寵愛の檻

枳 雨那

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調教開始

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 どう見ても、メイド服だった。黒地のワンピースに、白のフリルとリボンがたっぷりついていて、お揃いのカチューシャとニーハイソックスまである。胸元が大きく開いていて、スカートはあまりにも短い。どう見ても普通の用途ではなかった。私が着るのにはとても抵抗がある。

「ど、どうやって、これを?」
「今は、通販っていう便利なシステムがあるからね」

 誰にも見られずに、こんなものが買えたというわけだ。おーちゃんはにこにこ笑って、それを私に手渡した。

「もしかして、これを着るんですか?」
「うん。今、ここで着替えて」
「……分かりました」

 服を脱ぎ始めると、おーちゃんは至近距離でじっと見つめてきた。誰かに見られながら着替えるなんて初めてのことで、手が震えてしまう。

 ワンピースを床に落として下着姿になり、メイド服のファスナーを開いた。足を通し、次に腕を通して、胸元の調整をしようとするけれど、どうやってもブラが少し見えてしまう。

「あれ?」
「これは取った方がいいね」

 私の背中に手を伸ばしたおーちゃんが、易々とホックを外した。

「きゃっ! な、なんでっ……!」
「今更でしょ。さ、これ腕から抜いて」

 軽くパニックになりながら胸元を隠していると、おーちゃんは私の腕を動かして、ブラの紐を両腕から器用に引き抜いた。その動きの素早さについていけず、私はされるがままだ。

「うん、サイズもぴったり。思っていた通り、似合うよ」

 おーちゃんはそう言うけれど、メイド服の胸の部分にはパッドが入っていて、それが谷間を作るほど窮屈だった。いやらしい感じになるようにできているのだろうけれど、私に似合うとは到底思えなかった。

「あと、これとこれも着けて」
「……はい」

 おーちゃんが背中のファスナーを閉め、ソックスとカチューシャを渡してきた。それらを着用して、ケージの中に入ろうとすると、腕を掴まれた。

「胡蝶、キスして」
「……あ、えっと」
「いってらっしゃいのキス。軽くでいいから」

 おーちゃんが屈んで顔を近づけた。まだ少し遠いその顔に近づくよう、彼の肩に手を置いて、背伸びをする。唇どうしがほんの少し触れるだけのキスをした。

「ん、ありがと」

 おーちゃんは満足そうに笑って、ケージに入るように促す。この格好をさせられた理由も分からないくらい、すんなりと事が進んで、疑問に思っていた矢先。

 ケージの鍵を閉めたおーちゃんは、中で座り込む私と視線を合わせた。

「胡蝶、もう一つ、命令」
「なんでしょうか、ご主人様……」
「それを着てると、本格的に見えるね。命令は……」

 彼は、近くの引き出しからビデオカメラを取り出した。それをテーブルの上に置き、レンズを私に向ける。

 録画するつもりだ。それだけで、背筋がぞくっとした。

「自分で自分を慰めて」
「えっ?」
「胡蝶、したことないでしょ?」
「な、ない……です」
「僕がどんな風に触ってるか思い出して、自分でしてごらん? ちゃんとできたかは、これで記録するから」
「……はい」

 ごくっと唾を飲み込んだ。どうして、そんなことしなくちゃいけないんだろう。恥ずかしくてたまらないのに、頷くしかなかった。
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