【完結】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、本気になった当て馬義兄に溺愛されています

廻り

文字の大きさ
上 下
39 / 116
07 幼馴染の関係

5 危機感って必要ですか?

しおりを挟む

 お茶会での話が終わり、ローラントが見えなくなったのを確認すると、アレクシスは疲れたように、リズにもたれかかった。

「アレクシス。心配をかけてしまったみたいで、ごめんなさい」
「リズのせいではないよ。僕がもっと、目を光らせておくべきだった。――それより、リズに聞いておきたいことがあるんだけど」
「なぁに?」
「小説でヒロインに想いを寄せるのは、王太子、カルステン、僕の三人で合っているよね?」
「うん、それがどうかしたの?」
「それにしては、ローラントとリズの距離が近すぎると思ってね。ローラントは本当に無関係な人間なの?」

 そう尋ねられて、リズは「あっ」と思い出した。

「ローラントもヒロインを好きになるけど、カルステンにヒロインへの想いを告げられたことで、自分は諦めてカルステンの協力をするんだよ」
「へぇ……。そういう大事なことは、先に言っておいてほしかったな。カルステンとリズが関わっていないなら、ローラントはリズを好きなままなんじゃないのかな?」

 アレクシスは、問い詰めながらリズに体重をかけてくるので、リズも負けじとアレクシスを押し返そうと、肩に力を入れる。

「小説どおりとは限らないじゃない。アレクシスだって、私のことを好きなわけじゃないでしょう」

 ローラントはリズの騎士として、主人を大切にしたいようだし、そもそも『ヒロインと性格が違うのでは』と指摘したのはアレクシスだ。そう思いながら、リズは頬を膨らませる。

「……リズはもう少し、危機感を持って」

 リズの言葉になぜだかイラっとしたアレクシスは、リズの頬を滅茶苦茶に弄んだのだった。



(もう……。アレクシスってば、私の頬をなんだと思っているのよ……)

 夕食後。ローラントを伴って、アレクシスの執務室へと向かっていたリズは、頬を両手で押さえながらため息をついていた。アレクシスは妹愛に溢れているので、リズの頬にダメージがあるような触れ方はしない。けれど、長時間に渡り弄ばれたので、未だにアレクシスに触れられているような気分になる。

「リズ様、どうかなされたのですか?」
「う……ううん。なんでもないよ。それよりまた話があるらしいけど、なんだろうね。もしかして、また何か注意されちゃうのかな……?」

 公子であるアレクシスの目から見たら、リズの言動は注意したいことだらけだろう。自分の頬が心配になったリズは、再び両手で頬を押さえながらため息をついた。

(あれ……、ローラントの反応が薄いなぁ……)

 尋ねてきた割に、ローラントは黙ってしまう。リズは彼を横目に見ながら、首を傾げた。

「さっきのこと、まだ気にしてる?」
「はい……。自分の不甲斐なさに、いきどおりを感じていたところです」
「ローラントばかり、責任を感じる必要はないよ。元々は、私が誘ったんだし。たまには、ほうきに乗れる機会を作るから、そんなに落ち込まないで」

 元気を出してもらおうとリズは、にこりと微笑んだ。しかしローラントは、ぽかんとした顔でリズを見つめたかと思えば、次の瞬間。リズから顔を反らして、こらえるように笑い出す。

(え……。なんで、ここで笑うの……)

 やはりリズの笑顔は、ヒロイン補正が効かないようだ。複雑の気分でローラントを見つめていると、彼は再びリズに視線を戻した。

「メルヒオール殿はいつも、このような気持ちなのかもしれません」
「どういう意味?」
「リズ様のお傍にいると、楽しいということです」

(おもしろキャラの自覚はないんだけどなぁ……)

 やはりローラントの中で、リズはヒロインとして認識されていないらしい。アレクシスは『危機感を持て』と言っていたが、そんな必要はなさそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されたくて悪役令嬢になりました ~前世も今もあなただけです~

miyoko
恋愛
前世で大地震に巻き込まれて、本当はおじいちゃんと一緒に天国へ行くはずだった真理。そこに天国でお仕事中?という色々と規格外の真理のおばあちゃんが現れて、真理は、おばあちゃんから素敵な恋をしてねとチャンスをもらうことに。その場所がなんと、両親が作った乙女ゲームの世界!そこには真理の大好きなアーサー様がいるのだけど、モブキャラのアーサー様の情報は少なくて、いつも悪役令嬢のそばにいるってことしか分からない。そこであえて悪役令嬢に転生することにした真理ことマリーは、十五年間そのことをすっかり忘れて悪役令嬢まっしぐら?前世では体が不自由だったせいか……健康な体を手に入れたマリー(真理)はカエルを捕まえたり、令嬢らしからぬ一面もあって……。明日はデビュタントなのに……。いい加減、思い出しなさい!しびれを切らしたおばあちゃんが・思い出させてくれたけど、間に合うのかしら……。 ※初めての作品です。設定ゆるく、誤字脱字もあると思います。気にいっていただけたらポチッと投票頂けると嬉しいですm(_ _)m

モブはモブらしく生きたいのですっ!

このの
恋愛
公爵令嬢のローゼリアはある日前世の記憶を思い出す そして自分は友人が好きだった乙女ゲームのたった一文しか出てこないモブだと知る! 「私は死にたくない!そして、ヒロインちゃんの恋愛を影から見ていたい!」 死亡フラグを無事折って、身分、容姿を隠し、学園に行こう! そんなモブライフをするはずが…? 「あれ?攻略対象者の皆様、ナゼ私の所に?」 ご都合主義です。初めての投稿なので、修正バンバンします! 感想めっちゃ募集中です! 他の作品も是非見てね!

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。  手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。 大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。 成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで? 歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった! 出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。 騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる? 5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。 ハッピーエンドです。 完結しています。 小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~

くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」  幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。  ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。  それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。  上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。 「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」  彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく…… 『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。

処理中です...