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96.男の独占欲
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「……何を隠してる?」
「え……?」
暫く読めない表情で見つめられて緊張が走る中、やっと口を開いたかと思えば、部長は目を細めて吐息を吐く。
「この部屋、アイツの匂いがする。
お前が出社した時も、僅かに感じた」
「っ……!」
アイツ、と言われて、初めて理解する。
この部屋に来たのは、部長を除いて1人しかいない。
鼻の良い部長はきっと、出社した時から気づいていたんだ。
私の微妙な変化にも。
「気付かないとでも思ったか?」
黙っていると、部長は残念そうに眉根を寄せ、また少し顔を近づける。
ビクッと、身体が呼応した。
部長が聞きたいことはなんとなく分かっている。
いくらトロいとか鈍感だとかと言われていても、それくらい想像がつく。
隠し事があるから、特に。
「……レオに、何かされたか」
「いえ、何も……」
早くに返事を返すと、部長はギュッと絡めた指を握る。
「見たところ外傷は無さそうだが、今日のお前は顔色が悪い。
脅されてるのか?」
「ち、違う……」
「……言いたくないなら、それでもいい」
目を背けていると、部長はまた小さく吐息をついて目を閉じたのが分かった。
何か、諦めたかのような…。
と思った時。
部長の指が、スルスルと私のシャツのボタンを外し出した。
ハッとして目を向けると、鼻を擦り付けるかのようにーーまるで甘える猫のようにーー首筋にキスが降りてくる。
心臓が、ドクンと大きく高鳴った。
それは、まずい。
また、脱がされる…!
「っ…部長…!」
離れようとする私の肩を強く押さえつけて、部長の大きな腕が背中を回って私をギュッと抱き寄せる。
震えている…そんな感じがして、私の胸の奥がギュッと痛んだ。
「……今は、聞きたくない」
「え……っ!」
聞きたくないって……どういう意味?
と考える間もなく、部長の指がシャツの襟をなぞり、また首筋を舌が這う。
途端にゾクゾクと震えて、鈍感な私でも1つの仮説に辿り着いた。
これはありがちなやつだ。
部長のこの感じは…所有欲。
少女漫画でよく、独占欲の強い男の子が別れようとする女の子を押し倒すシーンがある。
最後に、と言うセリフから始まったり、時には“また愛し合えば考えを改めてくれるかもしれない”という自己肯定感で行動に出たりしていた。
部長はいつも、私に気を遣ってくれてたし、無理矢理なことはしないように丁寧に扱ってくれていたように思う。
でも今は違う。
部長のこれは、まるでそれなのだ。
「っ……痛っ……!」
思考をまとめている間に、首筋に強い痛みが走って、思わず手を当てようとしても身動きは取れず、リップ音がして初めて何をされたか理解した。
「……今日は、遠慮しない」
そう蚊の鳴くような声で囁いた部長の吐息に、身体が震えた。
キラリと光る金色の瞳の主人は、切なげに眉を潜めていた。
私との終わりを本能的に悟ったのだろうか。
そこにいたのは、部長でも吸血鬼でもなく、ただの男だった。
「え……?」
暫く読めない表情で見つめられて緊張が走る中、やっと口を開いたかと思えば、部長は目を細めて吐息を吐く。
「この部屋、アイツの匂いがする。
お前が出社した時も、僅かに感じた」
「っ……!」
アイツ、と言われて、初めて理解する。
この部屋に来たのは、部長を除いて1人しかいない。
鼻の良い部長はきっと、出社した時から気づいていたんだ。
私の微妙な変化にも。
「気付かないとでも思ったか?」
黙っていると、部長は残念そうに眉根を寄せ、また少し顔を近づける。
ビクッと、身体が呼応した。
部長が聞きたいことはなんとなく分かっている。
いくらトロいとか鈍感だとかと言われていても、それくらい想像がつく。
隠し事があるから、特に。
「……レオに、何かされたか」
「いえ、何も……」
早くに返事を返すと、部長はギュッと絡めた指を握る。
「見たところ外傷は無さそうだが、今日のお前は顔色が悪い。
脅されてるのか?」
「ち、違う……」
「……言いたくないなら、それでもいい」
目を背けていると、部長はまた小さく吐息をついて目を閉じたのが分かった。
何か、諦めたかのような…。
と思った時。
部長の指が、スルスルと私のシャツのボタンを外し出した。
ハッとして目を向けると、鼻を擦り付けるかのようにーーまるで甘える猫のようにーー首筋にキスが降りてくる。
心臓が、ドクンと大きく高鳴った。
それは、まずい。
また、脱がされる…!
「っ…部長…!」
離れようとする私の肩を強く押さえつけて、部長の大きな腕が背中を回って私をギュッと抱き寄せる。
震えている…そんな感じがして、私の胸の奥がギュッと痛んだ。
「……今は、聞きたくない」
「え……っ!」
聞きたくないって……どういう意味?
と考える間もなく、部長の指がシャツの襟をなぞり、また首筋を舌が這う。
途端にゾクゾクと震えて、鈍感な私でも1つの仮説に辿り着いた。
これはありがちなやつだ。
部長のこの感じは…所有欲。
少女漫画でよく、独占欲の強い男の子が別れようとする女の子を押し倒すシーンがある。
最後に、と言うセリフから始まったり、時には“また愛し合えば考えを改めてくれるかもしれない”という自己肯定感で行動に出たりしていた。
部長はいつも、私に気を遣ってくれてたし、無理矢理なことはしないように丁寧に扱ってくれていたように思う。
でも今は違う。
部長のこれは、まるでそれなのだ。
「っ……痛っ……!」
思考をまとめている間に、首筋に強い痛みが走って、思わず手を当てようとしても身動きは取れず、リップ音がして初めて何をされたか理解した。
「……今日は、遠慮しない」
そう蚊の鳴くような声で囁いた部長の吐息に、身体が震えた。
キラリと光る金色の瞳の主人は、切なげに眉を潜めていた。
私との終わりを本能的に悟ったのだろうか。
そこにいたのは、部長でも吸血鬼でもなく、ただの男だった。
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