9 / 104
8.思わぬ理解を得てしまいました
しおりを挟む
ことは数刻前に遡る…
「どうしよう……」
「……終電過ぎてたな」
「それは迎えを呼べばなんとかなるのですが……っ!」
駅に着いたものの、既に終電の時間からだいぶ経っていることに気づき、2人とも改札前にして立ち止まった。
既に人がほとんどいない。
ついクセで、家に頼ろうとケータイを握っている自分に気付き、首を何度も横に振った。
「へぇ……便利だね」
「いえ、ダメです!
今はお家に頼らないと決めているのです……」
画面を閉じて、ギュッと握った。
彼もまた時間を気にしてか、画面を確認していたが、ふと顔を上げた。
「……訳ありってやつ?」
「そうです。それもあります。あと……」
もう一つ、私の大事な問題は……
「誰かと性交渉して子作りする絶好のチャンスを逃してしまいました!」
「は…?」
フードの中で彼が目を丸くするのが見えた。
あ、思わず声に出してしまいました…
澤田さんは一歩こちらに歩みを進めた。
「つまりアレか?浅井が言ってたことはほぼ間違いじゃなくて、あの路地でのことも同意の上…?」
「ひっ…あの、はい…そういうことになります…」
先程の圧を思い出してビクッと身体が震える。
浅井、というのがあの人の名前なのだろう。
凄く申し訳ないし、意味は間違えていないのだから、そうでないと否定は出来ないが…
澤田さんは目を細めて、小さくため息をつき、額に手を置いた。
幻滅された…!
「マジか…邪魔して悪かったな。
明日浅井に謝っとく」
「い、いえ…!
あの、もうあの人には頼まない方がいいなと感じたので…あの…えっと…」
言葉にしようとして、思い出しては、震えが蘇る。
初めて感じた、恐怖だった。
「……あんた、震えてたよな、あの時も」
「え?」
フードに少し街灯の光が入って、二重瞼の彼の顔が見えた。
「あんた泣いてたし。浅井も、中々持ち帰りなんて出来ないタイプだから、だいぶ興奮してたみたいだし。
てっきり路上で犯されて、助け求めてんのかと思ったんだよ」
少し拗ねた物言いで、不安そうな顔で。
浅井さんより低くて静かな声なのに、それが分かって、なんだかホッとした。
「いえ…正直、あの場でああいう破廉恥な事はしたくありませんでしたし…私も初めてで、戸惑ってしまい…
助けてくださり、ありがとうございました!」
丁寧に深く頭を下げると、彼もまたホッとしたように僅かに口角を上げた。
良かった…ずっと仏頂面だったけど、普通の人だ。
「そう。余計なことしたかと思った」
「いえいえです!
先程から取り乱してしまいすみませんでした!
何かお礼をしたいくらいですが、こういう場合は謝礼金がよろしいですよね?
おいくらほどでしょうか…?」
「お礼……ね……」
目を伏せたと思えば、彼は無表情に答えた。
「さっき言ってた、子作りってやつさ…」
「あ…はい!」
我ながらスッカリ頭から抜け落ちていた!
お礼をしたら運転手を呼んで屋敷へ帰ってそれでまた作戦を練り直して……
「俺が相手してやろうか?」
「……へ?」
思わず、財布を落としてしまった。
「どうしよう……」
「……終電過ぎてたな」
「それは迎えを呼べばなんとかなるのですが……っ!」
駅に着いたものの、既に終電の時間からだいぶ経っていることに気づき、2人とも改札前にして立ち止まった。
既に人がほとんどいない。
ついクセで、家に頼ろうとケータイを握っている自分に気付き、首を何度も横に振った。
「へぇ……便利だね」
「いえ、ダメです!
今はお家に頼らないと決めているのです……」
画面を閉じて、ギュッと握った。
彼もまた時間を気にしてか、画面を確認していたが、ふと顔を上げた。
「……訳ありってやつ?」
「そうです。それもあります。あと……」
もう一つ、私の大事な問題は……
「誰かと性交渉して子作りする絶好のチャンスを逃してしまいました!」
「は…?」
フードの中で彼が目を丸くするのが見えた。
あ、思わず声に出してしまいました…
澤田さんは一歩こちらに歩みを進めた。
「つまりアレか?浅井が言ってたことはほぼ間違いじゃなくて、あの路地でのことも同意の上…?」
「ひっ…あの、はい…そういうことになります…」
先程の圧を思い出してビクッと身体が震える。
浅井、というのがあの人の名前なのだろう。
凄く申し訳ないし、意味は間違えていないのだから、そうでないと否定は出来ないが…
澤田さんは目を細めて、小さくため息をつき、額に手を置いた。
幻滅された…!
「マジか…邪魔して悪かったな。
明日浅井に謝っとく」
「い、いえ…!
あの、もうあの人には頼まない方がいいなと感じたので…あの…えっと…」
言葉にしようとして、思い出しては、震えが蘇る。
初めて感じた、恐怖だった。
「……あんた、震えてたよな、あの時も」
「え?」
フードに少し街灯の光が入って、二重瞼の彼の顔が見えた。
「あんた泣いてたし。浅井も、中々持ち帰りなんて出来ないタイプだから、だいぶ興奮してたみたいだし。
てっきり路上で犯されて、助け求めてんのかと思ったんだよ」
少し拗ねた物言いで、不安そうな顔で。
浅井さんより低くて静かな声なのに、それが分かって、なんだかホッとした。
「いえ…正直、あの場でああいう破廉恥な事はしたくありませんでしたし…私も初めてで、戸惑ってしまい…
助けてくださり、ありがとうございました!」
丁寧に深く頭を下げると、彼もまたホッとしたように僅かに口角を上げた。
良かった…ずっと仏頂面だったけど、普通の人だ。
「そう。余計なことしたかと思った」
「いえいえです!
先程から取り乱してしまいすみませんでした!
何かお礼をしたいくらいですが、こういう場合は謝礼金がよろしいですよね?
おいくらほどでしょうか…?」
「お礼……ね……」
目を伏せたと思えば、彼は無表情に答えた。
「さっき言ってた、子作りってやつさ…」
「あ…はい!」
我ながらスッカリ頭から抜け落ちていた!
お礼をしたら運転手を呼んで屋敷へ帰ってそれでまた作戦を練り直して……
「俺が相手してやろうか?」
「……へ?」
思わず、財布を落としてしまった。
10
お気に入りに追加
534
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる