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海と祭りと弾丸と
交友
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「おはよー秦ちゃん!
と!おおー!!」
「おはようございます」
「おはようございます、えっと…」
鐘崎が私を見たので、そういえばと仲介に入る。
「バイトの先輩の、高嶋莉奈さん」
「莉奈です!
そういえばこうして会うのは初めてだよね?
よろしくねぇ!」
莉奈さんはニコッと子供のように笑った。
鐘崎がほんの少し目を見開く。
「ああ、あの……雰囲気とか変わってて気付きませんでした。
よろしくお願いします、高嶋さん」
「いいよ名前で!
えっと、栄ちゃんって、本名は……」
「あ、栄司です。
鐘崎 栄司」
「分かった、栄司くんね!
よろしく」
「よろしくです」
丁寧に頭を下げる鐘崎と、手を振る莉奈さん。
なんだか、スムーズな自己紹介に、少し関心してしまった。
そういえば、莉奈さんの私服なんて、ちゃんと見たことが無かったな……。
今日はタンクトップに細めの白い七分袖パンツ。
いつもと違い、下ろしたキャラメル色の髪の隙間から、首に紐が見えていて、もうすでに下は水着なのかな?
そういえば、鐘崎と2人で時間ギリギリまで寝ちゃってて忘れてた。
まぁ、向こうで着替えれば、いっか。
「で、集合場所はこの駅のどこのバス停?」
「あっちの高速バスの前です。
行きましょうか」
2人と一緒に、荷物を持って歩き出す。
この2人が一緒なのは、少し心強いなぁと思った。
***
「へぇーやっぱいい男じゃん」
「何がですか?」
高速バスは思いの外他の客も多くて、私と莉奈さんは他のサークルの人と離れて座った。
鐘崎たちグループは一番奥の5人席でワイワイしている。
私たちは先頭の2人席だ。
でも、それがちょうど良かった。
昨日の夜話せなかった話が出来たから。
「栄司くんよ。
結構人気あるみたいだし……」
「そうですね。
人気者だと思います」
振り返りはしなくても、食堂でのことを思い出せば、間違いなく鐘崎は人気がある。
当たり前のようにボディータッチされていたり、時折あのメンバーとは違う女子から声をかけられたり。
結構顔が広いみたいだし、人気はあるのだろう。
よくよく考えれば、何故鐘崎が私のような女を構うのか、分からない。
私と関わる前から、女には困らなかっただろうに……。
何故、私と関係を持とうと思ったのだろう?
私を好きだと言ったのは、ただの冗談だとか、都合のいい言葉として使ったのだろうとか思っていたけど……。
『俺は、秦さんと離れたくない。
誰かに取られるのも、嫌だ』
『愛華……』
『好きのキス』を思い出して、不自然にならないように、唇に触れる。
鐘崎は、あの頃どういう想いであのキスをしたのだろう?
今、またあのキスをするのは、何故なのだろう?
何にも、分からない。
「それで、待つことに決めたんだ」
「はい」
「まぁ、他の男だとアレだけど、栄司くんならねぇ……」
「え?どういう意味……」
「あ、いや、なんでも!
てか、もうホントさ、秦ちゃんからは幸せオーラが滲み出てるっていうか…あー恋してるなぁーって……。
いいなぁ。
あたしも青春したいわー」
「でも、店長のこと好きなんですよね?」
思ったことをそのまま口に出して、あっと思った。
莉奈さんは目を丸くして、徐々に赤く染まっていく。
「なっ!な、なんでそう思うの?」
「違いますか?」
「い、いえ、違ってないですけども……」
困った顔をして、ため息をついて、それから指先を見つめる莉奈さん。
「でもね、ダメなのよ。
店長には本気にされてないっていうか、遊ばれてるのよね。
あたしが何を言おうが、笑って誤魔化されるだけだわ」
「それは、告白したってことですか?」
「で、出来ないわよそんなの!
バイトだって気まずくなるし、さすがにそれは……」
「……確かに店長、惚けてるところありますけど、ちゃんと見てると思いますよ。
不確かなことは、言えないですが……それは見てて分かります。
それに、私は店長と莉奈さんの会話、好きです」
真面目に伝えているつもりだが、莉奈さんは苦笑いした。
「そう…でも、それ以上なんて、中々なれないものよ?
あたしと店長は言い争う枠で収まってるし……」
「莉奈さんが店長とどうなりたいかじゃないですか?
枠を越えるのは、自分次第だと思います。
当たって砕けても、自分が気が済むまで頑張ってみればいいじゃないですか。
その方が、莉奈さんらしいです」
莉奈さんらしい、と言った自分に驚く。
莉奈さんのことはバイトのことしか知らないし、私の話題を追求されるばかりで莉奈さんの話はしたことない。
でも、莉奈さんらしいと思ったのだ。
「あたしらしい…か……うん、ありがとう秦ちゃん」
莉奈さんは落ち着いた笑顔を見せた。
決心がついたのか、とても大人な、優しい笑顔だった。
私の言葉で、何かが変わったのだろうか?
それもまた、不思議だった。
「さて!
着くまでお菓子パーティーしましょうか!」
「え、今から食べるんですか?お腹出ません?」
「えっ、秦ちゃん意外と気にするタイプ?
かわい~!!」
「あ、いや、その……」
朝食を抜いたけど、少しだけお菓子を食べるとお腹が満たされて、こういうのも悪くないかなと思った。
楽しい遠足のような、子供のような気分に、少しだけ、ワクワクした。
と!おおー!!」
「おはようございます」
「おはようございます、えっと…」
鐘崎が私を見たので、そういえばと仲介に入る。
「バイトの先輩の、高嶋莉奈さん」
「莉奈です!
そういえばこうして会うのは初めてだよね?
よろしくねぇ!」
莉奈さんはニコッと子供のように笑った。
鐘崎がほんの少し目を見開く。
「ああ、あの……雰囲気とか変わってて気付きませんでした。
よろしくお願いします、高嶋さん」
「いいよ名前で!
えっと、栄ちゃんって、本名は……」
「あ、栄司です。
鐘崎 栄司」
「分かった、栄司くんね!
よろしく」
「よろしくです」
丁寧に頭を下げる鐘崎と、手を振る莉奈さん。
なんだか、スムーズな自己紹介に、少し関心してしまった。
そういえば、莉奈さんの私服なんて、ちゃんと見たことが無かったな……。
今日はタンクトップに細めの白い七分袖パンツ。
いつもと違い、下ろしたキャラメル色の髪の隙間から、首に紐が見えていて、もうすでに下は水着なのかな?
そういえば、鐘崎と2人で時間ギリギリまで寝ちゃってて忘れてた。
まぁ、向こうで着替えれば、いっか。
「で、集合場所はこの駅のどこのバス停?」
「あっちの高速バスの前です。
行きましょうか」
2人と一緒に、荷物を持って歩き出す。
この2人が一緒なのは、少し心強いなぁと思った。
***
「へぇーやっぱいい男じゃん」
「何がですか?」
高速バスは思いの外他の客も多くて、私と莉奈さんは他のサークルの人と離れて座った。
鐘崎たちグループは一番奥の5人席でワイワイしている。
私たちは先頭の2人席だ。
でも、それがちょうど良かった。
昨日の夜話せなかった話が出来たから。
「栄司くんよ。
結構人気あるみたいだし……」
「そうですね。
人気者だと思います」
振り返りはしなくても、食堂でのことを思い出せば、間違いなく鐘崎は人気がある。
当たり前のようにボディータッチされていたり、時折あのメンバーとは違う女子から声をかけられたり。
結構顔が広いみたいだし、人気はあるのだろう。
よくよく考えれば、何故鐘崎が私のような女を構うのか、分からない。
私と関わる前から、女には困らなかっただろうに……。
何故、私と関係を持とうと思ったのだろう?
私を好きだと言ったのは、ただの冗談だとか、都合のいい言葉として使ったのだろうとか思っていたけど……。
『俺は、秦さんと離れたくない。
誰かに取られるのも、嫌だ』
『愛華……』
『好きのキス』を思い出して、不自然にならないように、唇に触れる。
鐘崎は、あの頃どういう想いであのキスをしたのだろう?
今、またあのキスをするのは、何故なのだろう?
何にも、分からない。
「それで、待つことに決めたんだ」
「はい」
「まぁ、他の男だとアレだけど、栄司くんならねぇ……」
「え?どういう意味……」
「あ、いや、なんでも!
てか、もうホントさ、秦ちゃんからは幸せオーラが滲み出てるっていうか…あー恋してるなぁーって……。
いいなぁ。
あたしも青春したいわー」
「でも、店長のこと好きなんですよね?」
思ったことをそのまま口に出して、あっと思った。
莉奈さんは目を丸くして、徐々に赤く染まっていく。
「なっ!な、なんでそう思うの?」
「違いますか?」
「い、いえ、違ってないですけども……」
困った顔をして、ため息をついて、それから指先を見つめる莉奈さん。
「でもね、ダメなのよ。
店長には本気にされてないっていうか、遊ばれてるのよね。
あたしが何を言おうが、笑って誤魔化されるだけだわ」
「それは、告白したってことですか?」
「で、出来ないわよそんなの!
バイトだって気まずくなるし、さすがにそれは……」
「……確かに店長、惚けてるところありますけど、ちゃんと見てると思いますよ。
不確かなことは、言えないですが……それは見てて分かります。
それに、私は店長と莉奈さんの会話、好きです」
真面目に伝えているつもりだが、莉奈さんは苦笑いした。
「そう…でも、それ以上なんて、中々なれないものよ?
あたしと店長は言い争う枠で収まってるし……」
「莉奈さんが店長とどうなりたいかじゃないですか?
枠を越えるのは、自分次第だと思います。
当たって砕けても、自分が気が済むまで頑張ってみればいいじゃないですか。
その方が、莉奈さんらしいです」
莉奈さんらしい、と言った自分に驚く。
莉奈さんのことはバイトのことしか知らないし、私の話題を追求されるばかりで莉奈さんの話はしたことない。
でも、莉奈さんらしいと思ったのだ。
「あたしらしい…か……うん、ありがとう秦ちゃん」
莉奈さんは落ち着いた笑顔を見せた。
決心がついたのか、とても大人な、優しい笑顔だった。
私の言葉で、何かが変わったのだろうか?
それもまた、不思議だった。
「さて!
着くまでお菓子パーティーしましょうか!」
「え、今から食べるんですか?お腹出ません?」
「えっ、秦ちゃん意外と気にするタイプ?
かわい~!!」
「あ、いや、その……」
朝食を抜いたけど、少しだけお菓子を食べるとお腹が満たされて、こういうのも悪くないかなと思った。
楽しい遠足のような、子供のような気分に、少しだけ、ワクワクした。
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