お見合い結婚が嫌なので子作り始めました。

天野 奏

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12.触れた指先と

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「…あんた、ホントにそれでいいと思ってんの?」

「え……っ?」

  触れていたソレがスルッと離れ、驚いて振り返ると、彼は覆い被さるように上から私を包み込んだ。
  照明の影から見下ろす彼の真っ直ぐな瞳と触れる肌に、緊張で震えていた身体がとうとうグラつき、覗く彼を見つめたまま横に流れてしまった。
  それでも彼は表情を変えない。

「全然濡れてないのに挿れられて、ホントに妊娠すると思ってんの?」

  濡れる…?

  言葉の意味が分からない。

  挿れて射精して、受精したら妊娠するんじゃ…?

  しかし無知だと笑われてしまうのも尺で、かつ彼の無表情で思考が読めず、口調で判断するしかない。
  彼は何やら──恐らくだけど──怒っているようだ。

「やらなきゃ…いけないことでしょう?」

  恐る恐る確認すると、彼は目を細めてフッと鼻で笑った。
  
「ホントに処女なんだな」
「えっ…!」
 
  ば、バレてる…!

  そしてサラッとそんな単語を使われて、カッと顔が熱くなり、揺れる瞳を思わず逸らしてしまった。

  口にするのも躊躇ってしまう言葉であるのに、ヤッてしまえば隠し通せるものだと思っていたのに!

  いや、そもそもお互い裸である時点で、こんな恥じらいは今更ですが!

  この人は…!

「あ……」

  急に頬に彼の温かい掌が触れ、思わず声が漏れた。

「図星な時点で丸分かりだ」

「ち、違います…!これは……っ!」

  弁解の為に、ようやく瞳を合わせ直すと、唇に、彼の親指がそっと触れた。

  細められた彼の瞳は、どこかさっきまでと違っていて。

「別に……だろ?」

「え……んっ……」

  彼の瞳が私を見つめたままそっと閉じるまで、彼との距離が縮まっていたことに気づかなかった。

  長い睫毛が、目の前にあって。
  柔らかいものが、唇に触れていて。

  数刻前に一度経験していたから、その行動が何なのかに、すぐ結び付くことが出来た。

  、は、私がさっき彼に告げた言葉だと、僅かな思考がようやく理解に落ちた。

  彼は、私にキスを落とした。

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