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太陽に触れてはならない
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ホテルの一室に入り、自らの目で部屋を一通り目視する。
隠しカメラは付いていない。
窓も1つしかないし、窓の外の建物より高い階の部屋だからそこまで覗くことはないだろう。
まだ玄関に立ち尽くしたままの少女に近づくと、手を引いて優しく抱き締めた。
ふわっと、いい香りがした。
「……ありがとう。
君のおかげで助かったよ。
なんとお礼をしたらいいか」
「えっと、あの、さっきのは誰なんですか?」
「分からない。
でも君が気付いてくれなかったら、俺もヤバかったかも」
身体を離すと、心臓をバクバクさせながら、下を向き、まだ少女は同じ位置にいた。
こういう顔されると、人間的に意地悪したくなる。
そういえば、まだほとんど目を合わせていない。
そういう意味ではなかなかガードが固い。
けど…片手で彼女の顎に手を添えて、またキスをした。
「んっ……!?」
今度は大人のキス。
恐らく初めて入ってくるであろう舌に困惑し、身体がビクッと反応する。
ようやく伸びて来た手が俺の両肩を押した。
不思議だ……。
ただの唾液のハズなのに、喉が潤う気がした。
肩を強めに叩かれて、自分がキスに夢中になっていることに気付いた。
「はぁ…はぁ……や、やめて下さい……っ!」
「?……嫌?」
手の甲で口元を隠し、耳まで赤くして、顔を逸らした。
「い、嫌とか、そういうことじゃなくて……っ!
普通、初めて会った人と、こういうのは……っ」
「恐い?」
「っ……!
恐くは…無いです……けど……っ」
「じゃあ、顔上げて」
恐る恐る、少女は目を上げた。
茶色の瞳が、真っ直ぐと俺を見上げている。
その瞬間、心臓が変に脈を打った。
ドクッ……ッ!
少女のよりも先に、俺のが。
なんだ……?
「あの……ごめん……なさい……」
「?」
「私、ホントは今日、終電で寝過ごしちゃって……。
知らない駅だし、お金無かったし、泊まるところもなくて……泊まれるってだけで、ちょっとホッとして……。
でも、それでってわけじゃないの。
たまたまあなたを見つけて、怪しい人もいて、心配だったから……」
「じゃあ、君は俺を利用して、俺は都合よく宿を提供したってことか」
「っ……でも、ホントに悪意があったわけじゃなくて、その……言わなくちゃと思って……」
バツが悪そうに、俯きながらも言葉にしている少女。
真っ直ぐで、真面目で……時と場合という言葉を知らないらしい。
「バカ正直に言えばいいってわけじゃない。
特にこの場合」
「……っ」
パッと、何か言いたげに顔を上げる。
俺はジッと少女を見た。
少し、不満げに。
「そもそも、追われてる人間が信用できるなんて思った?
助かった後事情を話したらホテル代でも出してくれるって?」
「違っ……!」
「ここがどういうホテルだか分かってる?」
少女は黙って俯いた。
この少女がずっと目を背けていたのは、嘘をついた後ろめたさがあったからだろう。
まだありそうだが……。
ホントなら、真っ先にヤられてもおかしくない。
「……まぁ、いいよ」
「え?」
俺がこんなことで不満に思ったり、機嫌を損ねたりすることはない。
たかがエサの主張だろ?
それに……
機嫌を損ねた後許されると、案外気が抜けるものだ。
気が張ると催眠が効きにくい。
今もあまり効いていない気がする。
肩の力を抜いてもらわなくては。
「俺も助けてもらったわけだし、お互いに都合がいいだろ?
借りは返したってことで」
俺はベッドに座った。
久々に何かに腰を下ろした気がする。
やっぱり楽だ。
「……というと?」
「君がヤりたくないなら、ヤらない。
だから、安心してシャワー浴びてきな?」
ことは、その後で充分だ。
隠しカメラは付いていない。
窓も1つしかないし、窓の外の建物より高い階の部屋だからそこまで覗くことはないだろう。
まだ玄関に立ち尽くしたままの少女に近づくと、手を引いて優しく抱き締めた。
ふわっと、いい香りがした。
「……ありがとう。
君のおかげで助かったよ。
なんとお礼をしたらいいか」
「えっと、あの、さっきのは誰なんですか?」
「分からない。
でも君が気付いてくれなかったら、俺もヤバかったかも」
身体を離すと、心臓をバクバクさせながら、下を向き、まだ少女は同じ位置にいた。
こういう顔されると、人間的に意地悪したくなる。
そういえば、まだほとんど目を合わせていない。
そういう意味ではなかなかガードが固い。
けど…片手で彼女の顎に手を添えて、またキスをした。
「んっ……!?」
今度は大人のキス。
恐らく初めて入ってくるであろう舌に困惑し、身体がビクッと反応する。
ようやく伸びて来た手が俺の両肩を押した。
不思議だ……。
ただの唾液のハズなのに、喉が潤う気がした。
肩を強めに叩かれて、自分がキスに夢中になっていることに気付いた。
「はぁ…はぁ……や、やめて下さい……っ!」
「?……嫌?」
手の甲で口元を隠し、耳まで赤くして、顔を逸らした。
「い、嫌とか、そういうことじゃなくて……っ!
普通、初めて会った人と、こういうのは……っ」
「恐い?」
「っ……!
恐くは…無いです……けど……っ」
「じゃあ、顔上げて」
恐る恐る、少女は目を上げた。
茶色の瞳が、真っ直ぐと俺を見上げている。
その瞬間、心臓が変に脈を打った。
ドクッ……ッ!
少女のよりも先に、俺のが。
なんだ……?
「あの……ごめん……なさい……」
「?」
「私、ホントは今日、終電で寝過ごしちゃって……。
知らない駅だし、お金無かったし、泊まるところもなくて……泊まれるってだけで、ちょっとホッとして……。
でも、それでってわけじゃないの。
たまたまあなたを見つけて、怪しい人もいて、心配だったから……」
「じゃあ、君は俺を利用して、俺は都合よく宿を提供したってことか」
「っ……でも、ホントに悪意があったわけじゃなくて、その……言わなくちゃと思って……」
バツが悪そうに、俯きながらも言葉にしている少女。
真っ直ぐで、真面目で……時と場合という言葉を知らないらしい。
「バカ正直に言えばいいってわけじゃない。
特にこの場合」
「……っ」
パッと、何か言いたげに顔を上げる。
俺はジッと少女を見た。
少し、不満げに。
「そもそも、追われてる人間が信用できるなんて思った?
助かった後事情を話したらホテル代でも出してくれるって?」
「違っ……!」
「ここがどういうホテルだか分かってる?」
少女は黙って俯いた。
この少女がずっと目を背けていたのは、嘘をついた後ろめたさがあったからだろう。
まだありそうだが……。
ホントなら、真っ先にヤられてもおかしくない。
「……まぁ、いいよ」
「え?」
俺がこんなことで不満に思ったり、機嫌を損ねたりすることはない。
たかがエサの主張だろ?
それに……
機嫌を損ねた後許されると、案外気が抜けるものだ。
気が張ると催眠が効きにくい。
今もあまり効いていない気がする。
肩の力を抜いてもらわなくては。
「俺も助けてもらったわけだし、お互いに都合がいいだろ?
借りは返したってことで」
俺はベッドに座った。
久々に何かに腰を下ろした気がする。
やっぱり楽だ。
「……というと?」
「君がヤりたくないなら、ヤらない。
だから、安心してシャワー浴びてきな?」
ことは、その後で充分だ。
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