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28.私エロい顔なんてしてないです!
しおりを挟む「あー……あぶねー……」
「ふぇ?」
自分の阿呆な声に、ハッと意識が覚醒した。
また、あの催眠術……!
油断も隙もない!!
部長は先ほどよりも深いため息をついて、私の頭に顔を押しつけた。
「後少しでやるとこだった」
「きゅ……吸血、ですか?」
また変な刺激になるのが嫌で、身体を固めたまま確認する。
血を吸いたい欲求というのは少なからずあるのだろう。
いくら私の血を吸わないからって……いや、私の血を吸うと私を縛ることになるって言ってたよね?
でもきっと生きる為には血を吸わなくちゃいけないんじゃないの?
杉村部長は、誰の血を吸ってるの?
もっと他の誰かとも刻印していて、実は結婚している、とか?
その辺、どうなってるんだろう?
「お前さ……相当ウブだろ」
「え? なんでそうなるんです?」
いや、確かに恋愛経験ゼロではありますけど。
「男がやるって言ったら、1つしかねーよ」
「えっと……」
部長はククッとくぐもった笑い声を漏らした後、私の前髪をガバッと上に持ち上げて顔を覗き込んできた。
それはもう、楽しそうに黒い瞳を輝かせて。
「エロいこと」
「は……は……はあ!?」
はいそうですかと納得しかけて、いや待ておかしいと思考が止まり、そして最後にようやく意味を理解した、三段階の返事になった。
「普通この状態でヤんない方がおかしいっての。
バスタオル一枚で身体重ねてんだぞ?
しかも可愛いこと言って……誘ってんじゃねーかと思った」
「さ、誘う!?
私がいつ、誘ったんですか!!」
「誘ってるだろ、常に」
流れるようにまた顔を近づけて来たかと思えば、顎に手を置かれ、唇をなぞられる。
少し温かいその指先が触れると、ビリビリと快感が沸き起こった。
触られた、だけなのに。
やっぱり、おかしい。
「や、めて…ください」
「そんなエロい顔して言われても、嫌がってるようには見えないんだよな」
甘いなめらかな囁きが唇に響く。
まただ。
また、逆らえない。
この感じは、またキスされる…とギュッと目を閉じると、彼はピタッと動きを止めたのが分かった。
目を開くと、瞼を薄く開き、黒い瞳でジッと私を見つめていた。
薄く開いた唇で何を言うわけでもなく、ただ少し切ない瞳を揺らめかせて、心を見透かすように……。
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