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亜貴の本性…理央のホント

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『明日、大事な話があります』

そう連絡して、『わかった』と返事が来たのは早朝だった。
もう寝ていたのだろうか?
それとも、雰囲気で察して、泣いたり、してたのだろうか?

「おはよう純ちゃん」
「おはよう、ございます」

朝練の無い朝。
静かな体育館の隅の、桜の木の前。
オレは、逃げずに向き合うことを決めた。

「理央先輩、ごめんなさい!
私、これ以上先輩とは付き合えません」

拳を握って、深く頭を下げた。

「別れて、ください」

強く風が吹いた。
隙間のように出来ているこの空間を突き抜けて、ボーッと高い音を立てた。
まるで風に批判されているような気がした。

「…顔、あげなよ、純ちゃん」

そう言われて、ゆっくり顔を上げる。
理央先輩は、眉根を寄せて、寂しそうに笑った。

「ちょっとだけ、昔話してもいい?」
「え?」
「大事な話なんだ。知ってて欲しい。亜貴のこと」


***


ピンポーン……

こんな朝から……誰だ?

理央、か?

寝起きの悪い俺は、何の気なしに玄関の扉を開けた。

「京野亜貴くん?」

……誰だ?

理央じゃ、ない。

5人。

だが、1人は、見覚えがあった。

こいつは、純に絡んでいた……この前の不良。

「……違う」

扉を閉めようとしたところを、グッと指で押さえられる。

「いや、そうだね。
潮彩シオサイ高校の京野でしょ?」
「っ……!」

何人かが扉を掴んでこじ開け、家に入って来た。

「押えろ!」

手慣れた動きで背後に回り、腕を2人に掴まれ、グッと床に押さえ付けられる。
キリストの気分だと呑気に思った。

膝をついたところで、ボス気取りのグラサン男が俺の髪を掴んだ。

「……目的は?」
「その前に、弱っててもらおうか」

強い衝撃で視界が回る。
頬に痛みを感じたのは、男が離れてからだった。

男を目で追うと、入れ替わるように前に出て来た2人の男。

肩には、バッド。

随分用意周到だな。

「……弱い奴ほど群れるよな」

フッと、笑みが溢れる。

「んだとてめぇ!」
「強がってんじゃねーぞ!」

火に油を注ぐとは、まさにこのことだと、1人で納得する。

目を閉じて、現実から逃避する。

純……。

頬を赤らめて、怒りながら笑う、素直じゃない純を、思い出す。

あの顔、もう一回見たいな。

困らせて、やりたい。


でもこれは……その報いだ。
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