お見合い結婚が嫌なので子作り始めました。

天野 奏

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4.お持ち帰りされてみたい。

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  その後声をかけてくれる人も何人かいたが、みんなに短く的確に返事をすると、すぐ会話が終わってどこかに行く、を繰り返していた。

  ビールの後はワインを飲んでいたのだが、このお店のワインはさほど風味が良くなくて、すぐに飽きてしまった。
  前山先輩とは、その後会っていない。
  というのも、チラッと顔を見ると手を振られてしまうので、なんだか居た堪れないのだ。
  特に、前山先輩の両サイドにいる女子からの視線が。

  あの感情がなんだか、私はメイドの高木さんから借りた『恋愛マニュアル』というもので読んだので知っている。

  あれはおそらく、嫉妬だ。

  誰かに好きな人を取られたくないという独占欲。

  私が何故その感情を向ける対象なのかは知らないが、恋愛の本に書かれた事象を元にすると、『他の異性と話すところを目撃したことから始まる嫉妬』に状況が似ている……というか、これしか思い当たらない。

  しかしそうやって、感情をむき出しにすることが出来るのを、羨ましいとも思う。
  つまりは、あの子達は前山先輩が好きなんだ。

  好きだから、ああやって素直に表現出来るんだ。

  私は、そんな感情抱いたことがない。
  好きだなんて、とってもステキな感情じゃないか。

「ねぇ……」

  ハッとして振り返ると、顔を赤くした男性がすぐ後ろに座っていた。

  この人は確か……前山先輩の次に話しかけてきた……

  手を近づけられたと思えば、耳のすぐ横につけられる。

「これから、一緒に抜け出さない?」

  抜け出す…?
  それは、どこに?どういう意味…

  その後周りに目を向けると、明らかにさっきより人数が減っていた。

  ハッとして、また男性に目を戻した。

  これはつまり、お誘い……!?

  こうして気になる男女でこの飲み会から退場し、告白したりされたりして、仲良くなるという……関係作りの第一段階!
  つまりこの人、私を好きなのかもしれない!?

  などと、少し目を輝かせていた私は、少し戸惑うも、大きめに頷いた。  

「ホント!?やったぁ!」

  男性は声を押し殺してガッツポーズを決めた。
  見たところ普通の男性だし、初めて好きになってもらえた(かもしれない)相手だし、こうして声をかけるのはとても勇気がいる事だろう。
  その証拠に顔が真っ赤なのだろうし。
  前山先輩は未だに3人の女子が張り付いていて、机の角から抜け出せそうにないのが少し残念な気がするが、仕方ない。

  問題は、この人が私の希望に応えてくれるかどうかだ。

「少しお話があるのですが……」
「は、はい、なんでしょう?」

  男性が自身の耳に手を置いたので、私もそれに合わせて手を耳の横につけ、耳打ちした。
  初めて口にする言葉を使う為、心臓がドキドキして、彼と同じくらい頬が火照るのを感じた。

「あの…お付き合いの条件として、私と性交渉……いわゆる子作りをしていただきたいのですが、お願いできますか?」


  
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