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03 公子様は当て馬
4 宣言なさる公子様
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しかし、それをアレクシスが見逃すはずもなく。アレクシスに両肩を掴まれ、リズは逃げ場を失った。
「リズ、嘘は駄目だよ?」
笑顔で追い詰められて、なす術がなくなったリズは、どうにでもなってしまえ! という気持ちで口を開いた。
「公子様は、当て馬です……」
「当て馬……? それは確か、本命の馬と交尾させる前に、雌馬の発情を促す目的で使う馬のことだよね?」
「そうですね……」
本来の意味を再確認するアレクシスに、リズは気まずさでいっぱいになりながら視線をそらす。しかし、そらした視線の先にアレクシスは割り込んできた。
アレクシスは笑顔を向けるも、目が全く笑っていない。
「つまり僕は、リズとあいつの恋が成就するために、無残にフラれるキャラということかな?」
「そうなりますね……」
「…………」
アレクシスは言葉を失うと、リズから離れてがっくりと視線を落とす。
そして、じわじわと怒りがこみ上げてきたのか、拳を握りしめて腕を振るわせ始めた。
(嫌いな王太子に負けるんだから、やっぱり怒るよね……)
「あの……公子様? これはあくまで、小説の話ですし……。この部分は、公子様のお気持ち次第で、どうとでもなりますよ!」
出会いが変わったせいか、アレクシスはリズを妹として可愛がりたいようなので、当て馬として機能するとは思えない。
小説どおりに演じる必要がないことをリズが伝えると、アレクシスは「…………やる」と、呟いた。
「え?」
「その運命、必ず変えてやる」
決意したように、リズに向けて顔を上げたアレクシス。その青い瞳が、恐ろしいほど冷たく輝いていて、リズはぞくりと身を縮めた。
「リズには、望みの結婚をさせてあげる。絶対に火あぶりになど、させないから」
「ほ……本当ですか?」
「公子の名にかけて誓うよ。だから――、リズは全力で僕を頼ってね」
最後はにこりと、いつもの調子に戻ったアレクシス。その笑顔があまりに暖かく、リズは力が抜けてへなへなと床に座り込んだ。
「大丈夫?」
「はい……。なんか、気が抜けちゃって……」
頼ってくれと言ってくれたことが、何よりもリズの心に響く。
彼は『当て馬』で、ヒーローには勝てない役回りだけれど、そんな設定など些細なことと思えてしまうほど、アレクシスが頼もしく思えた。
(アレクシスに頼れば、火あぶりを回避できて、逃亡生活もしなくていいのかな……)
この世界に生まれてからこれまで、リズは自分自身が平穏な人生を送れるとは思っていなかった。
計画どおりに逃げ延びれたとしても、常に追っ手の目を気にして隠れながらの生活になると。魔女の森に住むことは叶わずとも、たまに母の顔を見に帰れたら、それで満足だと思っていた。
けれど、そんな覚悟など捨ててしまえと言っているかのように、アレクシスはリズの目の前に手を差し出した。
リズはその手を、無意識のうちに掴む。
起き上がらせてくれたアレクシスが、救世主のように思えてリズはぽーっと彼を見つめる。
するとアレクシスは、リズの肩を抱き寄せたかと思うと、出入り口へと歩き出した。
「それじゃ、出かけようか」
「あの……、着替えのドレスを探しにきたのでは?」
「まずは、あいつの入る余地をなくさなければ。リズが身につけるものは全て、僕が贈るね」
(えぇ……! そこから……?)
人生が変わる予感がしたリズだったが、それは勘違いだったのかもしれない。結局アレクシスは、妹を可愛がりたいだけなのでは? と疑念が沸き起こった。
(本当にアレクシスに頼って、大丈夫かな……?)
「リズ、嘘は駄目だよ?」
笑顔で追い詰められて、なす術がなくなったリズは、どうにでもなってしまえ! という気持ちで口を開いた。
「公子様は、当て馬です……」
「当て馬……? それは確か、本命の馬と交尾させる前に、雌馬の発情を促す目的で使う馬のことだよね?」
「そうですね……」
本来の意味を再確認するアレクシスに、リズは気まずさでいっぱいになりながら視線をそらす。しかし、そらした視線の先にアレクシスは割り込んできた。
アレクシスは笑顔を向けるも、目が全く笑っていない。
「つまり僕は、リズとあいつの恋が成就するために、無残にフラれるキャラということかな?」
「そうなりますね……」
「…………」
アレクシスは言葉を失うと、リズから離れてがっくりと視線を落とす。
そして、じわじわと怒りがこみ上げてきたのか、拳を握りしめて腕を振るわせ始めた。
(嫌いな王太子に負けるんだから、やっぱり怒るよね……)
「あの……公子様? これはあくまで、小説の話ですし……。この部分は、公子様のお気持ち次第で、どうとでもなりますよ!」
出会いが変わったせいか、アレクシスはリズを妹として可愛がりたいようなので、当て馬として機能するとは思えない。
小説どおりに演じる必要がないことをリズが伝えると、アレクシスは「…………やる」と、呟いた。
「え?」
「その運命、必ず変えてやる」
決意したように、リズに向けて顔を上げたアレクシス。その青い瞳が、恐ろしいほど冷たく輝いていて、リズはぞくりと身を縮めた。
「リズには、望みの結婚をさせてあげる。絶対に火あぶりになど、させないから」
「ほ……本当ですか?」
「公子の名にかけて誓うよ。だから――、リズは全力で僕を頼ってね」
最後はにこりと、いつもの調子に戻ったアレクシス。その笑顔があまりに暖かく、リズは力が抜けてへなへなと床に座り込んだ。
「大丈夫?」
「はい……。なんか、気が抜けちゃって……」
頼ってくれと言ってくれたことが、何よりもリズの心に響く。
彼は『当て馬』で、ヒーローには勝てない役回りだけれど、そんな設定など些細なことと思えてしまうほど、アレクシスが頼もしく思えた。
(アレクシスに頼れば、火あぶりを回避できて、逃亡生活もしなくていいのかな……)
この世界に生まれてからこれまで、リズは自分自身が平穏な人生を送れるとは思っていなかった。
計画どおりに逃げ延びれたとしても、常に追っ手の目を気にして隠れながらの生活になると。魔女の森に住むことは叶わずとも、たまに母の顔を見に帰れたら、それで満足だと思っていた。
けれど、そんな覚悟など捨ててしまえと言っているかのように、アレクシスはリズの目の前に手を差し出した。
リズはその手を、無意識のうちに掴む。
起き上がらせてくれたアレクシスが、救世主のように思えてリズはぽーっと彼を見つめる。
するとアレクシスは、リズの肩を抱き寄せたかと思うと、出入り口へと歩き出した。
「それじゃ、出かけようか」
「あの……、着替えのドレスを探しにきたのでは?」
「まずは、あいつの入る余地をなくさなければ。リズが身につけるものは全て、僕が贈るね」
(えぇ……! そこから……?)
人生が変わる予感がしたリズだったが、それは勘違いだったのかもしれない。結局アレクシスは、妹を可愛がりたいだけなのでは? と疑念が沸き起こった。
(本当にアレクシスに頼って、大丈夫かな……?)
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