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『ほっと・ちょこれいと逃避行』

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 岳さんが上半身を起こして、動き出そうとした。その瞬間、思い出したようにてーぶるの上に視線をやる。そこには、『ほっと・ちょこれいと』のかっぷが置いたままだった。

「そういえば、口を吸ってる間もずっと甘かったんです」
「……?」
「これ、美緒に塗ってもいいですか?」
「えっ」

 何を言っているのか理解できないまま、岳さんはその杯を手に取った。手のひらに、少量のちょこれいとを垂らして、それを私の胸に撫でつける。少しぬるくなっているけれど、冷たくはなかった。

「や、んっ……」
「おいしそう……」

 岳さんが腰をゆるゆると動かし、同時に私の胸に塗ったちょこれいとを舐め始めた。未だかつて見たことのない非日常で破廉恥な光景と、胸と下腹部を襲う甘い痛みが、私の頭を混乱させていく。

「あっ、あっ……」
「痛かったら言ってくださいね?」
「だい、じょうぶ。気持ち、いっ……」
「よかった。私も、すごく気持ちいいし、甘くておいしいです」

 岳さんは、肌の上のちょこれいとを全て舐めとってしまった。その後も、肌のあちこちに吸いついては、赤い花を散らしていく。たまに口を吸ってくれて、気持ちよくて仕方がなかった。

「だ、だめっ……なんかっ、きちゃうっ……」
「いいですよ。そのまま身を任せてください」

 いつの間にか、あの大きい岳さんのものを、すんなり受け入れるようになっていた。奥の方を突かれると、脳天まで痺れが走る。

 岳さんの動きが激しくなって、私は目に涙を溜めながら、首を横に振った。これで、終わりだ。最初で最後の交わり。

「いやっ、岳さっ……あっ、ああぁぁっ!」
「っ……美緒っ」

 目の前がちかちかして、全身が痙攣する。これが絶頂を迎えるということなのだろうか。気付かぬうちに、岳さんは、己の欲を全て私の上に出していた。一瞬では何が起こったのか分からなくて、肩で息をしながらぐったりしていると、先に岳さんが我に返った。

「す、すみません! すぐに拭きますね」
「……いいの、待って」

 何かを取りに行こうとした岳さんを引き留めて、口吸いをねだった。岳さんは戸惑ったようだったけれど、すぐに応えてくれた。

「ありがとう。私のわがままに付き合ってくれて」
「いいえ、こちらこそ。お嬢様の初めてが自分で、とても嬉しいです」
「このまま、二人で逃げ出せたらいいのに……」

 ぽつりと、本音がこぼれた。
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