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03 図書室とルシアン殿下 / 魔の森へ
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毎日会う羽目になるのなら、一度だけお茶会にお誘いするほうが良かったのかもしれません。完全に戦略ミスです。
それにお忙しいであろう王太子殿下が、小説を読む時間などあまりないと思っていたのに、殿下はいつも一晩で読んでしまいます。
初めて返却に来た日は本当に読んだのかと怪しんでしまいましたが、しっかりと読み込んだと思われる感想までいただき驚きました。
お勧めした本を熱心に読んでもらえたのは、読書好きとしては嬉しいもので。
私もついつい本の話題に熱中してしまい、気がつけば帰宅時間になってしまったなんてこともあったりして……。
「シリル様、いつも図書委員の作業をお任せしてしまい申し訳ありません」
「天使の如く可憐なミシェル嬢のためでしたら、これくらいお安い御用ですよ」
殿下との読書トークを終えてカウンターへ戻ると、シリル様が出迎えてくれました。
シリル様は宰相の息子で、水色の髪の毛と瞳を持つ落ち着いた雰囲気のある方です。
彼は嫌な顔ひとつせず、私に代わって本を棚に戻す作業をしてくださるのでとても感謝しています。
それどころか、図書室の構造と棚の配列をこの数日で把握しきったそうで、その優秀さには驚くばかりです。
「シリル。ミシェルのためではなく俺のためだろう? 仕える相手を間違えるなよ」
「はいはい、わかっていますとも。誰のために、ここまでしてあげていると思っているんですか」
「そうだぞ! 俺はこのままだと、足から根が生えてしまいそうだ」
不満そうに会話へ入ってきたのは、騎士団長の息子であり、殿下の護衛でもあるセルジュ様。
赤茶色の髪の毛と鋭いお目目が、いかにも血の気が多そうな雰囲気の彼ですが、私はこの彼が苦手だったりします。
「暇なら、そこら辺を散歩したら良いだろう?」
「殿下が近づくなと言ったんだろう! うっかり遭遇しないように、俺は出入り口を見張っているんだ。ありがたく思え!」
セルジュ様がいきなり声を張り上げるので、私は驚いて殿下の陰に隠れました。
彼とはもう何年も会っていなかったのに、未だに私は彼が怖いようです。
幼馴染である、私とセルジュ様。幼少期は彼に振り回されては、泣く日々で。
あの頃はいじめられていると思っていたけれど、今にして思えば『やんちゃが過ぎた』だけなのだと思います。
頭ではわかっていても、こうして体は反応してしまうのですが。
「ミシェル……?」
殿下は不思議そうなお顔で振り向き、私を見ました。
「少し驚いただけです……。セルジュ様、図書室での大声はお控えください」
殿下越しに図書委員としての務めをなんとか果たすと、セルジュ様は「悪かったよ、エル……」と素直に謝りました。懐かしい響きの愛称で呼びながら。
意外な態度に、彼の成長を感じずにはいられません。
もうすぐ十八歳となり成人を迎える彼は、『人並みの謙虚さと常識』は身につけたようです。
もう昔のように、怒って髪の毛を引っ張られたり、足蹴りされたりという心配はないのかもしれません。
けれど私の安堵とは裏腹に、殿下はどういうわけか殺気立っているご様子。そのオーラにあてられて、思わず私は一歩後ずさりました。
「セルジュ……、その呼び方は何だ?」
「前に話しただろう、俺とエルは幼馴染だって」
「それは聞いたが、愛称呼びして良いと許可した覚えはないな」
「はぁ? 殿下の許可がいるのかよ。しゃぁねーな、これからはミシェルと呼べばいいんだろう? めんどくさいやつだな……」
「敬称を忘れているようだが?」
「……ミシェル嬢。これでいいか?」
セルジュ様がぐったりしながらそう言い直すと、殿下は満足したご様子でうなずき、殺気は消えました。
