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亜貴の本性…理央のホント
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「……うん。いいよ」
「じゅ……!」
オレから、唇にキスをした。
柔らかい、亜貴の唇。
ギュッと胸が締め付けられる気がした。
ゆっくり顔を離して、微笑む。
それなのに、頬からは、涙が溢れた。
「オレが、亜貴を幸せにする。
亜貴。
オレは、亜貴を信じてるよ。
亜貴が、好きだよ」
亜貴が、好き。
ちゃんと、言葉にして、どんなに否定されても、何度だって、言うよ。
亜貴が……好きだ。
何かを言おうと、口を開いて、また閉じて、ギュッと握り締めた震える拳をゆっくり開いて、亜貴は、オレを抱き寄せた。
伸びてくる手をただ呆然と目で追っていたオレは、抱き寄せられてハッと気付く。
「あ! 亜貴! 汗……!」
「うるさい」
ギュッと、痛いくらいの抱擁。
クソ! さっきはそう言って弾いたくせに……!
ほんの少しの時間なのに、長く感じた。
「……髪、伸びたな」
誤魔化すように、そう言って、後ろ髪を撫でられた。
「うん」
「上履きだし」
「あ、忘れてた……!」
「ドジ……どんだけ走ったの?」
「学校裏の病院とか、駅近くの病院とか、探し回って……」
「バカだな」
「わ、分かってるよ! 言われなくても!」
「人に見られてる中でキスまでされて、追い返すわけにもいかねーじゃんか」
「えっ……?」
言われて初めて看護師や近くに座る患者たちに気付き、顔の熱が一気に上昇した。
みんな視線をこちらに向けていて、注目されている。
ニヤけているさっきの老人が目に入って、ハッと我に返った。
「ちょっ、も、分かったから! 離せよ!!」
引き離そうにもビクともしない。
こいつ……!
わざとだな……!
「…………と」
「え?」
ふと耳元に声がして、顔を向けようとするも、ギューッと顔を首筋に埋められてしまった。
「……俺、また間違えた。
でも、純がいたから、今回は歯止めがきいたんだと、思う」
「歯止め?」
コクリと、亜貴は頷く。
「そ、そういえば、犯人、は……」
「返り討ちで瀕死の重軽傷。
今各々処置中」
「あ、そういうこと……」
噂が巡り巡って、亜貴が出血してるって話になったのか。
歯止めが効いた、とは、そのことなのだろう。
「亜貴が血まみれって聞いてたから……無事でよかった」
「どこ情報だよ」
「さ、さぁ? 健斗が聞いたみたいだけど」
「あいつか、盛ったな」
告げ口みたいになってごめん健斗、と思いながら、今までと同じような会話が出来ていることに、ホッとした。
「純。泣かせて、悪かった。けど、お前の気持ちにはまだ…応えられない」
「え?」
身体を離して、亜貴は真剣な表情を見せた。
「理央と、一緒にいて」
「あ、亜貴……!」
「あいつには、笑ってて。
かなりさみしがり屋だから。
俺から、話をする」
「わ、分かった……」
真意は分からない、けど。
亜貴は、きっと、ちゃんと考えてくれる、と、そう思った。
「京野さん」
スーツを身にまとった男が3人、自動ドアを通過して亜貴を呼んだ。
「誰……」
「刑事だよ。
治療も終わったし、ちょっと、行ってくる」
「えっ!? 逮捕とかじゃ、ない、よな……?」
亜貴はフッと笑った。
「正当防衛だから、平気。
もう、大丈夫だから」
オレの手をそっと握って、また優しい笑みを向けた。
「もう、間違えない」
「……うん」
亜貴の手が、離れて行く。
でも、今度は、大丈夫だと思った。
「純ちゃん!」
先輩の声がして、完全に気の抜けていた頭が覚醒する。
亜貴の腰掛けていたところに座って休んでいたら、だいぶ時間が経っていたようだ。
「心配したんだよ!?
荷物はあるけど本人いないし、ずっと帰ってきてないって言われて…!」
「……ごめん、なさい。
ご心配おかけしました」
「……亜貴に、何か言われた?」
ハッとして、顔を上げる。
理央先輩は、今にも泣きそうな顔でオレを見ていた。
「だから、亜貴は危ないんだって!!
さっき先生がいて、しばらく停学処分だって……」
「えっ……」
そんな話、亜貴は言ってなかった。
もしかして、さっき決まったのだろうか。
「家に入って来た暴力団を返り討ちにしたんだとか。
ヤバいヤツらに目をつけられてんだよ!
亜貴の近くにいたら、純ちゃんが傷付く……」
思わず、掴まれそうになった手を振りほどいた。
ハッとして、首を振って、笑顔を見せた。
「……ううん。
私は、大丈夫です!
