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71.両親から見たらやっぱり

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「まだ2ヶ月の出会いだものねぇ~。
そりゃマリッジブルーにもなるわ~」

「……やっぱり、良くないと思う?」

  たった2ヶ月で結婚することはという意味で、恐る恐る尋ねると、母は両頬に手をついてテーブルに肘をつき、身体を乗り出した。

「フフッ。
私はあなた達が幸せならそれでいいと思うわよ。
お互いの意思でここに来たんでしょうし」
「う、うん。そりゃ、まぁ……」

  確かに、意思が合わなければ普通婚約の挨拶になんて来ないよね…。
  その点は合意の上だから、疑いようがないだろう。

「でもまさか、男嫌いな凛が結婚とはねぇ~」
「え、男嫌い?」

  いったいいつからそんな設定になったのだろうと首を傾げると、母はまた口を開いた。

「昔から男の子とはほとんど口聞かなかったし、中学も高校も大学も、全く男の気配を感じさせなかったじゃない?
もう一生独身を貫くんじゃないかって、ちょっと心配してたわ。
それがこんな短期間でなんて…人生何が起こるか分からないわね」

「お、男の、気配……」

  確かに、今までほとんど男子との交流というものはなく、特に用事も無ければ話すこともなかった。
  意識したこともあまりないし、よって好きな人がいたこともない。

  恋愛ドラマや漫画はよく見ていたくせに、リアルの男の子に関心は無かったのだ。

  ……もしかして私って、三次元無理な女子だったの?

「まるで、一華さんに出逢うのを待ってた、みたいじゃない?」

  ドクン……。
  母の瞳がキラリと光ったのと同時に、自分の心臓が大きく高鳴ったのが分かった。
  無意識に、息を飲む。
 
「い、いや、そんなことは無いと思うよ?
私がリアル男子に興味が無かったのはめぼしい人が居なかったから、だろうし、私も自分のことばかりで周りに興味が無かったっていうか……!
あの、一華さんに対してそんな異常な感情とかは、そんな無いし、普通っていうか、あの、運命感じるとかそういうのも無い、しーー」
「でも、好きなんでしょ?」

  ニコッと目尻を下げて小首を傾げて笑う母に、言葉が詰まった。
  何も、言い返す言葉が無い。

  好きじゃないが正解で、好きだというのは嘘で。
  きっとどちらで返しても、この取り乱しかけた私の口から漏れるものなど、母にはお見通しだろう。
  言葉に詰まって口を紡いだ姿を見て、いやそれ以前に、とっくに何か勘付いているに違いない。
  男性付き合いの無い娘が、出会ってたった2ヶ月で結婚する相手との関係性を普通だと答えるのも、どう考えてもおかしい。

  それこそ、妊娠でもしてるんじゃ無いかと疑われても……おかしくない。

  気付かないうちに握りしめた手のひらが汗ばんでいる。
  心拍も早くて、少し息がしづらい。
  頬が、火照っている。

  なんでこんなに、冷静で居られなくなっているのだ私。

  両親には、心配をかけたくなくて、あのドラマのように泣かせたくなくて。
  だから私のこの婚約に不安を持たせたくないと、思っていたのに……。

  これならいっそ、正直に、話してしまった方がいいのかもしれない。

  嘘をついて、幸せになれる気がしない。
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