呼び方を改めるのは構いませんが、殿下自身もいつのまにか私に対して敬称をお忘れなのには、気がついているのでしょうか。
彼は王太子なので敬称はなくとも結構ですが、じわじわ距離を縮められているようで気になります。
ここ数日は本の話題に釣られて、ついつい一緒にいる時間が長くなってしまい、気がつけば完全にお知り合いのレベルに達してしまいました。
もう廊下などですれ違っても、知らんぷりするのは無理そうです。
これ以上深入りする前に対策を練らなければ、彼のハーレムに引きずり込まれてしまいます……。
屋敷に戻ってから、私は前世の記憶を再度思い出していました。
ゲームの開始年齢は十六歳。
殿下は王太子になるために、『王太子の証』といわれている宝玉を見つけようと、学園の裏に広がる魔の森を探索。
その過程で、将来自分を支えてくれることになるであろう、貴族たちの信頼を勝ち取っていきます。
前世の私がプレイしたのは、シリル様とセルジュ様の信頼を得るところまで。
ですがすでに殿下は王太子になられているので、私が知らない部分のストーリーも攻略されていることになります。
王太子になるまでが一区切りとするならば、次は結婚して王となるストーリーを進行中だと思われます。
年齢的にいっても殿下は今まさに、『結婚相手探し』の真っ最中なのではないでしょうか。
エピソードを開放する方法として、この世界でガチャは引けませんから、モンスターから地道に欠片を集めるしかありません。
つまり私が殿下からの攻略を回避するには、自分の欠片を殿下より先に集めてしまえば良いのではないでしょうか。
今まで、学園内で『欠片』というワードを聞いたことはありませんので、欠片が存在するかも不確かですが、試してみる価値はあると思うのです。
翌日の放課後。
いつものように図書委員の活動をしつつ、今日も訪れた殿下に本をお勧めした後。
今日は早めに図書室を退室し、学園の裏に広がる魔の森へとやってきました。
入り口の門から見る森は草地も多く、野花なども咲いていてのどかな雰囲気。
しかしこの森は遥か辺境まで続いているそうで、魔の森という名に相応しくモンスターが数多く生息しています。
森の奥に進むほどモンスターは凶悪さが増し、放っておけばそれらの生息域が広がってしまいます。なので、軍が定期的に討伐してバランスを保っているのだとか。
学園の周囲にいるモンスターはそれほど凶悪ではないので、学生の練習場として開放されていますが、私はひとりで森へ入るのは今日が初めてだったりします。
理由は簡単。学園へ入学すると、ひとりひとりにオリジナルの魔法スキルが与えられるのですが、私に与えられたのは補助魔法が多く、残念ながらソロには向きません。
ひとつだけある攻撃魔法も、レベルが足りなくて未だに開放されていないという始末。
けれど、最弱モンスターであるスライムならば、通常攻撃でも倒せるかと思ったのですが……。
「えいっ、えいっ! えいっ、えいっ!」
考えが甘すぎました。
いくら杖で叩いても、スライムはぷよ~んと跳ね返るばかり。一向に倒せそうにありません。
このままでは永遠に叩き続けることになりそうですが、そろそろ腕が疲れてきました。
一度モンスターに攻撃を仕掛けると、途中で逃げ出すのはとても難しいです。
セルジュ様くらいの身体能力があれば別でしょうが、私は読書ばかりの毎日ですので走る遅さにはかなりの自信があります。
かくなる上は、そろりそろりとスライムを叩きながら森の入り口まで移動し、一気に学園の敷地へ逃げ込む方法を取るしかなさそうです。
学園の敷地にさえ入ってしまえば結界があるため、モンスターは襲ってきませんので。
そうと決まればすぐに実行です。スライムを叩きながら、私はゆっくりと後退を始めました。
杖でボール遊びをしているような気分ですが、スライムはボールより優秀です。必ず私の元へ戻ってくるのですから。
ちらちらと後を確認しながら後退していると、森の入り口が見えてきました。
ここからなら私でも走れそうです。
