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40.最後まで付き合ってあげますよ!
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「もう…ホント強引ですね」
先に来ていた水を少し飲みながら部長を睨む。
「俺たちも昼休憩なんだ。
悩んでる時間なんかねーだろ」
そう言って、早めに運ばれてきたコーヒーのカップを手に取る部長は、どこからどう見てもエリート社員なのだが。
なんで偵察紛いに私を連れて来たのか、疑問でしかなかった。
どうせなら城島さんを誘って、2人でお別れ会でもすればいいのに。
今日みたいに普通に話せるなら、そしたらあの時みたいに寂しい顔してキスすることも、無いだろうにーー。
「やっぱよく出来てるな、ここは」
「え?」
いつの間にか自分の手元まで視線を下ろしていたらしい私はハッと目を上げた。
部長は窓際の壁を手のひらでそっと撫でると、遠くの天井を見上げた。
「木材といい、この空間の作り方といい…取引しがいのある相手だ。
元は大して広くない場所だが、中に入った時の方が広く見えるだろ?」
「確かに…あんまり入り口からは広く感じませんでしたね」
そう言われればそうなのだが、何が普通と違うか分からない。
確かにビルの中とはいえ光の入った明るいお店だと思うが、それ以上に何か違うのだろうか。
「素材の材質もそうだが…さすがにお前には分からねーよな。
例えばこの床の色。
かなり濃い茶色だろ?」
「はい……」
「壁はクリーム色に近い白、天井は完全な白だ。
そして横長のこの空間だが、そこの向かい合った面だけ薄めの青緑で塗られてる」
そう言って指差すのは、長方体の一番面積が少ない端と端の壁だった。
それだけを聞いてもやっぱり訳がわからないが。
「えっと、つまり…?」
「……はぁ。
いや、なんでもない」
「は!?」
そこまで言っておいて説明止めるの!?
私真面目に聞いてたのに!
「いや…勢いで話したけど、興味ねーだろ。
お前は事務だし、元々俺に付き合わせてるだけだし。
聞きたくもねー話聞かせてこれ以上嫌われるのも後々面倒だからな」
そう言って目を逸らし、コーヒーを啜る部長にムッとする。
確かに、部長のことは嫌いというか、まず好きではない、のだけど!
「ええそうです。付き合わされてここにいる訳です、が。
どうせ強引に付き合わされるならとことん付き合ってあげますよ!
意味分かんなくてもいいですから、言いたいことは言ってみてくださいっ。
むしろ、そんな中途半端に止められたら気になっちゃうじゃないですか!!
話しても理解できないって言われるのかと思いましたよ…もう……」
ゴニョゴニョと最後に付け足し、二度目の水を口に運んだ。
胸がモヤモヤする割に、心臓はドキドキする。
なんでこう、部長に対してはヤケになってしまうのだろう……?
チラッと視線を前に移すと、部長は少し目を見開いていたが、私の視線に気付いてフッと表情を緩めた。
なんとなく、嬉しそうに口角を上げて。
「……そうか。
まぁ、ここじゃ資料が無いから、後でじっくり説明してやるよ。
ちゃんと最後まで付き合えよ?」
う……嬉しそうなんじゃない、悪魔の微笑みだった。
咽せ返りそうになったが、自分の失言を撤回をするわけにもいかない(というか、絶対聞き入れられない)ので、ゴクリと水を飲み込んだ。
「っ、はい、覚悟しておきます」
と返事をしておいた。
付き合うと言ってもこれは仕事に関わることだから……セーフ、だよね?
先に来ていた水を少し飲みながら部長を睨む。
「俺たちも昼休憩なんだ。
悩んでる時間なんかねーだろ」
そう言って、早めに運ばれてきたコーヒーのカップを手に取る部長は、どこからどう見てもエリート社員なのだが。
なんで偵察紛いに私を連れて来たのか、疑問でしかなかった。
どうせなら城島さんを誘って、2人でお別れ会でもすればいいのに。
今日みたいに普通に話せるなら、そしたらあの時みたいに寂しい顔してキスすることも、無いだろうにーー。
「やっぱよく出来てるな、ここは」
「え?」
いつの間にか自分の手元まで視線を下ろしていたらしい私はハッと目を上げた。
部長は窓際の壁を手のひらでそっと撫でると、遠くの天井を見上げた。
「木材といい、この空間の作り方といい…取引しがいのある相手だ。
元は大して広くない場所だが、中に入った時の方が広く見えるだろ?」
「確かに…あんまり入り口からは広く感じませんでしたね」
そう言われればそうなのだが、何が普通と違うか分からない。
確かにビルの中とはいえ光の入った明るいお店だと思うが、それ以上に何か違うのだろうか。
「素材の材質もそうだが…さすがにお前には分からねーよな。
例えばこの床の色。
かなり濃い茶色だろ?」
「はい……」
「壁はクリーム色に近い白、天井は完全な白だ。
そして横長のこの空間だが、そこの向かい合った面だけ薄めの青緑で塗られてる」
そう言って指差すのは、長方体の一番面積が少ない端と端の壁だった。
それだけを聞いてもやっぱり訳がわからないが。
「えっと、つまり…?」
「……はぁ。
いや、なんでもない」
「は!?」
そこまで言っておいて説明止めるの!?
私真面目に聞いてたのに!
「いや…勢いで話したけど、興味ねーだろ。
お前は事務だし、元々俺に付き合わせてるだけだし。
聞きたくもねー話聞かせてこれ以上嫌われるのも後々面倒だからな」
そう言って目を逸らし、コーヒーを啜る部長にムッとする。
確かに、部長のことは嫌いというか、まず好きではない、のだけど!
「ええそうです。付き合わされてここにいる訳です、が。
どうせ強引に付き合わされるならとことん付き合ってあげますよ!
意味分かんなくてもいいですから、言いたいことは言ってみてくださいっ。
むしろ、そんな中途半端に止められたら気になっちゃうじゃないですか!!
話しても理解できないって言われるのかと思いましたよ…もう……」
ゴニョゴニョと最後に付け足し、二度目の水を口に運んだ。
胸がモヤモヤする割に、心臓はドキドキする。
なんでこう、部長に対してはヤケになってしまうのだろう……?
チラッと視線を前に移すと、部長は少し目を見開いていたが、私の視線に気付いてフッと表情を緩めた。
なんとなく、嬉しそうに口角を上げて。
「……そうか。
まぁ、ここじゃ資料が無いから、後でじっくり説明してやるよ。
ちゃんと最後まで付き合えよ?」
う……嬉しそうなんじゃない、悪魔の微笑みだった。
咽せ返りそうになったが、自分の失言を撤回をするわけにもいかない(というか、絶対聞き入れられない)ので、ゴクリと水を飲み込んだ。
「っ、はい、覚悟しておきます」
と返事をしておいた。
付き合うと言ってもこれは仕事に関わることだから……セーフ、だよね?
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