探しに来てくれて、ありがとうございます」
今、理央先輩を振り払っちゃ、ダメなんだ。
亜貴が、そう言っていた。
理央先輩が、寂しがり屋なんて、信じがたいけど。
「……私は、傷付いても、いいんです。
亜貴のこと、信じてます。
先輩の、幼馴染ですしね!」
亜貴を、信じてる。
今は、亜貴の言う通り、理央先輩のそばにいよう。
だから、お願いします、神様地蔵様朧様。
うまく、いきますように。
「じゅ……!」
オレから、唇にキスをした。
柔らかい、亜貴の唇。
ギュッと胸が締め付けられる気がした。
ゆっくり顔を離して、微笑む。
それなのに、頬からは、涙が溢れた。
「オレが、亜貴を幸せにする。
亜貴。
オレは、亜貴を信じてるよ。
亜貴が、好きだよ」
亜貴が、好き。
ちゃんと、言葉にして、どんなに否定されても、何度だって、言うよ。
亜貴が……好きだ。
何かを言おうと、口を開いて、また閉じて、ギュッと握り締めた震える拳をゆっくり開いて、亜貴は、オレを抱き寄せた。
伸びてくる手をただ呆然と目で追っていたオレは、抱き寄せられてハッと気付く。
「あ! 亜貴! 汗……!」
「うるさい」
ギュッと、痛いくらいの抱擁。
クソ! さっきはそう言って弾いたくせに……!
ほんの少しの時間なのに、長く感じた。
「……髪、伸びたな」
誤魔化すように、そう言って、後ろ髪を撫でられた。
「うん」
「上履きだし」
「あ、忘れてた……!」
「ドジ……どんだけ走ったの?」
「学校裏の病院とか、駅近くの病院とか、探し回って……」
「バカだな」
「わ、分かってるよ! 言われなくても!」
「人に見られてる中でキスまでされて、追い返すわけにもいかねーじゃんか」
「えっ……?」
言われて初めて看護師や近くに座る患者たちに気付き、顔の熱が一気に上昇した。
みんな視線をこちらに向けていて、注目されている。
ニヤけているさっきの老人が目に入って、ハッと我に返った。
「ちょっ、も、分かったから! 離せよ!!」
引き離そうにもビクともしない。
こいつ……!
わざとだな……!
「…………と」
「え?」
ふと耳元に声がして、顔を向けようとするも、ギューッと顔を首筋に埋められてしまった。
「……俺、また間違えた。
でも、純がいたから、今回は歯止めがきいたんだと、思う」
「歯止め?」
コクリと、亜貴は頷く。
「そ、そういえば、犯人、は……」
「返り討ちで瀕死の重軽傷。
今各々処置中」
「あ、そういうこと……」
噂が巡り巡って、亜貴が出血してるって話になったのか。
歯止めが効いた、とは、そのことなのだろう。
「亜貴が血まみれって聞いてたから……無事でよかった」
「どこ情報だよ」
「さ、さぁ? 健斗が聞いたみたいだけど」
「あいつか、盛ったな」
告げ口みたいになってごめん健斗、と思いながら、今までと同じような会話が出来ていることに、ホッとした。
「純。泣かせて、悪かった。けど、お前の気持ちにはまだ…応えられない」
「え?」
身体を離して、亜貴は真剣な表情を見せた。
「理央と、一緒にいて」
「あ、亜貴……!」
「あいつには、笑ってて。
かなりさみしがり屋だから。
俺から、話をする」
「わ、分かった……」
真意は分からない、けど。
亜貴は、きっと、ちゃんと考えてくれる、と、そう思った。
「京野さん」
スーツを身にまとった男が3人、自動ドアを通過して亜貴を呼んだ。
「誰……」
「刑事だよ。
治療も終わったし、ちょっと、行ってくる」
「えっ!? 逮捕とかじゃ、ない、よな……?」
亜貴はフッと笑った。
「正当防衛だから、平気。
もう、大丈夫だから」
オレの手をそっと握って、また優しい笑みを向けた。
「もう、間違えない」
「……うん」
亜貴の手が、離れて行く。
でも、今度は、大丈夫だと思った。
「純ちゃん!」
先輩の声がして、完全に気の抜けていた頭が覚醒する。
亜貴の腰掛けていたところに座って休んでいたら、だいぶ時間が経っていたようだ。
「心配したんだよ!?
荷物はあるけど本人いないし、ずっと帰ってきてないって言われて…!」
「……ごめん、なさい。
ご心配おかけしました」
「……亜貴に、何か言われた?」
ハッとして、顔を上げる。
理央先輩は、今にも泣きそうな顔でオレを見ていた。
「だから、亜貴は危ないんだって!!
さっき先生がいて、しばらく停学処分だって……」
「えっ……」
そんな話、亜貴は言ってなかった。
もしかして、さっき決まったのだろうか。
「家に入って来た暴力団を返り討ちにしたんだとか。
ヤバいヤツらに目をつけられてんだよ!
亜貴の近くにいたら、純ちゃんが傷付く……」
思わず、掴まれそうになった手を振りほどいた。
ハッとして、首を振って、笑顔を見せた。
「……ううん。
私は、大丈夫です!
探しに来てくれて、ありがとうございます」
今、理央先輩を振り払っちゃ、ダメなんだ。
亜貴が、そう言っていた。
理央先輩が、寂しがり屋なんて、信じがたいけど。
「……私は、傷付いても、いいんです。
亜貴のこと、信じてます。
先輩の、幼馴染ですしね!」
亜貴を、信じてる。
今は、亜貴の言う通り、理央先輩のそばにいよう。
だから、お願いします、神様地蔵様朧様。
うまく、いきますように。
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