タイミングを見計らってくるりと反転し、勢いよく足を踏みこみました。
しかし足が地面から離れる寸前、何かが引っかかる感触があり。
崩れる体勢を立て直すような技術は、私には持ち合わせがありません。
この程度の機敏な動きも無理だったのかと心で悟るよりも先に、全身が地面に打ち付けられる衝撃で、体に刻み込まれます。
直訳すると、つまずいて転びました。痛いです。
追い打ちをかけるように、背中の上ではスライムがぷよぷよと跳びはねていて、地味にHPが削られていくのを感じます。
こうして私は、徐々に死の淵へといざなわれるのですね。
妙に余裕があるのは、回復魔法があるからなので。
もう少し敗北感を味わってから回復魔法をかけて、再度脱出を試みたいと思います。
そう、のんきに構えていると、誰かが走り寄ってくる音が聞こえてきました。
「ミシェル!」
こんな不甲斐ない私を助けてくださる、ヒーローがいらっしゃるのですね。
と思いたいところでしたが、この声はこの数日間でしっかりと覚えてしまいました。
さすがは殿下。実に主人公らしい、登場の仕方です。
背中で跳びはねていたスライムの気配が消えると、殿下は私を抱き起してくれました。
不覚にも殿下の腕の中に納まるのはこれで、二度目です。
「ミシェル大丈夫かい? どうしてこんなことに……」
殿下は心配そうに、私の顔を覗き込んできます。
「スライムが倒せなかったので、逃げようと思ったのですが、失敗しました」
最終学年とは思えない非力さをありのままに伝えると、殿下は言葉を失いました。
補助役とはいえ、スライムも倒せないような生徒は稀なので当然でしょう。
このまま呆れて私への興味を失ってくれたらと思いましたが、殿下は優しい微笑みを私に向けました。
「何か目的があったのかな? 俺で良ければ、狩りを手伝うよ」
「よろしいのですか……?」
私は殿下に攻略されたくないがために、欠片を集めようとしているのですが。ハーレム予定者がひとり減っても、本当によろしいのですか?
「あぁ。ミシェルと二人で狩りができるなんて嬉しいよ。さぁ、日が暮れる前に終わらせてしまおうか」
「ありがとうございます、ルシアン殿下」
それにお忙しいであろう王太子殿下が、小説を読む時間などあまりないと思っていたのに、殿下はいつも一晩で読んでしまいます。
初めて返却に来た日は本当に読んだのかと怪しんでしまいましたが、しっかりと読み込んだと思われる感想までいただき驚きました。
お勧めした本を熱心に読んでもらえたのは、読書好きとしては嬉しいもので。
私もついつい本の話題に熱中してしまい、気がつけば帰宅時間になってしまったなんてこともあったりして……。
「シリル様、いつも図書委員の作業をお任せしてしまい申し訳ありません」
「天使の如く可憐なミシェル嬢のためでしたら、これくらいお安い御用ですよ」
殿下との読書トークを終えてカウンターへ戻ると、シリル様が出迎えてくれました。
シリル様は宰相の息子で、水色の髪の毛と瞳を持つ落ち着いた雰囲気のある方です。
彼は嫌な顔ひとつせず、私に代わって本を棚に戻す作業をしてくださるのでとても感謝しています。
それどころか、図書室の構造と棚の配列をこの数日で把握しきったそうで、その優秀さには驚くばかりです。
「シリル。ミシェルのためではなく俺のためだろう? 仕える相手を間違えるなよ」
「はいはい、わかっていますとも。誰のために、ここまでしてあげていると思っているんですか」
「そうだぞ! 俺はこのままだと、足から根が生えてしまいそうだ」
不満そうに会話へ入ってきたのは、騎士団長の息子であり、殿下の護衛でもあるセルジュ様。
赤茶色の髪の毛と鋭いお目目が、いかにも血の気が多そうな雰囲気の彼ですが、私はこの彼が苦手だったりします。
「暇なら、そこら辺を散歩したら良いだろう?」
「殿下が近づくなと言ったんだろう! うっかり遭遇しないように、俺は出入り口を見張っているんだ。ありがたく思え!」
セルジュ様がいきなり声を張り上げるので、私は驚いて殿下の陰に隠れました。
