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5.初めてのキス
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「こっち!着いてきてくださいっ!!」
「は、はい!」
歓迎会をしていた居酒屋を抜け出し、手を引く男性に置いてかれぬよう必死に足を早めた。
こんなことならヒールはやめておくべきだった、と反省を脳内にメモする。
でも、こんなに急いでいったい、どこに行くというのだろう?
先程、子作りの了承を得た時、赤い顔を更に赤くして、即答でOKしてくれた。
凄くホッとしたし、つまりはお付き合いもするのだと認識しているのだけど、この後はどうするものなのだろうか。
今日はそういう相手を見つける場だという認識だったので、この後の流れを全く理解していない。
“抜け出す”というものがあること自体知らなかった。
初めてのデート、というものならばきっとどこかの料理店を予約して行くものなのだろうし……
というか、さっきから手汗が凄い。
そして裏道を進み過ぎて、普段こういった道を通らない私は帰るのに苦労しそうだ。
裏道は絶対通るなと、父から言われているというのに……って、ダメだ、父は無視!
今の私は父を裏切る悪い子なんだから……!
「よし……この辺まで来ればいっか!」
「え?」
急に立ち止まるものだから、思わずぶつかってしまった。
辺りは何もない、誰もいない、街灯も1つあるだけの、静かな細い道路。
その角まで来た彼は、ふぅ、と息を吐き、額の汗を拭った。
「この辺りに、何かあるのですか?」
思わず、そう尋ねてしまった。
この辺でいい、の意味が理解できない。
道路には空き缶のゴミが落ちているし、少し変な臭いがするし、とても衛生的とは思えない。
何かあるとしても、いいものでは無さそう。
ただの通り道だと思っていたのだが…何か必要な事があるのだろうか?
辺りを見回していると、男性はガシッと私の両肩に手を置き、壁に押し当てた。
「いた……んっ!」
一瞬だった。
グッと、口が塞がれる。
息が出来なくて、思わず大きく鼻で息を吸った。
酷いアルコール臭……!
思わず、目を見開き、ギュッと掌を握った。
目の前に、男性の顔がある。
それも、至近距離なんてものじゃない。
まつ毛が当たるくらいの距離に、密着した彼の瞳がある。
ヌルッと、唇に何かが這った。
これは……まさか……!
あの夢にまで見た、キスというもの……!?
でも、まさか、そんな……!
「はっん……ん!」
物申そうと口を開けば、口の中にそのヌルヌルしたものが入ってきて、舌を追いかけるように動き回る。
また酷い臭いがして、吐き気を催し、思わず目に涙が浮かんだ。
このままだと、まずい……!
そう思って握り締めて震えていた手で、グッと彼の両肩を押すと、彼は案外、すんなり離れてくれた。
それでも、身体の距離は少しも離れていない。
「な、何するんですか……!」
「何って……子作り、でしょ?」
悪びれもなく、彼は少し息を荒げ、また肩を寄せて唇を尖らせる。
しかし、つい、心の中で叫んでしまった。
ここで……!?
「は、はい!」
歓迎会をしていた居酒屋を抜け出し、手を引く男性に置いてかれぬよう必死に足を早めた。
こんなことならヒールはやめておくべきだった、と反省を脳内にメモする。
でも、こんなに急いでいったい、どこに行くというのだろう?
先程、子作りの了承を得た時、赤い顔を更に赤くして、即答でOKしてくれた。
凄くホッとしたし、つまりはお付き合いもするのだと認識しているのだけど、この後はどうするものなのだろうか。
今日はそういう相手を見つける場だという認識だったので、この後の流れを全く理解していない。
“抜け出す”というものがあること自体知らなかった。
初めてのデート、というものならばきっとどこかの料理店を予約して行くものなのだろうし……
というか、さっきから手汗が凄い。
そして裏道を進み過ぎて、普段こういった道を通らない私は帰るのに苦労しそうだ。
裏道は絶対通るなと、父から言われているというのに……って、ダメだ、父は無視!
今の私は父を裏切る悪い子なんだから……!
「よし……この辺まで来ればいっか!」
「え?」
急に立ち止まるものだから、思わずぶつかってしまった。
辺りは何もない、誰もいない、街灯も1つあるだけの、静かな細い道路。
その角まで来た彼は、ふぅ、と息を吐き、額の汗を拭った。
「この辺りに、何かあるのですか?」
思わず、そう尋ねてしまった。
この辺でいい、の意味が理解できない。
道路には空き缶のゴミが落ちているし、少し変な臭いがするし、とても衛生的とは思えない。
何かあるとしても、いいものでは無さそう。
ただの通り道だと思っていたのだが…何か必要な事があるのだろうか?
辺りを見回していると、男性はガシッと私の両肩に手を置き、壁に押し当てた。
「いた……んっ!」
一瞬だった。
グッと、口が塞がれる。
息が出来なくて、思わず大きく鼻で息を吸った。
酷いアルコール臭……!
思わず、目を見開き、ギュッと掌を握った。
目の前に、男性の顔がある。
それも、至近距離なんてものじゃない。
まつ毛が当たるくらいの距離に、密着した彼の瞳がある。
ヌルッと、唇に何かが這った。
これは……まさか……!
あの夢にまで見た、キスというもの……!?
でも、まさか、そんな……!
「はっん……ん!」
物申そうと口を開けば、口の中にそのヌルヌルしたものが入ってきて、舌を追いかけるように動き回る。
また酷い臭いがして、吐き気を催し、思わず目に涙が浮かんだ。
このままだと、まずい……!
そう思って握り締めて震えていた手で、グッと彼の両肩を押すと、彼は案外、すんなり離れてくれた。
それでも、身体の距離は少しも離れていない。
「な、何するんですか……!」
「何って……子作り、でしょ?」
悪びれもなく、彼は少し息を荒げ、また肩を寄せて唇を尖らせる。
しかし、つい、心の中で叫んでしまった。
ここで……!?
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