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愛を囁き合って
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秋彦さんと駐車場で別れ、私はホテルの部屋に向かった。泣きすぎたせいで、目が腫れて重たい。笑顔の練習をしながらカードキーを通し、中に入った。
「寧々」
「豪さん」
部屋には豪さんがいる。顔つきが、とても穏やかになっていた。
「寧々、どうだった? 事務所と話しできた?」
「うん! すごく迷惑掛けちゃって、解雇された。でも、ちゃんとけじめつけられて、ほっとしてる」
「そっか。頑張ったね。俺も婚約解消できたよ。梢と改めて話せた」
「え……ほんと? 梢さん、納得してくれたの?」
「うん」
梢さんが認めてくれるのは、数ヶ月、いやそれ以上かかるかと思っていた。もう、私たちは二人で堂々と一緒にいていいんだ。
じわりと実感が込み上げて、豪さんの胸に飛び込んだ。豪さんの腕が、強く抱きしめ返してくれる。
「よかった……本当によかった……」
「後悔してない?」
「全然! 豪さんがいてくれたら、何でも耐えられるし、ゼロからやり直せるから……」
「うん。俺もそう思ってた」
見つめ合って、キスをした。今はもう罪悪感も、背徳感もない。純粋で、愛に溢れた恋人同士のキスだ。そう思うと離れたくなくて、自分から舌を絡めて、深く口づけていった。
「はっ……寧々、積極的……」
「豪さん……大好き」
「俺も、愛してるよ」
角度を変え、何度も熱い舌を絡めた。腰が抜けるくらいに気持ちよくて、目に涙をためながら、必死で豪さんにしがみついた。このまま、溶けて一つになりたいくらいだ。
離れてはくっつき、きりがないキスを続けていたけれど、三十分ほど経った頃、さすがに疲れてしまった。
「っは……はっ……」
「寧々のえっち」
「も……からかわないで」
息を乱しているのは私だけで、豪さんは余裕たっぷりに笑った。私が照れながら見上げると、豪さんは一転して真剣な表情になる。何か大切なことを言おうとしている、そう分かった。
「寧々。誰も俺たちのことを知らないところに行って、二人で暮らそう」
「うわぁ……素敵。静かなところがいいな」
「田舎なら、のんびり暮らせるよ」
手が繋がれる。豪さんの大きな手が、私の手を包み込んだ。
「それで、一緒になろう。俺と、正式に籍を入れよう」
「……え! うそ……」
「うそじゃないよ。指輪はまだないけど……返事、もらえる?」
聞かなくても分かりきっているのに。豪さんは期待を込めた目で、私を見つめた。
「はいっ。お願い、します……」
プロポーズの言葉は、深く心に刻まれた。最愛の人から「結婚して欲しい」と言われる世の女性たちは、こんなにも幸せな気持ちを味わっているのだ。ドキドキするあまり、息が詰まりそうだった。
指と指を絡めて、もう一度キスをして、微笑み合って――ふと、豪さんが額を私の肩にぶつけて、呟いた。
「これが、『幸せ』ってやつ、か」
「うん……そうだね」
「それと、寧々。俺は大人の対応をしてきたつもりだけど、もう限界です……」
「え?」
顔を上げた豪さんの瞳は、潤んでいた。いつか見た欲情の熱がそこに見えて、また心臓が忙しなく動き始める。
「お預けって、いつまで?」
「えっ……えっと、その……」
「寧々がすごく可愛い反応をするから、抱きたくなった」
私だって豪さんに触れるのを我慢していたし、抱いてほしいに決まっている。だからといって、「はい、じゃあ今から解禁です」なんて、恥ずかしげもなく言えるわけがない。
返答に困って目を泳がせていると、豪さんは返事を急かすかのように太腿を触り始めた。
「えっ……ちょっ」
「触りたい」
「ま、待って!」
先にお風呂に入りたい――そう返事をしようとして、私は名案を思いついた。
「じゃあ、一緒に……お風呂入ろ?」
「寧々」
「豪さん」
部屋には豪さんがいる。顔つきが、とても穏やかになっていた。
「寧々、どうだった? 事務所と話しできた?」
「うん! すごく迷惑掛けちゃって、解雇された。でも、ちゃんとけじめつけられて、ほっとしてる」
「そっか。頑張ったね。俺も婚約解消できたよ。梢と改めて話せた」
「え……ほんと? 梢さん、納得してくれたの?」
「うん」
梢さんが認めてくれるのは、数ヶ月、いやそれ以上かかるかと思っていた。もう、私たちは二人で堂々と一緒にいていいんだ。
じわりと実感が込み上げて、豪さんの胸に飛び込んだ。豪さんの腕が、強く抱きしめ返してくれる。
「よかった……本当によかった……」
「後悔してない?」
「全然! 豪さんがいてくれたら、何でも耐えられるし、ゼロからやり直せるから……」
「うん。俺もそう思ってた」
見つめ合って、キスをした。今はもう罪悪感も、背徳感もない。純粋で、愛に溢れた恋人同士のキスだ。そう思うと離れたくなくて、自分から舌を絡めて、深く口づけていった。
「はっ……寧々、積極的……」
「豪さん……大好き」
「俺も、愛してるよ」
角度を変え、何度も熱い舌を絡めた。腰が抜けるくらいに気持ちよくて、目に涙をためながら、必死で豪さんにしがみついた。このまま、溶けて一つになりたいくらいだ。
離れてはくっつき、きりがないキスを続けていたけれど、三十分ほど経った頃、さすがに疲れてしまった。
「っは……はっ……」
「寧々のえっち」
「も……からかわないで」
息を乱しているのは私だけで、豪さんは余裕たっぷりに笑った。私が照れながら見上げると、豪さんは一転して真剣な表情になる。何か大切なことを言おうとしている、そう分かった。
「寧々。誰も俺たちのことを知らないところに行って、二人で暮らそう」
「うわぁ……素敵。静かなところがいいな」
「田舎なら、のんびり暮らせるよ」
手が繋がれる。豪さんの大きな手が、私の手を包み込んだ。
「それで、一緒になろう。俺と、正式に籍を入れよう」
「……え! うそ……」
「うそじゃないよ。指輪はまだないけど……返事、もらえる?」
聞かなくても分かりきっているのに。豪さんは期待を込めた目で、私を見つめた。
「はいっ。お願い、します……」
プロポーズの言葉は、深く心に刻まれた。最愛の人から「結婚して欲しい」と言われる世の女性たちは、こんなにも幸せな気持ちを味わっているのだ。ドキドキするあまり、息が詰まりそうだった。
指と指を絡めて、もう一度キスをして、微笑み合って――ふと、豪さんが額を私の肩にぶつけて、呟いた。
「これが、『幸せ』ってやつ、か」
「うん……そうだね」
「それと、寧々。俺は大人の対応をしてきたつもりだけど、もう限界です……」
「え?」
顔を上げた豪さんの瞳は、潤んでいた。いつか見た欲情の熱がそこに見えて、また心臓が忙しなく動き始める。
「お預けって、いつまで?」
「えっ……えっと、その……」
「寧々がすごく可愛い反応をするから、抱きたくなった」
私だって豪さんに触れるのを我慢していたし、抱いてほしいに決まっている。だからといって、「はい、じゃあ今から解禁です」なんて、恥ずかしげもなく言えるわけがない。
返答に困って目を泳がせていると、豪さんは返事を急かすかのように太腿を触り始めた。
「えっ……ちょっ」
「触りたい」
「ま、待って!」
先にお風呂に入りたい――そう返事をしようとして、私は名案を思いついた。
「じゃあ、一緒に……お風呂入ろ?」
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