彼とはもう何年も会っていなかったのに、未だに私は彼が怖いようです。
幼馴染である、私とセルジュ様。幼少期は彼に振り回されては、泣く日々で。
あの頃はいじめられていると思っていたけれど、今にして思えば『やんちゃが過ぎた』だけなのだと思います。
頭ではわかっていても、こうして体は反応してしまうのですが。
「ミシェル……?」
殿下は不思議そうなお顔で振り向き、私を見ました。
「少し驚いただけです……。セルジュ様、図書室での大声はお控えください」
殿下越しに図書委員としての務めをなんとか果たすと、セルジュ様は「悪かったよ、エル……」と素直に謝りました。懐かしい響きの愛称で呼びながら。
意外な態度に、彼の成長を感じずにはいられません。
もうすぐ十八歳となり成人を迎える彼は、『人並みの謙虚さと常識』は身につけたようです。
もう昔のように、怒って髪の毛を引っ張られたり、足蹴りされたりという心配はないのかもしれません。
けれど私の安堵とは裏腹に、殿下はどういうわけか殺気立っているご様子。そのオーラにあてられて、思わず私は一歩後ずさりました。
「セルジュ……、その呼び方は何だ?」
「前に話しただろう、俺とエルは幼馴染だって」
「それは聞いたが、愛称呼びして良いと許可した覚えはないな」
「はぁ? 殿下の許可がいるのかよ。しゃぁねーな、これからはミシェルと呼べばいいんだろう? めんどくさいやつだな……」
「敬称を忘れているようだが?」
「……ミシェル嬢。これでいいか?」
セルジュ様がぐったりしながらそう言い直すと、殿下は満足したご様子でうなずき、殺気は消えました。
呼び方を改めるのは構いませんが、殿下自身もいつのまにか私に対して敬称をお忘れなのには、気がついているのでしょうか。
彼は王太子なので敬称はなくとも結構ですが、じわじわ距離を縮められているようで気になります。
ここ数日は本の話題に釣られて、ついつい一緒にいる時間が長くなってしまい、気がつけば完全にお知り合いのレベルに達してしまいました。
もう廊下などですれ違っても、知らんぷりするのは無理そうです。
これ以上深入りする前に対策を練らなければ、彼のハーレムに引きずり込まれてしまいます……。
屋敷に戻ってから、私は前世の記憶を再度思い出していました。
ゲームの開始年齢は十六歳。
殿下は王太子になるために、『王太子の証』といわれている宝玉を見つけようと、学園の裏に広がる魔の森を探索。
その過程で、将来自分を支えてくれることになるであろう、貴族たちの信頼を勝ち取っていきます。
前世の私がプレイしたのは、シリル様とセルジュ様の信頼を得るところまで。
ですがすでに殿下は王太子になられているので、私が知らない部分のストーリーも攻略されていることになります。
王太子になるまでが一区切りとするならば、次は結婚して王となるストーリーを進行中だと思われます。
年齢的にいっても殿下は今まさに、『結婚相手探し』の真っ最中なのではないでしょうか。
エピソードを開放する方法として、この世界でガチャは引けませんから、モンスターから地道に欠片を集めるしかありません。
つまり私が殿下からの攻略を回避するには、自分の欠片を殿下より先に集めてしまえば良いのではないでしょうか。
今まで、学園内で『欠片』というワードを聞いたことはありませんので、欠片が存在するかも不確かですが、試してみる価値はあると思うのです。
翌日の放課後。
いつものように図書委員の活動をしつつ、今日も訪れた殿下に本をお勧めした後。
今日は早めに図書室を退室し、学園の裏に広がる魔の森へとやってきました。
入り口の門から見る森は草地も多く、野花なども咲いていてのどかな雰囲気。
しかしこの森は遥か辺境まで続いているそうで、魔の森という名に相応しくモンスターが数多く生息しています。
森の奥に進むほどモンスターは凶悪さが増し、放っておけばそれらの生息域が広がってしまいます。なので、軍が定期的に討伐してバランスを保っているのだとか。
