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海と祭りと弾丸と

波打ち際で

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「はぁ……」

パーカーの帽子を被って、その日陰の中に籠るようにため息をつく。
レジャーシートの上は熱くて、なんだかフライパンの上に生きたまま置かれている気分だ。
鐘崎たちは海の中で楽しそうにビーチボールでトスを回している。
時折目が合うが、すぐ逸らされてしまう。
一体私は何を間違えてしまったのだろうか。
この水着が似合わなかったのだろうか。
正直、高校のスクール水着までしか着たことが無かったから、莉奈さんにお願いして選んでもらったものだ。
私のセンスでは無かったけど、凄く可愛くて気に入っていた。
鐘崎に見せたらどんな顔をするかなと思ったら、あんな風に逸らされて、何故か怒られて……。
しかも隠されて。
鐘崎のパーカーという点ではプラスだけど、なんだか、切ない。
海に来たのも小学生の時以来だ。
久々の海を前に、胸が痛む。
私、今日の海を結構楽しみにしていたんだなぁと、気付いた。

「いやぁ~若いわねぇ。
あたしにはあんな時代無かったわぁ」
「えー意外ですね。
そんな年変わらなそうですけど」
「美容にはこだわってるからね。
これで30行ってるのよ?」
「え、マジですか。
それはビックリ」

麦わら帽子にサングラスをかけ、のんびりと日光浴しながら、ドリンクを飲む莉奈さんと、それに倣うように横になっている安形。

……なんで安形もいるのだ。

莉奈さんがいるからか、特に鐘崎が介入してくる様子もないし、別にいいんだけど。
鐘崎がああ言ったのは安形と合わせたくないからだと思う、けど……。
一体、あの時何を言われたんだろう?

「テルくんだっけ?
あたしを口説いても無駄よ?
あたしには想い人がいるから」
「そうなんですかぁ。
まぁこうも綺麗な人に想い人は付き物ですよね。
でも、そこを崩すのが楽しかったりしますけど」

そう言って、チラッと私を見る。
私に言ってるのか。
確かに、鐘崎には本命の想い人がいて、それを崩そうとしてるようなものだけど……。

「何それ、秦ちゃんに言ってる?」

予想以上に早く莉奈さんが反応して、身体を起こしてサングラスを取った。
安形はフフッと笑う。

「莉奈さん、勘が鋭いですねぇ。
まぁ、恋愛は自由ですからね」
「……あんまり、好ましくないと思うけど?
分かっててやる気なんでしょ?」

……途中から全く分からなくなった。
含みが多過ぎるというか、何を差しているのか分からないというか…。

「だって愛華ちゃん超ピュアなんですもん。
面白味がありますよ」
「はぁ…飽きれた坊やだこと」
「2人とも、何を言ってるんですか?」

流石に分からなすぎて、尋ねると、莉奈さんは首を振った。

「なんでもないよ。
秦ちゃん、まだ海入ってないでしょ?行きましょうか!」
「あ、でも荷物……」
「俺が見てるから、行っといで?」

フフッと笑顔を見せる安形。
この笑顔、全く信用できないが、仕方ない。

「……何も悪さしないでくださいね?」
「しないよ。
行っといで?」
「ほら、行こうよ秦ちゃん!
海が待ってるわよー!」

さっきの一触即発の空気から一転して、莉奈さんは行く気満々だった。
こういう莉奈さんは、子供のようにときめいて可愛い。

「はい、行きましょう」

莉奈さんに連れられるまま、波打ち際に向かった。
微笑む安形に手を振られて。
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