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3.テニスサークルに仮入部します。
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「え~皆様!
この度はテニスサークルに仮入部してくださりありがとうございました!
今日は先輩方の奢りで~す!
ガンガン飲んじゃってください~♪
あ、未成年はダメよ♡
ソフトドリンクで!
では、早速……カンパーイ!」
「「カンパーイ!!」」
たくさんの男女の声と共に、グラスが宙に集まる。
私も真似して袖を机につけないように手で押さえながら、グラスを持ち上げ、お酒を口に運んだが、上の方がほとんど泡で何も飲めなかった。
もう少し泡が収まったら飲むことにしようなど考え、周りを見渡すと、どうやら周りはグラスを周りの人達にぶつけてから飲むようで、しまったと思った。
少し早まってしまったようだ。
みんなに合わせて行かねば。
「くぅ~!ビール苦い!!」
「まだまだヒヨッコだねぇ~」
あの泡の多いアルコール──ビールを口にした2年生が苦いと嘆きながらも笑っている。
口元にたくさん泡が付いているが……どうして泡が無くなるまで待たないのだろう?
「西条さん、飲めてる?」
後ろから歩いてきたらしい見知らぬ男性が声をかけてきたらしい。
名前を呼ばれて反射的に振り返ると、グラスを前に出されたので、みんながやっていることと同じだと直感し、まだ泡の引かないそれを前に出した。
「いえ…まだ……」
「そうなの?アルコールは得意?」
「はい。ワイン程度なら飲みますが、これは飲んだことないです」
「そうなんだ…これ、ビールなんだけど、泡引いたら美味しくないよ?」
「え?そうなんですか??」
「そう。飲んでみて?」
半信半疑にグラスを覗き、泡の奥の中身が口に届くよう傾ける。
口の中にジワッと嫌な味が流れてきた。
カマンベールチーズの苦味より苦い……
「どう?」
「……苦い、です」
「はは……そうだよねぇ。これは一気に飲まないと美味しくないんだよ?」
「そうなんですか?」
「そうそう。一気に飲んでみな?」
この苦い物を一気に飲んで、本当に美味しくなるのだろうか?
本当なのだとしたら、試してみたい。
興味が沸いて、一気に飲み込む。
思わず、顔が渋り、目に涙が浮かんだ。
「どう?」
「……苦い、です」
「ははっ……西条さん可愛いね!」
この人は私をバカにしているのだろうか?
眉間にシワを寄せた時、不意に頭を撫でられた。
「偉かった偉かった。
大人の一歩だよ?
西条さん、とっつきにくそうってみんなが言ってたけど、こんな可愛いんだったら独占しちゃおうかな?」
「えぇ~前山先輩私も~!」
昨日の女の子が昨日とは別な声で先輩を呼んでいた。
「はいはい~」と、その人は席を立った。
なるほど、これが前山先輩。
茶髪で、朗らかで、人懐っこいというか、好かれるタイプで……
撫でられて乱れた髪を、そっと直す。
こういう人が、好かれるのか。
とっつきにくそう……
直接人から言われた事無かったけど、そう思われているのかな。
今更どう思われているかなど気にする必要はないはずなのに、少し、胸が痛む。
前山先輩は、それを認めた上で声をかけてくれた。
優しい人、なんだよね?
きっと……
この度はテニスサークルに仮入部してくださりありがとうございました!
今日は先輩方の奢りで~す!
ガンガン飲んじゃってください~♪
あ、未成年はダメよ♡
ソフトドリンクで!
では、早速……カンパーイ!」
「「カンパーイ!!」」
たくさんの男女の声と共に、グラスが宙に集まる。
私も真似して袖を机につけないように手で押さえながら、グラスを持ち上げ、お酒を口に運んだが、上の方がほとんど泡で何も飲めなかった。
もう少し泡が収まったら飲むことにしようなど考え、周りを見渡すと、どうやら周りはグラスを周りの人達にぶつけてから飲むようで、しまったと思った。
少し早まってしまったようだ。
みんなに合わせて行かねば。
「くぅ~!ビール苦い!!」
「まだまだヒヨッコだねぇ~」
あの泡の多いアルコール──ビールを口にした2年生が苦いと嘆きながらも笑っている。
口元にたくさん泡が付いているが……どうして泡が無くなるまで待たないのだろう?
「西条さん、飲めてる?」
後ろから歩いてきたらしい見知らぬ男性が声をかけてきたらしい。
名前を呼ばれて反射的に振り返ると、グラスを前に出されたので、みんながやっていることと同じだと直感し、まだ泡の引かないそれを前に出した。
「いえ…まだ……」
「そうなの?アルコールは得意?」
「はい。ワイン程度なら飲みますが、これは飲んだことないです」
「そうなんだ…これ、ビールなんだけど、泡引いたら美味しくないよ?」
「え?そうなんですか??」
「そう。飲んでみて?」
半信半疑にグラスを覗き、泡の奥の中身が口に届くよう傾ける。
口の中にジワッと嫌な味が流れてきた。
カマンベールチーズの苦味より苦い……
「どう?」
「……苦い、です」
「はは……そうだよねぇ。これは一気に飲まないと美味しくないんだよ?」
「そうなんですか?」
「そうそう。一気に飲んでみな?」
この苦い物を一気に飲んで、本当に美味しくなるのだろうか?
本当なのだとしたら、試してみたい。
興味が沸いて、一気に飲み込む。
思わず、顔が渋り、目に涙が浮かんだ。
「どう?」
「……苦い、です」
「ははっ……西条さん可愛いね!」
この人は私をバカにしているのだろうか?
眉間にシワを寄せた時、不意に頭を撫でられた。
「偉かった偉かった。
大人の一歩だよ?
西条さん、とっつきにくそうってみんなが言ってたけど、こんな可愛いんだったら独占しちゃおうかな?」
「えぇ~前山先輩私も~!」
昨日の女の子が昨日とは別な声で先輩を呼んでいた。
「はいはい~」と、その人は席を立った。
なるほど、これが前山先輩。
茶髪で、朗らかで、人懐っこいというか、好かれるタイプで……
撫でられて乱れた髪を、そっと直す。
こういう人が、好かれるのか。
とっつきにくそう……
直接人から言われた事無かったけど、そう思われているのかな。
今更どう思われているかなど気にする必要はないはずなのに、少し、胸が痛む。
前山先輩は、それを認めた上で声をかけてくれた。
優しい人、なんだよね?
きっと……
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