学園の周囲にいるモンスターはそれほど凶悪ではないので、学生の練習場として開放されていますが、私はひとりで森へ入るのは今日が初めてだったりします。
理由は簡単。学園へ入学すると、ひとりひとりにオリジナルの魔法スキルが与えられるのですが、私に与えられたのは補助魔法が多く、残念ながらソロには向きません。
ひとつだけある攻撃魔法も、レベルが足りなくて未だに開放されていないという始末。
けれど、最弱モンスターであるスライムならば、通常攻撃でも倒せるかと思ったのですが……。
「えいっ、えいっ! えいっ、えいっ!」
考えが甘すぎました。
いくら杖で叩いても、スライムはぷよ~んと跳ね返るばかり。一向に倒せそうにありません。
このままでは永遠に叩き続けることになりそうですが、そろそろ腕が疲れてきました。
一度モンスターに攻撃を仕掛けると、途中で逃げ出すのはとても難しいです。
セルジュ様くらいの身体能力があれば別でしょうが、私は読書ばかりの毎日ですので走る遅さにはかなりの自信があります。
かくなる上は、そろりそろりとスライムを叩きながら森の入り口まで移動し、一気に学園の敷地へ逃げ込む方法を取るしかなさそうです。
学園の敷地にさえ入ってしまえば結界があるため、モンスターは襲ってきませんので。
そうと決まればすぐに実行です。スライムを叩きながら、私はゆっくりと後退を始めました。
杖でボール遊びをしているような気分ですが、スライムはボールより優秀です。必ず私の元へ戻ってくるのですから。
ちらちらと後を確認しながら後退していると、森の入り口が見えてきました。
ここからなら私でも走れそうです。
タイミングを見計らってくるりと反転し、勢いよく足を踏みこみました。
しかし足が地面から離れる寸前、何かが引っかかる感触があり。
崩れる体勢を立て直すような技術は、私には持ち合わせがありません。
この程度の機敏な動きも無理だったのかと心で悟るよりも先に、全身が地面に打ち付けられる衝撃で、体に刻み込まれます。
直訳すると、つまずいて転びました。痛いです。
追い打ちをかけるように、背中の上ではスライムがぷよぷよと跳びはねていて、地味にHPが削られていくのを感じます。
こうして私は、徐々に死の淵へといざなわれるのですね。
妙に余裕があるのは、回復魔法があるからなので。
もう少し敗北感を味わってから回復魔法をかけて、再度脱出を試みたいと思います。
そう、のんきに構えていると、誰かが走り寄ってくる音が聞こえてきました。
「ミシェル!」
こんな不甲斐ない私を助けてくださる、ヒーローがいらっしゃるのですね。
と思いたいところでしたが、この声はこの数日間でしっかりと覚えてしまいました。
さすがは殿下。実に主人公らしい、登場の仕方です。
背中で跳びはねていたスライムの気配が消えると、殿下は私を抱き起してくれました。
不覚にも殿下の腕の中に納まるのはこれで、二度目です。
「ミシェル大丈夫かい? どうしてこんなことに……」
殿下は心配そうに、私の顔を覗き込んできます。
「スライムが倒せなかったので、逃げようと思ったのですが、失敗しました」
最終学年とは思えない非力さをありのままに伝えると、殿下は言葉を失いました。
補助役とはいえ、スライムも倒せないような生徒は稀なので当然でしょう。
このまま呆れて私への興味を失ってくれたらと思いましたが、殿下は優しい微笑みを私に向けました。
「何か目的があったのかな? 俺で良ければ、狩りを手伝うよ」
「よろしいのですか……?」
私は殿下に攻略されたくないがために、欠片を集めようとしているのですが。ハーレム予定者がひとり減っても、本当によろしいのですか?
「あぁ。ミシェルと二人で狩りができるなんて嬉しいよ。さぁ、日が暮れる前に終わらせてしまおうか」
「ありがとうございます、ルシアン殿下」
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