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第3章 少年の真意

町の裏側

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  村の出口では門番が待っていた。
  村を出ると言葉にした途端リヴの事をしきりに尋ねられたが、少しギルドへ帰還するだけだと伝えると、すんなり通してくれた。

  この村はやけにリヴを慕っている。
  ただ子供に優しく面倒見がいいからというだけではないのだろうが、よく分からない。

  もし私がこの村に昔から住んでいたとしても、あそこまでの変質者を気にかけ、労うことは無いだろう。
  そもそもずっとああしてフラフラ出歩いていて、仕事は何をしている?
  パンを買ったあの小銭や、住んでいる小屋ですら、村人から授けられただけのものではないのか?

  そこまで考えて、やれやれと顔を横に振った。

  何故リヴのことを考えている。
  あいつはこの世界の理を裏切っていると言っても過言ではないほどの重罪人だ。
  この村はリヴの思考に染まってしまった…つまり洗脳されている可能性もある。 
  魔物を殺すななどと、どこでその様な教育がなされるものか。
  例えこの村がそれを推奨していたとしても、私も、他のギルドの者達も、絶対に認めない。
  殺された家族や、仲間達のことを想えば尚更、自分達の意見を曲げる事は出来ない。

  魔物は悪。
  ──これは絶対的な理だ。

『……ごめん』

  麻痺毒の発する牙に噛まれながら、鳥型の魔物を抱き締めるリヴが脳内を掠める。

  そこに合わさるように、ほんの一瞬、目の前で魔物の爪に身体を撃ち抜かれる父の姿が浮かんだ。

  ふと、無意識に歩みを止める。

  魔物に、仮に感情や思考があって、突然に家族を奪われたら──
  リヴの言う通り、なのだろう。

  では何故、父は殺されたのか──
  私の目の前で、死ぬ必要があったのか──

「っ…!」

  陸に上がった魚のように口をパクパクさせ、その瞳から色を失っていく血塗れの父を思い出し、強く頭を振って拭い去ろうとした。
  それでも脳裏に浮かび上がる為、目を開ける方が幾分かマシに思えた。
  乱れた呼吸を慌てて抑える。

  …いつぶりだろうか。
  この記憶を思い出すのは。

  父は大きな家柄ということもあって小ギルドの長を務めていた。
  魔物を殺す為の組織のトップ…本人ももちろん、討伐経験がある。
  仮にリヴの説が正しいというなら、父は不名誉な行いを続けた上、復讐を企てた魔物により死を遂げたという事になる。
  そんなことは、目の前でその死を見届けた私が認めていいものではない…。
  父の名誉の為、そして…ハンターとなった己の名誉の為。

  私は死んでも、リヴを認めるわけにはいかないのだ。

  
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