じて、またキスを繰り出す。
「はっ…あ……」
噛み付くように唇を覆っては優しく離れ、何度も角度を変えて放たれるキス。
そろそろ酸素が無くなって、息を吸いたいとばかりに彼の腕に手を乗せると、その手は彼の手のひらにガッシリと握られ、ベッドに押し倒されてしまった。
抵抗は許さないというジェスチャーなのだろうか?
屈服させられている…そう分かるのに、どうしてか心地よくて。
彼のキスが、気持ちいいと感じてしまう。
「っ…はっ!はぁ……はぁ……っ」
「……いい顔してる」
ゆっくり吐息を漏らし、顔を離した彼は、私の目尻を拭った。
それまで自分が涙を滲ませていることにも、こんなに呼吸を乱していることにも気づかなかった。
暗がりの中、漆黒の瞳で見降ろす彼に、ギュッと心が締め付けられる。
どうしてあなたは、こんなキスをするの?
「ん……」
考える余裕も無しに、彼がそっと瞼を閉じると、またキスが降りてくる。
荒さはなく、穏やかに、余裕のある──ちゃんとしたキス。
ピリピリと身体が震えて、それを更に鋭敏に感じ取ろうと思い、そっと目を閉じた。
キス、されてる。
初めて経験したキスとは、まるで別物。
ゆっくり触れて、ほんの少し離れて、角度を変えてまた降りて。
触れるだけの、優しいキス。
そう考えてるうちに顔が離れて行って、そっとまた頬を撫でられたと思えば、また確かめるようにキスが降りてくる。
浅井さんのキスが、相手に構わず塗りたくるようなものだとすればこのキスは、きっと相手を労わり、確認を取るようなキス。
「んっ……ふ……んん……」
彼の唇が触れるたび、ピリピリと身体が疼く。
離れる時に聴こえるリップ音が、とてもいやらしいのに、嫌な気持ちになるどころか、胸がキュッと熱くなる。
これに似た音が、さっきまでは凄く嫌なものだったのに。
早めていた鼓動が、穏やかに、しかし力強くなる。
彼は私の肩甲骨を抱くように腕を通し、後頭部をそっと撫でた。
彼の大きな手のひらが、私の頭を支えてくれている…
私の長い黒髪にそっと指が通って──それがまた、ビリビリと神経を撫でていく。
唇を優しく啄まれ、漏れる吐息はお互いの熱で程よく溶け合い、不思議と心地よく感じてしまう。
「はぁ……」
自分とは思えない吐息が聞こえた。
驚いて目を開くと、彼もまた薄く瞼を上げて、覗いた瞳は私を見つめ、目を合わせたままキスを始めた。
「んっ…ふっ…」
チュ……クチュ……チュッ……
静かな空間に響くリップ音が心地よくて、触れる唇が徐々に熱を帯びているのが分かった。
睨めっこのように見つめ合うべきかと思えば、彼は静かに目を閉じて、またキスを繰り出す。
「はっ…あ……」
噛み付くように唇を覆っては優しく離れ、何度も角度を変えて放たれるキス。
そろそろ酸素が無くなって、息を吸いたいとばかりに彼の腕に手を乗せると、その手は彼の手のひらにガッシリと握られ、ベッドに押し倒されてしまった。
抵抗は許さないというジェスチャーなのだろうか?
屈服させられている…そう分かるのに、どうしてか心地よくて。
彼のキスが、気持ちいいと感じてしまう。
「っ…はっ!はぁ……はぁ……っ」
「……いい顔してる」
ゆっくり吐息を漏らし、顔を離した彼は、私の目尻を拭った。
それまで自分が涙を滲ませていることにも、こんなに呼吸を乱していることにも気づかなかった。
暗がりの中、漆黒の瞳で見降ろす彼に、ギュッと心が締め付けられる。
どうしてあなたは、こんなキスをするの?
10
お気に入りに追加
534
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる