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9.令嬢の決意は固い
しおりを挟む私、変なことしてないだろうか。
もう既にミスとかないだろうか。
そもそもこんなこと、あっていいのだろうか?
彼がシャワーを浴び始めた音が聞こえてきて、思わず不安が募り、温めたはずの身体から冷えた汗が流れる。
彼──澤田さんのことは、まだよく分からない。
浅井さんの話を聞くに、前山先輩の近くに座っていたようだけど、一切気づかなかった。
どうして私を助けてくれたのだろう?
あの路地を通ったのは偶然だったのか?
駅に近い道だった?
それとも、ずっと後をつけてきていた…?
もしかしたらストーカーなのかもしれないし、浅井さんと同じような感じかもしれない。
女なら誰でもいい、そんな私のような考えでここを選んだのかもしれない。
もしくは、私の、西条家の地位…
でも、お金目的では無さそうだった。
ましてここのホテル代は、私が払う前に先に出していた。
ホテルのフロントの顔が見えないようになっていて戸惑っているうちに払われてしまったのもあるけれど。
そうだとしたら、本当にヤりたいだけなのかも。
私には、男の人の感覚が分からない…気がする。
ふと、浅井さんからのキスが脳裏に浮かんで、つい唇を拭ってしまった。
あの後から、唇が変だ。
忘れたいのに、嫌な感触がこびり付いて離れない。
その度に胸がザワザワして、軽い嗚咽と涙が溢れる。
澤田さんが声をかけてくれるまで、浅井さんの名前すら知らなかった。
私、名前も知らない人と初めてのキスをしてしまったんだ。
ことの重大さにようやく気づき、ベッドの布団を握る。
凄く恐かった。
シャワー中にも思い出して、唇を何度も拭った後、置いてあった無料の歯ブラシで何度も歯を磨いた。
これからもこうして誰かとキスをしなくてはならないと考えると不安になる。
王子様のようなキスは、きっと性交渉には存在しないのだと思った。
初めてはもっと幸せなキスにしたかった…
相手すらいないのに、それを望む事は、間違いだろうか?
きっと、あの澤田さんも、キスを迫ってくるのだろう。
想像がつかない──けど。
ギュッと、手のひらを握った。
私はもう、父には従わないって決めたんだ!
悪い事だとしても、不清潔だとしても。
私はこれを乗り越えて、誰かと子作りして、お見合い婚をしないと断言する!
そう、決めたんだ!
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