寵愛の檻

枳 雨那

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胡蝶の変化

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 翌日、私とおーちゃんが大学に着いたのは、講義開始直前の時間だった。もう三年生だというのに、一限目の講義に遅刻しかけるとは、情けない。それもこれも、二人揃って夜中まで情事にふけっていたからだ。

 下腹部が重い。未だに、おーちゃんのものを受け入れた感触が残っている。あんなに何度も求め合ったというのに、出血すらしなかったのは、おーちゃんの配慮と技巧のたまものだった。

 それにしても、どうして私はおーちゃんとのえっちに夢中になってしまったのか。まるで、自分が自分じゃないようだった。

「胡蝶、腰辛い?」
「っ……誰かに聞こえるよ……」
「そうだね、ごめん」

 おーちゃんは朝から機嫌がよくて、怠くて動けない私の面倒を見てくれている。お風呂には一緒に入って身体を洗ってもらったし、朝食だっててきぱきと準備してくれた。大学までの道もずっとエスコートしてくれて、優しかった。

 これが昔のおーちゃんだったら、私は彼に惚れただろうか。そんなことを考えながら講義室に入り、後方壁際の席に着く。当然のように隣の席に来たおーちゃんの横顔を、じっと見つめた。

 私の視線に気付いたおーちゃんは、頬杖をつきながらにこっと笑った。蠱惑的な笑顔。この表情にノックアウトされる女の子も、現実には多い。私はそんな人と、幼馴染みなのだ。

 この講義の受講者には、千ちゃんがいない。それが寂しくて不安なのに、今はここにいなくてよかったとも思っている。彼に会ってしまえば、昨夜のことを見透かされてしまいそうだった。

 チャイムが鳴り、教授が入ってくる。ルーズリーフを挟んだバインダーと、ペンケースを机の上に置き、私はようやく一息ついた。その直後だった。

 私の膝に、何かが触れた。ドキッとしてすぐに下を向くと、それはおーちゃんの手だった。今度は、何をしたいのだろう。

「おーちゃん……?」
「しーっ。点呼とってるから、集中して」

 集中しろというのは、点呼にだろうか、それとも、おーちゃんの手にだろうか。抵抗したいのに、その後のお仕置きが怖くてできない。教授は名簿を見ながら、学籍番号順に学生たちの名前を呼んでいく。

 その間に、おーちゃんの手は太腿を撫で、スカートの中に入ってきた。捲り上げられた裾を引っ張って元に戻すけれど、一部はどうしても見えてしまう。

「おーちゃん、誰かに、見られたら……」
「大丈夫。胡蝶が声さえ上げなければ」

 小声で咎めても、おーちゃんは飄々と言ってのけた。幸か不幸か、ここは最後方の壁際で、机には足元を隠すボードがついている。他の学生たちと私の間にはおーちゃんがいるから、誰かが意図的にここを覗き込まない限り、バレることはない。そんな状況が、私の興奮を煽った。

 おーちゃんの手は、ショーツの上から秘所を擦り始めた。昨夜の感触を思い出すと、お腹の奥が熱くなっていく。指は好き放題に秘裂をなぞり、それに反応して、私は蜜を溢れさせてしまった。

「んんっ」
「……ふ、濡れてきた」
「やっ……」

 口元を押さえて声を我慢していると、おーちゃんが先に名前を呼ばれ、何事もないように彼は返事をした。あと何人かで、私が呼ばれる。けれどこのままじゃ、まともに返事なんてできない。
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