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第2章 少年の決め事
寂しい背中
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「ようリヴ!その子が嫁さんかい?」
「違います」
「リヴ!そんな美人さんの嫁さんもらえるなんてー。
幸せもんだなぁー」
「違います」
「おっ!リヴ!噂に聞いたんだがその子は…….」
「違います!!」
少し歩いて人に会えばこう言われああ言われ……
私が自分で必死に否定して歩く羽目になって、頭に血が上りそうだ。
一言否定してくれればいいのに、無視してズカズカと先を歩くから、また誤解を解く前に通り過ぎてしまった。
「リヴ!」
「なに?」
呼びかけると普通に立ち止まり、ぶつかりそうになってあと少しのところで止まる。
「どういうつもりだ?
ちゃんと説明しろ」
「なにを?」
「っ……どうして討伐のことを知ってる?」
無表情に見つめられて、思わず身構えた。
こいつのこの顔は、油断ならない。
「ああ、その兵服のポケットに紙が入ってた。
まぁそうでなくとも、毎回ここにあんたと同じような奴らは来てたからな。
臭いで分かる」
リヴは再び歩き始める。
それについて行くように、後ろを歩く。
「臭いでって…まさか、そいつらにもき、昨日みたいなこと…」
「?臭い付け?やったよ。
じゃないとハンターをここには居させられないからな。
ま、女はシュラが初めてだったけど」
「…………」
開いた口が塞がらない。
本当に、ただのマーキングか。
しかも、男同士でアレをするって…いや、想像するな、気持ち悪い。
「それで、どうして臭い付けなんか……」
「ほら、着いた」
少し歩いたところで、広い草原が現れた。
村の規模の半分以上を占めるほど、広々としている。
周りにある防衛柵が、小さく見えた。
ビューッと風が下から上に吹き上げて来る。
下り坂の斜面には黒い牛たちが放牧され、自由に歩き回っている。
蒼い匂いがした。
「……ここに、討伐対象が?」
「げっ!リヴ!!」
横から声がして振り向けば、牛飼いらしき青年が一頭の牛を引き連れて歩いて来たところだった。
なんだ、そういうリアクションを取る奴もいるのか。
ずっと妙に親しみのある声かけをされていたから、この村で好かれているのかと思っていた。
「あ……ああ、その子が噂の婚約者か!
ホント美人だな!」
「ち、違います!!
どこでそうなったかは知りませんが、私は魔物の討伐に来たわけで……!」
「いやぁー良かったなぁーこんな美人と結婚なんて…尻に敷かれたのかぁ?」
明らかに目を泳がせる男に、ムッと腹が立つ。
全くもって聴く耳持たずか。
そうやって通り過ぎようとする牛飼いに、リヴは目を細めた。
「……そいつどうする?」
「えっ、あ、いや……」
ビクッと男は震えて、目を逸らした。
冷や汗をかいている。
なんだ?
そんなに、リヴが恐いのか?
何か弱みを握られているのか??
「……分かってる」
リヴは独り言のように呟いて顔を俯かせて、私の手を離し、牛に近づいて行った。
「……ありがとう」
「…………」
その空気が、なんだか不思議な感じで。
何に対して、ありがとうなのかは知らないが。
リヴは虫のたかるその牛の頭を撫で、太く大きなその首に抱きついた。
泣いてる……?
そんなわけ、ないか……
その背中が妙に寂しげで、なんとも言えない気持ちになった。
「違います」
「リヴ!そんな美人さんの嫁さんもらえるなんてー。
幸せもんだなぁー」
「違います」
「おっ!リヴ!噂に聞いたんだがその子は…….」
「違います!!」
少し歩いて人に会えばこう言われああ言われ……
私が自分で必死に否定して歩く羽目になって、頭に血が上りそうだ。
一言否定してくれればいいのに、無視してズカズカと先を歩くから、また誤解を解く前に通り過ぎてしまった。
「リヴ!」
「なに?」
呼びかけると普通に立ち止まり、ぶつかりそうになってあと少しのところで止まる。
「どういうつもりだ?
ちゃんと説明しろ」
「なにを?」
「っ……どうして討伐のことを知ってる?」
無表情に見つめられて、思わず身構えた。
こいつのこの顔は、油断ならない。
「ああ、その兵服のポケットに紙が入ってた。
まぁそうでなくとも、毎回ここにあんたと同じような奴らは来てたからな。
臭いで分かる」
リヴは再び歩き始める。
それについて行くように、後ろを歩く。
「臭いでって…まさか、そいつらにもき、昨日みたいなこと…」
「?臭い付け?やったよ。
じゃないとハンターをここには居させられないからな。
ま、女はシュラが初めてだったけど」
「…………」
開いた口が塞がらない。
本当に、ただのマーキングか。
しかも、男同士でアレをするって…いや、想像するな、気持ち悪い。
「それで、どうして臭い付けなんか……」
「ほら、着いた」
少し歩いたところで、広い草原が現れた。
村の規模の半分以上を占めるほど、広々としている。
周りにある防衛柵が、小さく見えた。
ビューッと風が下から上に吹き上げて来る。
下り坂の斜面には黒い牛たちが放牧され、自由に歩き回っている。
蒼い匂いがした。
「……ここに、討伐対象が?」
「げっ!リヴ!!」
横から声がして振り向けば、牛飼いらしき青年が一頭の牛を引き連れて歩いて来たところだった。
なんだ、そういうリアクションを取る奴もいるのか。
ずっと妙に親しみのある声かけをされていたから、この村で好かれているのかと思っていた。
「あ……ああ、その子が噂の婚約者か!
ホント美人だな!」
「ち、違います!!
どこでそうなったかは知りませんが、私は魔物の討伐に来たわけで……!」
「いやぁー良かったなぁーこんな美人と結婚なんて…尻に敷かれたのかぁ?」
明らかに目を泳がせる男に、ムッと腹が立つ。
全くもって聴く耳持たずか。
そうやって通り過ぎようとする牛飼いに、リヴは目を細めた。
「……そいつどうする?」
「えっ、あ、いや……」
ビクッと男は震えて、目を逸らした。
冷や汗をかいている。
なんだ?
そんなに、リヴが恐いのか?
何か弱みを握られているのか??
「……分かってる」
リヴは独り言のように呟いて顔を俯かせて、私の手を離し、牛に近づいて行った。
「……ありがとう」
「…………」
その空気が、なんだか不思議な感じで。
何に対して、ありがとうなのかは知らないが。
リヴは虫のたかるその牛の頭を撫で、太く大きなその首に抱きついた。
泣いてる……?
そんなわけ、ないか……
その背中が妙に寂しげで、なんとも言えない気持ちになった。
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